2013年03月21日

川原礫「ソードアート・オンライン6 ファントム・バレット」



 ああ、面白かったわ、6巻。もちろん5巻からの流れがあってのこの巻ではあるのだけれど、この「ファントム・バレット」ガンゲイルオンライン編の完結として盛り上がりに盛り上がった。
 ガンシューティングはそんなに得意でもないし、好きでもない。なので、なかなか世界観的な好みから言えばシンクロしない。
 しかし、1人の少女の成長物語としてとても熱い物語になっている。


 とあるトラウマを抱える少女、朝田詩乃。強盗から母を守るために、相手の銃を奪い殺してしまった過去。そのため、モデルガンや銃の形に作られた指を見ただけでもフラッシュバックが起こり、発作に陥る。
 そんな過去を乗り越えるために彼女が始めたガンゲイルオンライン、GGOは銃で互いを撃ち合うオンラインゲーム、いわゆるプレイヤーキル、PKに特化したMMOだった。
 現実では銃に対して怯える彼女だったが、仮想空間では遠距離からターゲットを狙い撃つスナイパーとして一流の腕を発揮した。

 そんなGGOの世界に現れる「死銃」。彼が架空空間で放った弾丸は、現実世界のプレイヤーを殺すことができる。
 信じられないそんな事態の真相を確かめるため、桐ケ谷和人は総務省の役人の依頼を受け、GGOの世界に乗り込む。
 それまでのファンタジー世界のRPGと勝手が違う近未来のガンシュートを主武器とした世界だったが、そんな世界でも和人は光剣を使いこなして、敵を倒していく。

 そして、「死銃」が彼がかつて虜囚となっていたMMORPGで暗殺者として暗躍していたギルド「ラフィン・コフィン」の一員であることに気付く。
 和人は、そんなラフィン・コフィンとやり合い、仮想現実の世界で2人を手にかけた。それは仮想の死が現実の死と直結してしまう「ソードアートオンライン」の世界でのこと。だから、和人の行為は実際に相手を殺す行為でもあった。
 だが、相手を殺さなければ自分たちもやられるし、他の者たちも殺されてしまう。

 何かを守るために、人の命を奪うことは果たして義か不義か、なんてそんな話ではなく、義だろうが不義だろうが、手にかけたことそのものが大きな枷となって人の足を絡め取るわけなのである。
 そんな枷の部分で、詩乃と和人の体験がシンクロし、共感し合う。

 普通ならこのまま2人の心が通じ合い、やがては離れがたい絆へと発展するのだろうけど、和人にはそもそもすでに、かつてのSAOの中で知り合ったかけがえのない存在であるアスナがいるわけで。
 救われない詩乃の想い、唯一、心を開ける相手だった男は実は……。

 成長して持っているトラウマを乗り越えるなんて物語はよくあるけれど、実際、乗り越えるなんて行為は欺瞞なんだなとこの話は語っている。
 実際、人は逆境に立ち向かっていて乗り越えるんじゃなくて、どう向き合っていくか。
 なんとなく「めぞん一刻」で五代くんが好きになった時点で響子さんの中に惣一郎さんがいて、それごとあなたを好きになったっていうのと似ていて、もうそこには消しようのない過去があり、記憶を捨てでもしない限りは逃れることはできない。
 逃れられないものから無理に逃れようとしたって、苦しいだけ。なら戦うのだ、と。まぁ、そういうお話でした。

 相も変らぬハーレム状態。

ソードアート・オンライン(6) ファントム・バレット (電撃文庫)
ソードアート・オンライン(6) ファントム・バレット (電撃文庫) [文庫]


babatune06 at 00:00│Comments(0)TrackBack(0)小説その他 

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