saxyun「ゆるめいつ」柏原麻実「宙のまにまに」3巻

2007年07月27日

西尾維新「刀語 第七話 双刀・鐚」



刀語 (第7話)



 西尾維新って「ひとでなし」ですよね。
 この人の作品読むにつけ、思うんですが。
 だって出てくるやつ、「ひとでなし」が多すぎです。
 それも狂いまくって人を斬るタイプではなくて、いつもちゃんと社会生活を送っている静かな常識人のふりをしているけれど、根が「ひとでなし」な人。
 最近の犯罪でよくある、優等生タイプで近所の評判もいいのに、犯罪起こしちゃう危ないタイプかな。
 


 で、今回のこの刀語で、最高にそのひとでなしっぷりを見せつけてくれたのが、主人公、鑢七花の姉、七実。
 かつて父とともに島流しに遭い、父亡き後も無人島である不承島に住んでいた七花と七実姉弟。
 尾張・家鳴幕府の軍所総監督のとがめの、変体刀集めのお供に七花が連れていかれた後、たった一人で島に残された七実。
 七花が見せた虚刀流最終奥義「七花八裂」の弱点に気付き、それを教えるために彼女自身も不承島を旅立つ。

 ところが、何がどう変わったかはわからないけれど、旅の末に、彼女の手には変体刀の一つ「鐚」が握られていた。
 それは変体刀を持っていれば、いつか刀を集めている弟、七花と再会することができると考えたから。

 その「鐚」を手にするために、壱級災害指定地域である陸奥死霊山へと赴いた彼女は、刀を守っている神衛隊をたった一人の力で全滅させていた。
 とことん病弱な彼女、しかし、その見稽古、見ただけで相手の技を吸収してしまうという能力が故に、とてつもない力を彼女は持っていたのだ。

 さて、手に入れた悪刀「鐚」を持ち、死霊山を去ろうとした彼女の足を、神衛隊の一人ががしっと掴む、もはや虫の息なのに、最後の力を振り絞り、行かせてなるものかとばかりに。

「何を勝手に、わたしの肌に触っているのですか……この草が」
 そんな相手に対して七実、冷酷な言葉を投げつけ、更に踏みつけにする。

「草が。草が。草が。草が。草が。草が。草が。草が。草が……」

 言い続けること40回、神衛隊の青年の頭が取れ、跡形なく血溜まり肉溜まりになるまで、踏みつける。

 こ、このひとでなしがっ!


 と、そんなふうに思った、そんな瞬間。





 死霊山を後にした七実は、「鐚」をたずさえ、土佐・清涼院護剣寺へとやって来る。

 このお話の要となっている十二本の変体刀集めに、旧将軍が刀狩りの表向きの理由「大仏を建立するための原料の徴発」、その末に出来た刀大仏が、この清涼院護剣寺にある。
 それを前に「鐚」を持った七実と、それを回収しに来た七花の、姉弟の悲しき殺し合いが始まる。
 見稽古という恐ろしい能力を持った姉に対して、果たしてとがめの華麗すぎる奇策は成功するのかッ。




 そんなわけで西尾維新にしては、めずらしくほろりという感じのラストでした。
 と言ってもよくよく考えたら西尾維新はこの「刀語」と「戯言」しか読んでないのでした。

 さあ、後残り5話。




 そうそう、とがめのライバルとして出てくる否定姫のその部下、左右田右衛門左衛門。
 この人、ネーミングの妙があるのだけど「そうだそうえもん」って。
 何、上司が「否定」だから部下は肯定で「そうだそうえもん」ってか? ちょっと笑えた。

babatune06 at 00:26│Comments(0)TrackBack(3) 小説その他 

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