「RSウイルスが流行っています」なんていう保育園の通知を見るかと思いますし、見ることは無くても1回は聞いたことのある名前かと思います。

RSウイルスは、風邪の原因になるウイルスの一つです。
どこぞの馬鹿が「コロナは風邪」なんてこと言っているので、「RSは風邪」なんて言うと炎上するかもしれませんが、敢えて言わせていただきます。

実際、教科書にも、RSウイルスの症状という欄に「Upper respiratory tract infection(上気道(=のど・鼻)感染)」という項目があります。
症状としては、「咳、鼻汁」となり、その点からも風邪と変わらない症状になります。

ただ、母乳やミルクを飲んでいる乳児がRSウイルスに感染すると、鼻汁がひどくて哺乳ができなくなることがありますし、ウイルスが下気道(気管支・肺)に及ぶと気管支炎や肺炎に至ることがあります。

このあたりのお話は、他のウイルスだって下気道まで到達すれば気管支炎や肺炎を起こすので、RSウイルスだけが気管支炎を起こすわけではありません。実際、私も気管支炎の赤ちゃんにRSの検査をしても陰性だった(他のウイルスが原因だった)、という例を多数経験しております。

なお、2歳までのほとんどのお子さんが1回は罹患すると言われており、そのうち25~40%程度が気管支炎などに至ると言われています(逆に言うと60~75%は風邪症状のみで終わってしまうということです。)
乳児だと、一度感染したからもうかからないというわけでもなく、何度も罹患することもあります。

RSの診断には、鼻汁による迅速検査があります。
しかし、保険診療の制限があり、「1歳未満」「入院中」「パリミズマブ(シナジス)を使用している乳幼児」のどれにも当てはまらないお子さんに対しては原則自費での検査となります。
(上記条件以外で保険診療で検査をしている病院はやり方(抜け道)を知っているのかもしれませんが、少なくとも私はそんな抜け道は知りません)

それでも「保育園で検査してもらうように言われた」という理由で来院される方が沢山いらっしゃいます(最近では、あの病院に行っても検査してもらえないから行かないように、と言われているのかな?少なくなった気もしますが)

検査と言うのは、基本的に検査を受けることによるメリットがデメリットを上回るときに行われるものと思っています。要は、お子さんがその検査を受けることで早く治療できる手段が何かあるかもしれない、という時に初めて検査をするかどうかを考えるわけです。

RSウイルスの場合、ウイルスに対する治療薬はありません。
例えRSウイルスによる気管支炎や肺炎だとしても、RSウイルスだから重症になるとも限りませんし、その治療は気管支炎や肺炎に対してであり、RSウイルスだから治療が変わるわけではありません。原因が何であれ、重症化したら状態にあった治療を症状軽快に向けて行います。

百歩譲って、保育園などの集団生活での制限があるかも、というかもしれません。
ただ、RSウイルスは、インフルエンザのように法律で決まった登園停止期間があるわけではありませんので、元気があれば登園していい、となっています(幼稚園・保育園ごとにローカルルールがある場合はその限りではありませんが)。

他のお子さんに感染させない、という目的で休ませるのも、年中誰かしら鼻水を垂らしているお子さんがいる集団生活の中でRSウイルスだけ特別、というのも変な話だと思います。

どちらかというと保育園や幼稚園の問題かと思っています。
ご家族は言われるままに受診し、病院では検査しないと言われ、板挟みになっているのはご家族かと思います。

だからお前のところは患者が来ないんだ、という意見もあるかもしれませんが、少なくとも検査によるメリットが患者さんに無い以上、言われたから検査するというのも誰にメリットがあるのか、と考えてしまいます。

恐らくよほど新しい事がわかってこない限り、当院の検査方針は変わらないと思いますが、ご理解の程宜しくお願いいたします。