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神経因性膀胱

神経因性膀胱

尿をためて、尿がたまったことを感じ、トイレで自分の意志で尿を出す。普段は意識もせずに当たり前の様に行われていることです。しかしこれが問題なく行われるためには、複雑な神経のネットワークが正常に機能していなければなりません。大脳に始まり、脳幹部、脊髄、そして末梢神経を介して、膀胱に達する排尿に関する神経は、そのどの部位で障害が起きても膀胱機能の異常を引き起こします。この状態を「神経因性膀胱」と言います。聞き慣れない言葉ですが、「神経の障害が原因となって起こる膀胱機能の異常」ということです例えば脳血管障害、脊髄損傷、骨盤内の手術等、神経が障害されれば膀胱機能も障害されます。「神経因性膀胱」という病名、是非覚えておいて下さい。なお「神経」とは「精神」という意味ではありません。お間違いの無い様に。

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神経因性膀胱3

神経因性膀胱3
(Radio Clinoc: 2003.02.25放送)

前回の脳の障害による神経因性膀胱に続いて今回は、脊髄疾患による神経因性膀胱についてお話しします。

脊髄疾患で最も多いのは、事故等による脊髄損傷です。また、先天的に脊髄の形成に障害を持つ、2分脊椎も膀胱機能異常を伴います。脊髄の疾患による神経因性膀胱は、大きくわけて、脳幹から仙髄の排尿中枢までの障害と、仙髄の排尿中枢より下の障害にわけて考えることが出来ます。

1) 仙髄より上の障害:この形の障害では、仙髄にある排尿反射の中枢が保たれていますので、尿があるところまでたまると、反射によって膀胱が収縮してしまいます。このため尿が漏れてしまうのですが、脳との連絡がうまく出来ない状態ですから、尿が漏れる感覚も損なわれている場合も多く、いわゆる反射性尿失禁の状態です。また排尿も、本人の意志では制御できなくなりますので、お腹を叩いたりして排尿反射を誘発して尿を出したりしますが、自分でカテーテルを用いて、尿を出す必要が出てくるケースもあります。

2) 仙髄より下の障害:2分脊椎などがこの形にあてはまります。この形の障害では、仙髄にある排尿中枢と膀胱との連絡が障害されるので、排尿反射がなくなってしまいます。しかし膀胱の近くにも神経細胞が存在し、これが生きていますので、むしろ厄介なことが起こります。通常の膀胱は尿が溜まって来ても、ほとんど膀胱の圧に変動がないのが特徴ですが、この形の障害では、尿がたまるに連れて膀胱の圧が高くなってしまう、低コンプライアンス膀胱、簡単に言うと広がりにくい膀胱になってしまいます。したがって、膀胱の圧が常に高くなりがちなので、お腹の力が加わると簡単に尿が漏れてしまいます。そのうえ排尿反射もないので尿を出すことも出来ません。

脊髄障害による神経因性膀胱の治療
1) 仙髄より上の場合は、まずお腹を叩くなどして自分で排尿反射を誘発して排尿できるかが鍵になります。これが出来る場合は管理が楽で、尿がもれないように薬や、電気刺激を行います。それに対して自分で反射を誘発できない場合は、排尿=失禁と言う形になりますので、出来るだけ尿をもれないような治療(薬や電気)を行いながら、カテーテルを用いて自分で尿を出す(自己導尿)と言う方法で管理します。これらの治療は泌尿器科専門医で受けられますので是非ご相談下さい。
2) 仙髄以下の障害では、排尿反射がなくなりますので、お腹を押したり、ふんばったりして尿を出します。これが不十分であればやはり自己導尿と言う方法を取ります。また尿漏れも薬が効きづらく難治性です。この場合治療と言うよりはむしろ如何に管理するかが重要といえます。



ishigookaclinicb_nurse_yamagata  at 16:54コメント(0)トラックバック(0) この記事をクリップ! 

神経因性膀胱2

神経因性膀胱2
(Radio Clinic: 2003.02.18放送)

前回に引き続き、神経疾患に伴う膀胱機能の異常、神経因性膀胱についてお話しいたします。今回は、脳の障害による膀胱機能障害です。このタイプの神経因性膀胱は、脳出血、脳梗塞など以外の脳疾患でも起こる可能性がありますが、脳血管障害は未だ3大成人病の一つであり、脳の障害として最も頻度の高いものです。したがってこのタイプの神経因性膀胱の多くが脳血管障害を原因とするものです。

症状:大脳は、排尿反射を制御する働きがあります。この働きがあるから、通常は自分がしたいときに、して良いときに排尿をすることが出来る、逆に言えばしてはいけない時には我慢できる様になっています。その脳の働きが障害されるのですから、膀胱は尿がたまると、勝手に収縮しようとします。このため尿が我慢できない、尿が漏れる、尿の回数が多いといった症状が出ます。さらに、排尿を開始するのも正常では脳の命令で行います。排尿の反射を起こして良いと言う許可は脳が制御しているわけです。そこで脳の障害があると、尿をしようとしてもその命令がなかなか膀胱に伝わらないと言う現象が出て来ます。すなわち尿をためることも、尿を出すことも、どちらもうまく行かないと言うことになります。

