「文藝別冊 [総特集]ゆうきまさみ〜異端のまま王道を往く」 志村貴子「娘の家出」3巻

2015年11月27日

河合克敏「とめはねっ! 鈴里高校書道部」14巻



 完結。
 帯ギュの一部登場人物が少しだけ年齢を重ねて登場したのが今巻の話題どころ。

 書の甲子園に挑むための作品を仕上げるべく、書道部あげての合宿を行う大江縁たち。鵠沼高校書道部の面々も一緒。
 ライバル関係にあるのに、仲いいなぁ、この2校。
 望月結希は書の甲子園の作品が仕上がったら、部を辞めて、本来在籍していた柔道部1本に集中しなくてはいけない。
 そういう意味で、これが縁と結希が最後に一緒に机を並べる機会だった。
 だが、作品を書くのにずぅっと考えあぐね、悩んでいる縁に、結希は苛立つ。しかも、自分が近くへ行くと書いているものを隠すようにする。
 いい加減に腹が立ち、縁にいやみを言う結希に、鵠沼高校 の宮田麻衣が食ってかかる。
「大江くんは、その辞めていくあなたに、見てもらいたいんだって言ってた。今の自分の全力を込めた書を!」
 麻衣ちゃん、好きな縁ちゃんが全然振り向いてくれないのに、縁が想いを寄せる結希がちっとも彼の気持ちに気付かず、少し下に見ている感じに腹が立ったのだろうかね。
 驚き2回のリアクションをする結希。

 その頃、縁は作品への想いを固めて、徹夜で書を完成させることを決意する。

 でも、書き始めてからもまだ悩み続ける縁。書を書くことってこんなに大変なものなのかなぁと思う。
 もちろん、一発書きなので、書き始めてから何度も失敗し続ければ、何度もやらなくてはいけないのはよくわかるのだけれど、縁と顧問の影山がやって いるやり取りは莫大な書の歴史を振り返り、そこに込められた意味や様式美を捉え、それを自分なりのどう昇華していくかの議論なのだ。
 確かに創作物は見た目以上にそこに表面上は見えない寓意が仕掛けられていることは多いわけだけれど、書はそれ以上に難解な気がする。文字なんてサラサラって書けばいいんじゃないのーなんて、初期の加茂先輩や三輪先輩みたいなことを言ってみる。
 思えば書道って日本や中国みたいな漢字圏にしかないニッチな文化だよねぇ。グローバル的に見た時にどうなんだろうか。韓国とかは……漢字もなくなったし、書道とかないのかな……。

 ま、それはともかく。
 縁が仕上げた「迷いながら、ぶつかりながら、揺れながら 過ごした日々をいとしく思う」 若き歌人、加藤千恵さんの短歌だそう。
 横書きにし、3つの「ながら」を形を変えるという見事な演出で、縁は「書の甲子園」に提出する作品を仕上げている。
 つまるところ、この書がこの「とめはね」という物語の集大成であるわけで。

 そんなわけで柔道部に戻る結希。三輪先輩の差し金で、柔道部顧問と、もし、試合で優勝したら、もう1度、書道部とのかけもちを認めてほしいと取り引きをする。
 書道をする時間がなくなると、柔道へのモチベーションが下がるとまで言われて、しぶしぶ、その取り引きを認める顧問は、試合の間中、結希の勝敗に葛藤をめぐらせる。
 ……ってまぁ結局勝って、再び結希は書道部に戻ってくるわけですが。
 あっさりすぎんだろうっていう。柔道 部の顧問も、柔道自体にモチベーションがないってことにもっと怒ってもいいんじゃないですかね。

 最後に2人でのパフォーマンス。
 結希が大きな半紙の上に1本の線を引き、そこに縁が「ただ1本の線を引く」と書く。そこに書への想いがずっしりとこもっているのよね。
 ってことで、終幕。
 恋愛という意味で縁の気持ちが成就するところまでは展開しなかったけれど、結希の中にあった縁に対する敵視にも似た対抗感は、最後の最後に敬意を含んだライバル感情に成長し、ともに切磋琢磨する仲間になれたというところに着地。
 まぁこれもラブコメのあるべき、終わりの形かもしれないな。



babatune06 at 00:00│Comments(0)TrackBack(0) 漫画 

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