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九份で見かけた現役の三輪車。
異国の地の街並みなのに、なぜか昭和初期の香りを感じてしまった。






四十を過ぎた頃から、素朴に「すごいなぁ。」と思うことが増えてきた。
三十代だったら焦ったはずの出来事に遭遇しても、シンプルに「すごい」と
思ってしまうのだ。
牙を抜かれた犬という表現が正しいのかどうかわからないが、よくも悪くも
そんな感じなのだ。

なんとか自分を奮い立たせようと情報を仕入れたり人に会ったりする
のだけれど、どうも奮い立たたない。
なんでなのか、ちょっと考えてみた。

おもしろい!!
という感覚が日常に見当たらないのだ。
いや、もっと正確に表現するなら
すごいなぁ。
と思えても、おもしろい!!という感覚が湧いてこないのだ。

まぁ、長い人生なのだからそんな時期があってもおかしくない。
そんな風に自分に甘〜い評価をしていたところ、何気に読んだ漫画に
完全にノックアウトされてしまった。




01



オバハンSOUL 1 (ニチブンコミックス)
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いや、ぶったまげた。

うーん、すごいっ、おもしろい!!


タイトル通り、まさにSOUL!!
魂の叫び!!

設定のおばちゃんは私と同い年ぐらいなんだろう。
世の中では「美魔女」ばかりがもてはやされているのに、ここまで
がっつりど厚かましい大阪のおばちゃんを主人公にする漫画ってあっただろうか?

読了した後のなんともいえない爽快感。

絵がアウトという人も少なくないだろうし、下ネタも多いので下品だと
いう人もいるだろう。
でも、見るべきところはそこじゃぁないと思う。

この漫画は水戸黄門のような1話完結型になっていて、パターンはこんな感じだ。


おばちゃんが社会的な迷惑行為を発見→えげつない方法でドヤす(叱る)
→加害者、被害者の面倒をおばちゃんやおばちゃんネットワークの人々が
みる→独特な話術で諭す→相手が更生するようチャンスをつくる
→あとは自分で立ち直れ!

大よそがこのような流れで毎回完結している上に、登場人物のほとんどが
お笑い芸人の顔をモデルにしているので、そこも注意しながら読むと
面白さも倍増する。

その一方でテーマは非常に重いものが多い。
飲酒運転、過密労働による居眠り運転、自殺、虐待、カツアゲ、
ひったくり、振り込め詐欺、痴漢、救急のたらい回し、高齢者の孤独死
など。
世の中の「闇」とされている問題を大阪通天閣のお膝元にある下町長屋に
住むおばちゃんが痛快に解決していくという設定になっている。

この漫画を読了したあと、

「こっち(福祉:フォーマル)も必要だけど、
 あっち(おばちゃん:インフォーマル)の方がいいなぁ。」

と本気で思ってしまったのだから、自分は福祉職(支援者)としては
落第点かもしれない。



この漫画のある話の中で大晦日に橋から飛び降り自殺を図ろうとした
中年男性を偶然通りかかったおばちゃん(主人公)が体当たりで止め、
そのまま自宅に連れて帰って年越しそばを食べさせるというシーンがあった。
おばちゃんはお節料理の用意をしないといけないからと、食べている間は
自殺志願者の男性を放置し、食べ終わった頃にこんな言葉を彼に言った。

おばちゃん「どや?食うたか?」
男性   「はい ごちそうさまでした。」
おばちゃん「よっしゃ!ほなもう大丈夫や。年越しそば食べたら長生きして
      しあわせになれるんや♡」

男性号泣・・・

その後男性の身の上話を聞き、彼の問題を解決してくれそうな人物の連絡先
(弁護士と刑事とお坊さん)を教えて、最後の仕上げとして

「この布団たたきは坊さんの板と一緒で邪気を叩きだしてくれるんじゃ!」

そう言っておばちゃん18番の布団叩きで男性のお尻を思い切り叩いた後、
お節の用意があるからと男性を家から追い出してしまう。
そして、毎回のお約束なのだがおばちゃんは最後にやっぱり愛ある言葉で送り出す。

「また死にとうなったらおいでや♡
 ほなまた布団叩きでケツ叩いたるよって♡」


流れは多少違うが古典落語の「文七元結」を思い出す話だった。

これが福祉の業務に乗せるとどうなるだろう。
おばちゃんがとった行動は完全にアウトと言われるだろう。
まず怒ったり、感情的に相手に話をしてはいけない。
聞くに徹して、そこから専門家につなぐ。
とにかくやさしく、丁寧に。
考えや助言を押し付けてはいけない、そんな風に繰り返し教えられてきた。

でも、実際はどうなんだろう?
本気で死にたいと訴える人と遭遇した時にどのような行動をとるのか?
決してドヤしたりはしないが、教科書通りにいかないということだけは
わかっている。
本気には本気を見せないといけない。
おばちゃんと全く同じ方法までとはいかないが、その瞬間の「気持ち」は
共通している部分もある。


自殺防止の仕事(精神保健分野)が専門ではないが、死にたいと訴える人に
少なからずかかわってきた自分がどんな風に声をかけていたかを思い出すと
どちらかというと、導入部分はおばちゃん寄りな対応をしてきたように思う。
おばちゃんと違うのは、そこから「つないで」見守りを継続しているところだ。

でも、最近こんな風に思うのだ。

自分で立ち上がるきっかけ、考える時間を福祉は「支援」という名の
生暖かい善意で潰していないのか・・と。

中途半端なつながり方ではなく、フォーマルにしかできないことと、
インフォーマルだからできる部分をごっちゃにしないように、
自分の職業(福祉職)が決して万能ではないということを肝に銘じて
働こうと改めて思った秋の夜長だった。





オバハンSOUL



かなりドギツイ漫画だが、機会があればぜひ読んでもらいたい。