乗客106人が犠牲になったJR福知山線脱線事故で、長男の英也さん=当時(44)=を失った植木安さん(79)=兵庫県川西市=が2月下旬、歌集を自費出版した。40年近くにわたり詠んだ歌は、約1800首。その中に4首、英也さんを悼みつづった歌をしのばせた。《英也よ 安らかに逝(い)け 汝(な)がために 父はも哭(な)かむ 母はも哭かむ》。三十一(みそひと)文字に、亡き息子への思いを込めた。

 《あはれ英也 四月廿五日 九時十八分 四十四を一期 いのち了(おわ)んぬ》

 平成17年4月25日、英也さんは兵庫県猪名川町の自宅から大阪市内の勤務先に向かうため、快速電車の先頭車両に乗車していた。植木さんが変わり果てた英也さんと対面したのは、3日後の28日午後。息子の顔にそっと手を当てることしかできなかった。

 家族と音楽をこよなく愛した英也さん。妻と当時高校1年の長男、中学2年の次男を残して逝かざるを得なかった息子の無念さに、涙がこぼれた。

 《妻に子に いかばかり 心残りしか 無念を思(も)ひて 涙とどめず》

 翌29日早朝、目が覚めると英也さんへの思いが高まり、歌が自然と心に浮かんだ。30日の葬儀では、出棺の前にその4首を詠みあげようとしたが、涙があふれて声にならなかった。

 あれから5年がたとうとする今春、英也さんの次男も長男に続き、大学入った。事故を乗り越え、歩みだそうとしている孫たちの成長が頼もしい。あのとき息子に届けようとした4首を、600ページを超える歌集の巻末近くに「子を送る 四首」と題して収めた。

 最後の1首には、悲しみが2度と繰り返されないことを願い、死亡した運転士を含め、事故で亡くなった人全員への思いが込められている。

 《憶ふべし 失(う)せし人々 百七人(ななたり) 地の底ゆ聞く 慟哭(どうこく)の歌》

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