2009年06月02日

三浦しをん「秘密の花園」

秘密の花園 (新潮文庫)
(新潮文庫)
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 ちょっとおバカなしをんさんのエッセイが読みたいと思って買ったんだと思う、たぶん。
 読み始めようとする時、そういうふうに構えて本をとりながら、心の奥の方がっかりと反応したからだ。
 でも、違う、これ小説だよ。
 「がっかり」ってのもなんだけど、根本の欲望を満たされないのって何かモヤモヤする。
 なので、早急にしをんさんのエッセイを買って読まねばならない。

 ま、それはともかく、「秘密の花園」。
 その名の通り、女子高生の内側に隠された様々な「秘密」。
 「花園」とはあまりにも可憐すぎるが、そこに咲く花はすべて造花だったり、ハエ取り草だったりするのだ。




 カトリック系の女子高、聖フランチェスカへ通う五十嵐那由多は、いつも体の底から溢れてくる水の音を聞いていた。
 病弱な母親を先頃亡くして、父親と二人暮らし。兄は大学を通うために家を出ていった。
 予備校で知り合った生島薫とは微妙な距離感で付き合っている。どことなく本気にもなれなくて、いつも冷めた感じでその関係を他人事のように眺めている。
 それよりもずっと友人である中谷翠といる方が心地よかったりする。
 
 幼稚舎から聖フランチェスカに通う坊家淑子は、古くからの友達よりも那由多といる方が楽しい。
 しかし、一番馴染める相手である那由多にとって、一番大切なのはどうも中谷翠らしい。
 それでもいい。自分を大切にしてくれる「先生」がいるから。
 でも、そんな一番ですら、とてももろいもの。「先生」との関係は、嫉妬と悪意を前に揺るぎ出す。

 孤高で美人で、どことなく近付きがたいオーラを放つ中谷翠。
 自分の中にいる兄と対話しながら、那由多に妙な情愛を持つ。
 自分に不足している何かを感じつつ、それを補うために「行動」を持つ。
 それでも彼女の中では何かが欠落したままで。



 そんな三人三様のそれぞれの視点で、なにげないながらも、やりきれない、どこか煮えきらない、そんな少女たちの日常を描く連作短編。

 少女たちは、皆、鬱屈している。
 悩みながらも、明日への生きる希望を見出し、力強く前に歩き進めるジュヴナイルは確かに少年少女を元気付けるが、どこかが嘘くさい。
 人ってそんなに綺麗じゃないもの。

 悩んで悩んで、結局、答えは自分の中でしか完結せず、総体的な解決を見出さない。特に10代なんてのは、思い通りにいかずにあがくことしかない。
 結局、何も解決しないままに、明日また傷つくことを知っていながら、何事もなかったような顔で笑い合い、少女たちは今日も学校へ通うのだ。
 そんな現実的な女子の姿が生々しくて、痛い。




 痛いって言えば、那由多の物語「洪水のあとに」はラストが痛い。
 もう痛い、男性的に。やめてください、本当に。
 なんちゅーことするんだ、と叫びたかった、電車の中で。


babatune06 at 06:05│Comments(1)TrackBack(1)小説その他 | 三浦しをん

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1. 秘密の花園 / 三浦しをん  [ Largo*小説感想・レビュー* ]   2009年07月16日 19:18
◆秘密の花園 / 三浦しをん◆ 私は、なにをしているんだろう。どうしたら「私」でいられるんだろう? カトリック系女子高校に通う、三人の尮..

この記事へのコメント

1. Posted by    2009年07月17日 13:17
コメント&トラックバック、ありがとうございました!

自分は「青春」に対して爽やかさのようなものを感じず、この作品の雰囲気のような印象を抱いているので、うまく言い表してくれたな、という感じがしました。

それにしても痛々しいラストでしたね……orz

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