コロナウイルスの検査で大変なことになっている世の中ですが、今日はこの話も含め、病院で行うインフルエンザなどの迅速検査の精度(正確性)のお話をしたいと思います。


ちなみに、統計学のお話が出てきます。私自身統計学は大の苦手で学生時代の試験の出来も最悪だったので、上手く説明できるかわかりませんが頑張ってみます。


どんな検査も100%の診断のできるものはありません。例えば、本当は病気なのに結果が陰性と出たり、逆に病気でないのに検査が陽性と出ることもあります。

それを表にすると、こんな感じになります。



病気あり

病気ではない

合計

検査で陽性

a

b

a+b

検査で陰性

c

d

c+d

合計

a+c

b+d



本当は病気なのに検査結果が陰性のもの(表のcにあたります)を「偽陰性」といい、逆に病気でないのに検査が陽性のもの(表のbにあたります)を「偽陽性」といいます。



検査の正確さをあらわす指標として、「感度」と「特異度」というものがあります。

「感度」は「病気の人を病気と診断できる割合」で、「特異度」は「病気でない人を病気で無いと診断できる割合」です。式にすると、

「感度=a÷(a+c)」

「特異度=d÷(b+d)」

となります。


例えば、インフルエンザ迅速検査の場合、報告によりばらつきはありますが感度60~65%、特異度95~98%と言われています。

つまり、インフルエンザに罹患した人を100人検査しても35~40人は検査で陰性と出て、逆にインフルエンザでない人を100人検査すると2~5人ぐらいは陽性と出る、ということです。




ここで、さらにもう一つの要素を出します。

「検査で陽性だった人のうち、本当に病気だった人の割合」というものがあり、それを「陽性的中率」といいます。式にすると、

「陽性的中率=a÷(a+b)」

となります。



この割合が低いと検査としてあまり役には立たないということになりますが、これは有病率(実際に病気になっている人の割合)で大きく変わります。



例えば、1000人のうち半分がインフルエンザに罹った(有病率50%)とすると、(面倒くさいので感度60%/特異度95%とします)以下の表のようになります。陽性的中率は92.3%となります。



病気あり

病気ではない

合計

検査で陽性

300

25

325

検査で陰性

200

475

675

合計

500

500

1000





では、流行が終わって1000人のうち100人がインフルエンザに罹った(有病率10%)とすると以下のようになります。陽性的中率は57.1%に下がります。


病気あり

病気ではない

合計

検査で陽性

60

45

105

検査で陰性

40

855

895

合計

100

900

1000




さらに、1000人のうち10人がインフルエンザに罹った(有病率1%)とすると・・・

表は省略しますが、陽性的中率は10.9%となります。



この結果からは、流行期が過ぎてからの迅速検査はあまりあてにならない、ということにもなります。

何が言いたいかと言うと、「検査だけで診断するのは問題がある」ということです。



また、「ベイズ推定」というものがあり、過去の経験と新たなデータから事象を予測する、というものがあります。

これを組み合わせると、ただやみくもに検査をするのではなく、他の要因と組み合わせることで検査の精度が上がるということがわかります。

例えばインフルエンザ迅速検査の場合、発熱の程度、鼻汁の有無、ワクチン接種の有無、周囲の流行状況(流行っているだけでなく、何名ぐらい患者がいるか)といった情報を組み合わせることで検査の精度を上げることができます。


というわけで、インフルエンザの検査が陽性、というものの解釈は注意が必要、というお話でした。




最近のコロナウイルスに対する全数検査をする/しないという話もこういった計算をするとわかりやすいのですが、それは他の方がたくさんやっているのでそちらをご参照ください。


(ブログ掲載担当より:すみません、グラフが右に寄ってしまいます。少々お見苦しくて申し訳ありません)