診断・治療:
 まず根本的には、脳に生じた異常を可能な限り治すことが重要です。一般的に脳血管障害は、非可逆的ですが、その他の疾患では治療により改善するものもありますので、神経学的な診断や治療は非常に重要です。神経内科や脳外科の専門医に十分コンサルトが必要です。
 泌尿器科的には、基本的には膀胱の働きを調べる検査が必要です。このためには、主に尿をためる働きを調べる「膀胱内圧測定」と言う検査と、尿を出す働きを調べる「尿流測定」と言う検査があります。出来るだけ専門医でこれら検査を受けることをおすすめすます。
 治療は内服治療となります。これには「切迫性尿失禁」のお話のときに述べた薬が主体となります。
1) 抗コリン剤:膀胱が不随意に収縮するのを抑制し、膀胱容量を増やすもの。便秘や、口が渇くなどの副作用がある。
2) 抗鬱剤:脳幹部に働いて、排尿反射を抑制する。やはり口が渇くなどの副作用がある。
これらで十分の効果が得られない場合には、電気刺激療法も有力です。

これらの治療で、かなり良い効果が出ますので、脳出血や脳梗塞のあとに尿が近かったり、尿が漏れたりと言う症状でお悩みの方は、泌尿器科専門医への受診を是非おすすめします。



ishigookaclinicb_nurse_yamagata  at 08:20コメント(0)トラックバック(0) この記事をクリップ! 

神経因性膀胱1

神経因性膀胱1
(Radio Clinic: 2003.02.11放送)

神経疾患に伴う膀胱機能の異常を神経因性膀胱と呼びます。神経障害の原因疾患としては、糖尿病、骨盤内手術後の神経損傷、脊髄疾患、脳血管障害などがあります。排尿に関わる神経の道筋は、大脳皮質から脳幹、脳幹から脊髄、脊髄から末梢神経まで長い距離に及ぶますが、これら排尿に関わる神経の経路がどこで障害されても、膀胱の機能の障害が起こり得ます。排尿の反射が起こるためには、排尿の中枢が障害を受けていないことが必要ですが、一般的に排尿の反射を行う中枢は仙髄と脳幹部の2か所にあると言われています。したがって神経の障害を考えるときには、大脳皮質から脳幹までの経路、脳幹から仙髄の中枢までの経路、ここから膀胱までの神経路の3つにわけて考えると分かりよいでしょう。

1) 大脳皮質と脳幹部の間の障害
 最も多いのは前回切迫性尿失禁でお話しした、脳血管障害によるものです。このケースでは脳幹部以下の神経路は保たれていると考えられます。一般的に脳幹部が保たれていれば、膀胱が収縮するときに括約筋が弛緩するという排尿反射は保たれますが、それを自分で(大脳皮質で、随意に)コントロールするのが難しくなります。従って症状としては、頻尿、尿意切迫、切迫性尿失禁などが主な症状です。

2) 脳幹部から脊髄(仙髄)排尿中枢までの間の障害
 典型的な疾患としては、脊髄損傷、脊髄空洞症など脊髄に関わる疾患で、凡そ腰より上の病変の場合がこれにあてはまります。この部分の障害では今度は脳幹の排尿中枢とも、大脳皮質ともその間の神経路が障害されていますので、排尿を自分の意志でコントロールするのは益々難しい状態となります。さらに脳幹部からの連絡が障害されることで、膀胱と括約筋の協調がなくなってしまいます。このため膀胱は尿がたまった時点で、仙髄の排尿中枢の作用で収縮しますが、このとき括約筋まで収縮してしまう、「協調不全」という状態になります。要するに、尿が出ようと言うときに、通り道が塞がってしまうわけです。この場合症状としては、尿が漏れるのに、出そうとしても出せないと言う複雑な症状になります。

3) 仙髄から膀胱までの経路
 仙髄の排尿中枢から膀胱に至るまでの神経路の障害は、糖尿病による神経障害や子宮癌や直腸癌の手術による骨盤内の神経損傷、椎間板ヘルニアなどで起こります。この場合、排尿反射が無くなってしまいます。従って、尿意が鈍くなったり、尿を出せない、あるいは腹圧によって尿を出す状態になります。また骨盤内の神経の障害では、膀胱が尿をためる機能も障害されるので、尿失禁も起こる可能性があります。

以上今回は神経の障害で起こる排尿障害、「神経因性膀胱」の概略をお話ししましたので、次回は個々のケースでの治療法を紹介いたします。



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