2016年04月27日
ゆうきまさみ「白暮のクロニクル」7巻
シリアスでシビアでグロテスクな作品。ゆうきまさみが週刊少年サンデーで見せていた「究極超人あ〜る」や「機動警察パトレイバー」や「じゃじゃ馬GroomingUp!」で見せていたコメディでポップでライトなイメージからは少しかけ離れている。
でも、この作品の何がすごいって、シリアスでシビアでグロテスクなものを、コメディでポップでライトにやってのけてるところなんだろうな。
確かに「パトレイバー」も、バドの背景が割と重かったり、内海と熊耳の関係に艶っぽいものがあったり、内海周りは何かとシビアだったけど、それらをゆうきまさみ風のライトさでくるんじゃってるところはあった。
でも、「白クロ」は「パトレイバー」よりもそのシビアさの比重が だいぶ重い。
なんせ主人公が歳をとらない「オキナガ」と呼ばれる長命種。
ヒロイン、伏木あかりの血のつながっている祖母、棗は「羊殺し」というこの物語の根幹を担う連続殺人事件の被害者で、残酷な殺し方をされている。
キーパーソンである雪村魁は沖縄戦の最中、死に掛けているし、雪村の昔なじみ、草太は男娼として街に立つ。
もう、ゆうきまさみの絵柄にはとことん反逆している。
「羊殺し」を追う雪村とあかり。
そんな中、「羊殺し」を描いた映画の製作発表が行われる。
「羊殺し」というキーワードは、一部の間で使われていた隠語のようなものであった。
それをどうして、この映画の関係者は知っていたのか。
「夜間衛生管理課」の竹之内管理官は あかりと雪村にその映画の調査を託す。そして、2人は映画のエキストラに応募し、撮影現場に潜り込むことに成功する。
しかし、その映画の内容は決して「オキナガ」に対してイメージのいいものではなかった。
「こんな映画撮らないほうがいいぜ。世の中に偏見をまき散らすだけだ」と監督の鬼塚に忠告する雪村。内容を見てから言えという監督に台本を見せろと雪村は迫る。
そして、オキナガを演じる主演俳優である数馬涼に、オキナガとして話をしてくれたら台本を見せてやってもいいと監督は条件をつける。
こうして話をする雪村と数馬、2人はいつの間にか意気投合するのだが……。
人は死ぬ、陰謀と裏切りと嫌疑が渦巻き、捕われる人もあり。
やっぱりなんとなくこれま でのゆうきまさみ作品とは一線を画すものがある(とか言いながら鉄腕バーディ読んでないけどな)と思わなくもなかったけれど、やはり初期作品などを思い返してみるに、もともと内容的なエログロさは存在したんだよなぁと思う。
絵柄とのギャップからか、少年メジャー誌時代にはその辺り、抑え気味ではあったんだろうけど。
さて、羊殺しの物語は盛り上がりを見せている。
犯人らしきものの影がちらほらと見えたり隠れたり、そこに竹之内管理官の影も交錯する。
まさか竹之内が羊殺しと関係を……と思わせぶりなひっぱりをしているけれど……たぶん、違うんだろうなぁ。ミステリ的にはこの辺りはミスリードじゃないだろうか。いや、ミスリードというにはわかりやすすぎる気も しないでもない。裏の裏をかかれてる感じ。だからもうひとつ何かどんでん返し的な仕掛けがあるとか……。
竹之内管理官は羊殺しだけど、でもそれは決して倫理的にもとる行為でなくて、何かの実験で……的なアレ。いや、そんなのはないだろうけど。
うーん、どういう展開になっていくんだか見えないなぁ。
完全にコメディでライトでポップな空気に、全体的な物語のゆらぎみたいなものが「韜晦」されているような気がする。