とりあえず、いってみよう

2011年11月

シルバニア4

海外(主にUK)のシルバニアファミリー。
日本で販売されていないものも並んでいる。
他にもまだまだ沢山あるが、この棚は「レア」な
商品を並べるためのものらしい。


シルバニアファミリーのおかげでキャッシュカードを使って自分の
小遣いを管理する(必要な時に引き出しに行く)ことや、
ebayやyhooオークションの代理落札依頼のためのメールのやりとり、
さらには出不精だったのに自分で企画して(買い付けの)旅を楽しめる
ようになったり。
タブレットやスマホもサクサク使いこなし、おまけに翻訳ソフトも
使いながらだが英文を読んで理解するという様々なスキルを
この「大好き」という気持ちだけでどんどん獲得していった。

でも。

相変わらず大きな声で独り言を言い、
頭の上から「ヒー」とか「キョー」といった甲高い声を出し、
手を口の前でかざしてヒラヒラしながらウロウロ歩き回ってニヤニヤと笑い
外国人とも少し違う、不思議なイントネーションで日本語を話す。
これもまた、息子の今の姿だ。
(何もすることがない時や、リラックスしている時にも見せる姿)

しかし。
それらの行動は、通勤途中と会社の中ではしないように必死で抑えて
いるようだ。
彼の服装はスーツにネクタイ、ビジネスバッグを持っている。
停留所でニヤニヤ笑わないように音楽を聴いたりyoutubeを見たり。
会社の休憩時間に独り言を言わないようにスマホでネットを見たり。
「油断すると頭の中にある声と話をしてしまうから、何か見たり
 聞いたりしているんだ。」
こんな風に言っていた。

ある人はこう言った。

「ありのままでいいじゃない。そこまで無理して普通に振る舞って。
 それでは息子さんはもたなくなるわよ。かわいそうよ。」

ある人はこう言った。
「電車やバスを乗り継がなくても通える仕事はなかったの?」


うーん。
確かに仰る通りだ。
息子は、多少なりとも「無理」をしているのだと思う。

でも、彼にとってスーツは制服(ブレザーにネクタイ)の延長線上にあって
ビジネスバッグは通学カバンよりもうんと軽くなって、
通勤時間は通学時間よりも30分以上短くなっている。
高校では特別支援学級はなかったので(小、中は在籍していた)
授業中の独り言は当然禁止だった。
つまり、ある日突然全ての環境が大きく変わったわけではない。


彼はどんな気持ちの変化があって以前よりも「普通」に振る舞おうと
努力しているのか?

「社会人になったから。」

なるほど、シンプル。
そういう線引きなんだ。


関西人は食べもの以外でも「おいしい」という表現をよくする。
非常にいいボケができた時にとなりにいる友達が一言。
「めっちゃおいしいな。」
駅でひっくり返ってものすごくかっこいい駅員さんが走ってきて
抱えて起こしてくれた姿を見て友達が一言。
「なにそれ、おいし過ぎるやん!」
運動会でビリになっても豪快にこけるなど、いい感じで目立っていれば
「だいじょうぶやって。かなりおいしかったで。」
(全てフィクションです。いや、本当に。)
そう言えば、小2の息子が小雨の降る運動場の真ん中で青いレインコートを
着たまま競技に参加している姿を遠巻きで見ながら
「おいしいなぁ・・・。」
そう呟いたのを思い出した。


先日、仕事(業務)のことで悩んでいる息子にこんな質問をしてみた。

「社会人になって、おいしいなぁって感じたことある?」
「食べ物で?」
「ちゃうちゃう。大阪弁の“おいしい”つまりお得感のこと。」
「あー、それね。うーーんと・・給料が出るから小遣いが増えた。」
「ふんふん。」
「たぶんボーナスが出る。」
「ふんふん。」
「・・・・・・。」

「逆に、おいしくないことは?」
「・・・。いっぱいあるけど、お母さんには教えない。」

ま、まともや!!
まっとうな男になってる!!
すごい!!

「お母さんには教えない(つまり話したくない)。」

この一言にちょっと寂しい気もしたけど、それ以上に感動した。


さて。
ここからは第三者の助っ人が必要だ。

自分は職業が支援者だけど、
息子にとってはオカンだから、支援者じゃない。
いや、なっちゃいけない。いや、やっぱなれない。

だから、やっぱりつなごうと思う。
“つなぐ”と“見守る”は、親にもできる。いや、親だからこそできる。
あとは、いつも通り。
何にも変えない。

ということで今日も変わらないのんびりとした休日だった。

「ヒー」とか「キョー」とか「コキ」とか。
色んな音が息子の部屋から聞こえてくるけど(笑)






IMG_2364

          新潟県 朱鷺メッセ



「自然が好きです。」
「海が好きです。」
「山が好きです。」
「オーガニックが好きです。」

と答えれば無難なところを、

「ネオンが好きです。」
「煙突の煙が好きです。」
「赤いクレーン車が好きです。」
「こ洒落たカフェより王将が好きです。」

そんなことを言ってしまうから
遠巻きに見られてしまうのだろう。

でも、嘘じゃない。

私はこぢんまり入っているオーガニックの
ランチより、王将の餃子が大好きなのだ。







息子の部屋からとても楽しそうな独り言が聞こえてくる。
仕事もうまくいっているようで、今日も弾んで帰って来た。

私は全くなのだが、彼はものすごく信心深い。(我が家は曹洞宗)
運動会も、発表会も、テストも検定試験の日も、仕事の出来不出来も。
何はなくとも先に仏壇に報告しているのだ。

