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世に数多の言論あるも、社会を沸騰させた触媒となったものが「思想」として残り、発信者は生前死後に拘わらず「思想家」として取り上げられる。

言論が難解であるほど、いつの間にか多様な解釈や意味付けばかりが堆積し、言論が生み出された背景が見えなくなる。

ましてや、戦後復興期に噴出した労働争議と、技術進歩による労働省力化と不況による需要減で顕在化した現在の失業問題は、全く異なる社会状態であることから、前者を沸騰させた言論が、そのままの形で後者を沸騰させる触媒となることは難しいように思う。
(後者は、戦争による無条件の消費を希求する動力ともなり得るという点で、「戦後」よりむしろ「戦前」に近い状況に思える。

そもそも一人の人間の発した言論は、聖人君子でもなければ玉石混交であり、全てを晒した所で、個人の伝記程度にしかならない。
(聖書や論語にしても、多数の人の手で編集されたものである。)

本書は米谷氏、岩崎氏の2人の編者=監督により、「かつての看板役者」である谷川雁の演技フィルムを繋ぎ合せた映画作品のようにもみえる。

谷川雁を見知る者も、その言論すら知らない者も、監督の視座から改めてその演技を鑑賞することになり、役者の意図とは関係のない新たな意味が与えられ、発見される。

そう、谷川雁への単なるオマージュに終わらず、その言論の生み出された背景を読者に知らしめながら、再び触媒作用を持たせようとするかのような試みである。編者達自身もまた新たなる「工作者」としての役割を負っている。
谷川雁セレクション〈1〉工作者の論理と背理
谷川雁セレクション〈1〉工作者の論理と背理
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谷川雁セレクション〈2〉原点の幻視者
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追伸;面白い人物だが、友人にはなりたくないタイプです。
谷川 雁 (KAWADE道の手帖)
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別刊 朝日新聞
(Asahi.comの書評)
谷川雁の思想をたどる
[掲載]2009年6月7日

 詩人で思想家の谷川雁(1923〜95)の詩作や論考を集めた『谷川雁セレクション(1・2)』(岩崎稔・米谷匡史編、各3360円)が日本経済評論社から刊行された。「〈戦後思想〉を読み直す」シリーズの第2弾。1は谷川のほとんどの詩や、サークル運動に関する文章を収めた。2では、筑豊の炭坑労働者の運動から、子どもたちによる「人体交響劇」までの思索をたどる。