あづみ野ギターアカデミーでは、90分x2回のレクチャーを行います。
第1回は、井桁典子先生をお招きして、アンドーヴァーの講習。
第2回は、池田慎司先生による、「基礎テクニックの見直し」として、
左手の押さえに関する各指の重心の取り方をレクチャーいただきました。

そして、今回は、アンサンブルで学ぶ表現法講座です。

主催者 富川勝智先生からのコメントです。
後ほど富川先生もご紹介しますが、富川先生も池田先生に負けずお熱い先生。
講座の概要を書いてくださいとお願いしたら、沢山書いてくださいました

簡単な独奏曲を数パートに分け、実際にギターを弾きながら、
音楽を深く理解していく、奥深い講座とのこと。今から楽しみです。

                   
                      By Tomikawa Masatomo sensei

音楽表現というものをみなさんはどのように考えているでしょう?
楽譜に書いている情報だけで、自分で「表現」を作ることができているでしょうか?

クラシックギターを学んでいる方には「CDを聴いて、なんとなく表現を真似している」「先生がレッスンで言ったとおりに弾いている」という方が多いかもしれません。
最初のうちは、上記のような学び方で良いでしょう。「学ぶは“まねぶ”」ともいいますから…。

しかし、CDの音源がない!…先生も弾いたことがない!…という場合はどうしますか?

…ここからが“本当の音楽の勉強”といえるかもしれません。

表現を自分でつけるためのコツやアイデアはいくつかあります。実際、音楽家となって活動している人たちは先生たちに就いて勉強する間に口伝のような形でいくつかの“常套パターン”を学ぶことが多いです。そして演奏家となったとき、それをもとに表現をつけていく…。教授活動をする人は、蓄積された“常套パターン”を用いて生徒たちに表現を教えていくというわけです。しかし、体系化されていない(=メソッド化されていない)場合が多いのも現状です。このような人たちはあくまでも“自分の持ち札”“そのときの思いつき”でしか、表現をつけられない場合が多いのです。
そうはいっても、上記のようにいくつかの“常套パターン”を知っている先生や演奏家であれば、まだましです。クラシックギターの世界には、楽譜に付けられている指示しか表現として認めていない人、もしくは“感覚だけに頼って表現に理由を付けられない人”が多いのです。

この講座では、音楽表現を自分でつけられるための基礎的な考え方を学びます。理論という堅苦しいものではなく、実践的な形で勉強できるようにまとめました。実際に音をだし、簡単なルールを確認しながら、例えば「この音は強く弾いたほうがいい」「この音は弱くするべきだ」というふうに、自分で“どのような表現が相応しいか?”を判断する力をつけてもらいます。

西洋音楽にはいくつかのルールがあります。みなさんにはまず“旋律”とはなにか?…ということから勉強していただきます。簡単に言ってしまえば、ドレミ…とは何?ということを考えるところからスタートします。そして、音程とは何か?…つまり、ドからミにいくのと、ドからファにとぶのでは何か違うのか?…といったところに話を進めていく予定です。そして、シャープやフラットが臨時についた場合の対処の仕方…というふうに段階的に説明していきます。

旋律というのは、ある音がまずあって、その次の音がどのような音の高さであるか?…という連続した運動を人間の感覚がどのように認知するのかということによって形成されています。演奏する人、そして聴衆はその連続した運動を「記憶の中にとどめ、その中である意味を感じている」わけです。ある音があり、次の音が来たときに“どのように感じるか?”を考えることにより音楽表現のルールが導かれるとこの講座では考えます。
演奏者は実際に音を弾きながら、その感覚を検証していかねばなりません。そして実際の演奏では常にその“感覚”“感じ方”を追体験しなければいけません。例えばクレッシェンドがあったとして、それは各音ごとに音量が上がって行くわけですが、そこには何らかの高揚感があるはずです。それをデジタル的にこの音は音量2、次の音は音量4、次の音は音量7…というふうに扱ってはいけません。あくまでも前の音との関連において、次の音の印象が変わってくるわけです。

このようにこの講座は、難しい言葉でいえば、認知心理学的なアプローチをもとにして進めていきます。“人間の感情の動き”に則した理論をもとに説明していきます。つまり、楽曲を分析していく講義とはなりません。これはトニックの和音、これはサブドミナント…という風には教えません。それは和声学や対位法という分野の理論を知らねばならず、さすがにたった3日間では完全に座学の時間で終わってしまいますので…。この講座では「その場で音を感じながら」「自分で判断して表現をつけていく」ことを主眼にして学んでいただきます。

このようにして、まずは旋律の表現の付け方をまずは勉強していただきます。それから簡単なクラシックギター独奏曲を3パートに分けたもの、もしくは4パートにわけたものを弾いていただきます。つまりアンサンブルをしてもらいます。ギター初心者でも弾けるように楽曲は選びます。しかし、そこにはっきりとした意思をもって適切な表現をつけていってもらいます。実はこれは一般に上級者といわれるレベルの人でも“自分で表現をつけたことがない人”にとっては難しい作業かもしれませんが…。ここが今回の勉強のポイントとなります。

クラシック音楽というのはいわゆる古典と言われる時代までは「ポリフォニー(多声音楽)」の発想が強いです。つまり合唱曲のように各パートがしっかりと存在し、縦で割ると「和声」という扱いになるということです。現代においても、優れた骨組みをもつ西洋音楽はやはりポリフォニックな処理ができる曲がほとんどです。クラシックギター曲でいえば、フェルナンド・ソルの作品はポリフォニックな発想が強く感じられます。そして、縦割りの和声で扱おうとすると「解釈ミス」になる場合も多いのです。
もちろん、アンサンブルになったときに、生じる表現上の問題点(和声学的な問題点)はでてくるでしょう。このあたりにも時間があれば、ふれていきたいと考えています。

どのような時代、どのような作曲家であっても、西洋音楽の骨組みと根ざしています。その基本的な理論を学んでいただき、それをもとに表現をつけるための基礎ルールを学んでいきます。難しいルールはありません。私達の耳は知らず知らずのうちに西洋音楽の「快・不快」のシステムに慣れています。ですから、それを理論的に整理し、もう一度、素直に響きに耳を傾けていただければ、感覚的に誰にでも共有できるものです。それを楽譜上から即座に読み取り、表現をつけていくことは思っているよりも簡単なはずです。

自分で表現がつけられない…まったく知らない楽曲でも自分で表現をつけてみたい!…という中級者以上の方の悩みは多いです。それを解決する講座です。そして、ある程度単旋律が弾ける方であれば、初心者でも参加OKです。むしろ、ギターを始めて早い段階のうちに「音楽の基本ルール」を学ぶことはとても意義のあることです。
まだ、アンサンブルの指導的な立場にある方、もしくはギターを教える仕事をしている方にもお勧めできます。おそらく、これほどまでにシンプルに“音楽表現をつけるための理論”を説明する講座はほかに例がないと思います。クラシックギターを弾ける方であれば、是非受講していただき、実際に音を出しながら学んでいただきたいと思います。そうすれば、生徒への指導の際にも“表現を教えること”“理論的に表現を作っていくこと”が可能になります。

もちろん、合計3時間の講義ですので、「音楽のルールの基本」しか伝えることはできないと思います。しかし、この理論を知ることによって「音楽表現の土台」がしっかりとします。そこから、どのような複雑な楽曲であっても、自分で音楽表現を考えるベースメントはできると信じています。初心者からプロまで幅広い層の方に参加していただきたいと考えています。