すごいなぁと思うのは、朝お願いした事に対して、帰宅後必ず
フィードバックしているところだ。

「おっちゃん(私の兄)、ご先祖様。
 今日はおかげさまで◯◯の検定に合格しました。
 見守ってくれて、本当にありがとうございます。」

「おっちゃん、ご先祖様。
 今日はおかげさまで前回失敗した◯◯の作業がうまくいきました。
 見守ってくれて、本当にありがとうございます。」

「おっちゃん、ご先祖様。
 今日は残念ながら、前回失敗した◯◯がまたもうまくいきませんでした。
 明日は◯◯に気をつけてがんばりたいと思います。
 どうぞよろしくお願いします。」

出勤(登校)前と帰宅時と就寝時。
私の兄(叔父)が亡くなってから、毎日欠かさず仏壇の前で
手を合わせている。


これには理由がある。

亡くなる1ヶ月ほど前に、兄からこんなことを頼まれたのだ。

「なぁ、セバ(息子のこと)呼んでくれへんか?」
「なんで?」
「ちょっとな、あいつに頼みたいことがあるねん。」

当時、既に余命宣告を受けていたが兄は何も知らない。
そんな中、一番可愛がっている甥っ子を呼んでほしいと言うのだ。

その週の土曜日。
兄が入院する病院に息子を連れて行った。

慣れない場所に連れて来られて、少しソワソワする息子に
兄がこんなことを切り出した。

「なぁ、セバ、お前に頼みがあるねん。」
「何?おっちゃん?」
「あのな、後をな・・・後をお前に頼みたいねん。」
「えーーー!!!!!何、何ぃ?おっちゃん、
 あとって何なの〜〜〜〜!!!!!!!!」

慌てふためく息子を見て涙を流して大笑いする兄。

「ほんま、お前はおもろいなぁ。
 たいしたことちゃうねん。
 拝んでもらいたいねん。それだけや。
 お前に頼んだら、365日忘れんと拝んでくれるやろ。」

「うん、わかったよ!!
 よくわからないけど、こうやって(手を合わせる)
 拝むんだね!!」

「そう、そうや。お前にしか頼まれへん大切なことやねん。
 難しいことちゃうから、安生頼んだで。」


兄はすでに自分の死期を悟っていたのだろう。
「死」という言葉を一度も使うことなく少し寂しそうに
笑いながら、お気に入りだった甥っ子にそんな依頼を残して
去って行った。


あれから4年5ヶ月が経った。

今日、入院している100歳の祖母の見舞いに行って来た。
ムンテラもあるということで、祖母を見舞う前に母と二人で
主治医の話を聞いた。
主治医から、ある判断が必要なので家族の同意書が欲しいと
言われたが、母は返事をせず私の顔を見た。
私から、主治医にこう返した。

「それは祖母に決めてもらいましょう。
 説明は私がします。」

病室に行き、祖母の容態を見守る。
話が聞き取れる状態であると確認した後、祖母の手を握り、
ゆっくりと投薬の説明をする。
了承を得たところで主治医が病室に来て、再度説明をする。
祖母は
「お願いします。」
と一言。
投薬に関する同意書に、祖母に変わってサインをする。


その後、全く食事を食べていないという報告を受け
食事介助をする。
母が介助すると、娘なので「いらない。」
私が介助すると、孫なので食べてくれる。
(たぶん、三角食べを強要しないからだと思う。)

孫なら食べてくれるという理由で、夕食は私だけで再度
病院に行き食事介助をすることになった。

誤嚥しないよう、お茶も食事も全てゼリー状になっている。
全量は無理なので、お椀のフタにほんの少し。
おかゆと大好きな梅干しを入れて。

「おばあちゃん、これだけな、薬やと思って食べてみよか?」

うんうんと頷く祖母。
ゆっくりと。でも、疲れるのであまり時間はかけずに食事を済ませる。

ひと息ついたところで、祖母が私の手を握ってこんなことを言った。


「あのな、ばあちゃんお願いがあるねん。
 セバちゃんを呼んでくれへんか。」



ああ、兄の時と同じだ。

祖母は知っている。
365日、彼が毎日欠かす事無く手を合わせているのを。

「ご先祖様、おっちゃん、いってきます。」
「ご先祖様、おっちゃん、ただいま。」
「ご先祖様、おっちゃん、おやすみなさい。」




息子にその事を伝えると、彼も何かを察したらしく

「うん、いいよ。明日は会社が休みだからお見舞いに行くよ。」



ばあちゃんの言いたいことは、わかっている。


「ご先祖様、おっちゃん、大ばあちゃん、いってきます。」




息子の元気な声で。
そう言われたいのだ。


でもばあちゃん、まだまだ大丈夫だからね。
ばあちゃんのお願いは、予定は未定の“終活”ということで。

安生、承りました。





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