554 :本当にあった怖い名無し:2010/05/29(土) 02:33:04 ID:I5RzF7Fm0
アンデルセンの『絵のない絵本』より。
この本は、2~3ページ程度の短編 数十話の寄せ集めでできている。
その中で私が印象に残っているのは、玉座で死んだ少年の話と
道化師の恋の2つ。そのうちの少年の方。


19世紀前半のフランス。
とある貧しい家庭に生まれた少年は、赤ん坊のころ
占い師に「将来は玉座で死ぬだろう」と予言されていた。
その言葉に母親は狂喜し、
第二のナポレオンとして君臨する我が息子の姿を夢見ていた。

そしてある時、王政復古の政権下だったフランスに七月革命が起こり、
年端のいかない子供や女達までもが戦いに参加して宮殿へなだれ込んだ。
人ごみの混乱の中で、少年は体に銃剣を何箇所も受け、血まみれの致命傷だった。
胸まではだかれたボロボロの服の上から美しい刺繍の付いたビロード布が巻かれ、
虫の息だった少年は玉座に横たえて置かれた。
戦う群衆の中、玉座に横たえられた少年は、青ざめた顔で虚空を見つめ
手脚を苦悶にもだえさせながら事切れて逝った。

555 :本当にあった怖い名無し:2010/05/29(土) 02:34:35 ID:I5RzF7Fm0
ちなみに、後味が悪いってのとは少し違うけど、道化師の恋のほう。


ある芝居小屋に、せむし男の道化がいた。
ずんぐりむっくりの彼の一挙手一投足はことごとく滑稽で、観客に人気があった。
生まれつきの奇形で幼い頃から笑い者にされて育ったが、
実は内面の知能はなかなか優れていて、ウィットに富み情感の機微も豊かだった。
だが、そうした頭の良さゆえ、自分の醜い容姿の置かれた立場を理解し
滑稽な道化師として仲間内でさえひょうきんに振舞っていた。

彼には、密かに想いを寄せる娘役者がいた。
でも彼女は、彼のことは男の範疇外の愉快な友人として気さくに接し、
一座の中の別のスマートな男役者と結婚した。
結婚式の日、道化師は二人のために誰よりもニコニコと振舞った。

やがて、幸せも束の間、新婚の彼女が急死してしまった。
夫の男役者は悲嘆に暮れ、座長から喪中の舞台を免除された。
花形役者だった二人が欠けても観客を失望させないよう、
道化師は人一倍ひょうきんなピエロを演じて客を楽しませなければならなかった。
舞台が引けた夜、道化師は一人で彼女の墓に行き、そこに腰掛けて泣いた。
夜の墓地に佇む異形の男は、怪物の挿絵のように滑稽に絵になる風景だった。


後味の悪い話 その113
http://anchorage.2ch.net/test/read.cgi/occult/1270947932/
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