Club Blog-Gamo Bazil's Blog of "B"

映画秘宝ライターBazilによる映画・ビデオ鑑賞記。新旧・東西問わず、B級からZ級まで見どころを紹介。

蒼空へ ブルー・スカイ

第一次世界大戦後の1920年代、黎明期の航空学校を舞台に若い生徒たちと美人教官との触れ合い、淡い恋を描いた2006年製作の韓国映画。

いや、青春映画としては決して悪い出来ではないのだが……。

1919年3月1日、日本に併合されていた当時の朝鮮半島で大規模な独立運動が起こるが鎮圧。後に韓国初代大統領となる李承晩らは、中国・上海に「大韓民国臨時政府」の樹立を宣言した。彼らは在米韓国人の資金的協力を得て、1920年、米国カリフォルニア州に「世界最初」の航空学校である「ウィロウズ航空学校」を設立、有望な韓国人青年を集め韓国独立を目指して空軍戦闘機パイロットの育成を始めるのだった。

いやー、東宝『青島要塞爆撃命令』にも似た戦争ファンタジーだなー、と思っていたら、これ、「実話」の映画化なんだそうである。え? 航空学校も韓国が発祥なの?

クセのある若者たちは女性教官に反発するも、やがて打ち解けあって民族独立を目指し、苛烈な訓練を耐え抜く。祖国を失った彼らに、当初は「韓国なんて国は存在しないよ」と冷淡だったアメリカ人も理解を強め、ついに彼らはカーチス・ライト社から練習機を購入することに成功する。

だが、日本がそれを静観するはずもない。彼らが熟練し一流のパイロットとして成長すれば、朝鮮半島での植民地政策にも影響を及ぼすと考えた日本は、航空学校にスパイを送り込み、様々な妨害と破壊活動を加えるのだ。

登場する複葉機は恐らくカーチスJN-4、通称「ジェニー」と呼ばれる機体だと思われる。飛行シーンは全てCGで描かれるのだが、一般的な航空アクションのアルゴリズムでデータをジェニーに置き換えただけのようで、複葉機にしてはあり得ないスピードと運動性能で飛びまわる。兵器関連詳しくないのでツッコミどころが間違っていたなら申し訳ないが、敵機の追撃を振り切るために、太陽に向けて垂直上昇するなんて芸当が当寺の複葉機に可能だったんだろうか。

小道具類も奇怪で、この航空学校の部屋の壁には『撃墜王 アフリカの星』のポスターが貼ってある。いや、それ、第二次大戦の話でしょ。主人公のハンス・ヨアヒム・マルセイユは1919年生まれだから、その時まだ1歳でしょ? 航空学校が「日本軍のスパイの策謀」によって破壊された後、生徒たちは上海に移って訓練を続けるが、中華民国空軍将校の室内には、蒋介石のご真影が恭しく架けられている……いや、孫文はまだ存命中でしょ?

かくして、過酷な訓練を遂げた韓国空軍予科練生に課せられた使命とは……東京に飛んで皇居を空爆することなのだ!!

上海から東京までジェニーで飛べる距離なのか!? よしんば飛んで行けたとして、皇居爆撃したら韓国独立できるのか!?

本作はイ・インス監督の抗日戦争映画第2弾で、前作は『ハン・ギルス』という作品らしい。なんと太平洋戦争開戦前夜、日本の真珠湾攻撃計画を事前に察知し、米国に伝えて勝利に導いたという、これも「実話」らしい。すげー、見てみたい!!


※本稿の作成に当たり以下のサイトを参考にしました。
 http://www.hf.rim.or.jp/~t-sanjin/iinsu_aozora.html
 http://blogs.yahoo.co.jp/illuminann/5617128.html

Super Noypi ─ タガログ戦隊スーパー・ノイピー



super noypi 西暦2075年、世界─主にフィリピン─は独裁暴君ディーゴの支配下にあった。ディーゴと娘カサンドラに両親を殺されたルソンのララ・クロフトことリィーアは父の残したタイムマシンに乗って、2006年のマニラへと旅立つ。勇気と特殊能力にすぐれたタガログ戦士、スーパー・ノイピーたちの力を借りて、憎き帝王ディーゴを倒すために!!

 2006年フィリピン特撮ヒーロー映画。なんというか「X-メン」をモロに意識しつつ、全体にはバリー・ウォンが「ストリート・ファイター」をまるごと美味しくいただいちゃった『超級学校覇王』のテイストではある。Noypiってのはタガログ語なのか何なのか、冷たいヤツを決めちゃった元アイドルみたいな語感だが、Google翻訳を通しても意味らしきものが見当たらない。

 21世紀の普通の高校生6人が、実は特殊能力を持ったスーパーヒーローであることが、前半延々使って解き明かされていくのだが、ウルヴァリン的に顔塗っただけの狼男以外は、念力使い・透明女・魔法使い・魔女っ子と地味ー。彼らがスーパーパワーを身に付けたいきさつも「両親がスーパーヒーローだったから」と身も蓋もない。世襲かい。

 先代スーパー・ノイピーたちの秘密基地に偶然たどり着いた彼らは、当然のように合宿生活に突入。まあ、高校生ですからな。最初に訪れる危機らしい危機が「女子メンバーの整理が始まっちゃったの」と、こんな時どういう顔をすればいいのか判らない展開に。かくして近所のコンビニにナプキン買いに行くミッション遂行。秘密基地の徒歩圏にコンビニってどうよ? フィリピンの人!! そこにいきなり現れたコンビニ強盗を退治していたら、宿敵のディーゴが現れちゃったよ。

 このディーゴ様、先代スーパー・ノイピーの、X-メンにおけるプロフェッサーX的な立場の人だったのだが、とある事件を契機にフォースの暗黒面に落ちて、ストリート・ファイターのベガみたいになってしまったのだ。って言うか、そこから2075年まで支配続けてるんだから長生きな話である。

 こう書くとまるでギャグみたいなストーリーだが、物語はつとめて真剣。ラストもとても切ない。笑いどころと泣きどころが横殴りに交錯するオリエンタル・カオス。やはりCGはじめVFXはいささかチープで、中国人が監修しているらしいアクションシーンもワイヤー含めてもっさり。俳優のトレーニングがいかにも不足なのが残念だったなあ。続編ありそうなオチだったが果たして。主人公の念力男・ロレンツォを演じたマーク・ヘラス君は、翌年からTVシリーズ「Fantastic Man」でスーパー・ヒーローを演じているようだけれど、何か関係あるのかな?

【告知】みんな泣かせんなよ・・・6月18日トークライブ!!チケット予約受付中!【転載】

またまた田川監督のmixi日記より転載です。

元記事のアドレスはこちら http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1727142377&owner_id=8377738

-----------ここより転載

本当にね・・・・

ありがたいよね

続々とチケット予約のメールが来てます。
整理と管理するのが大変ですわww



2chでは「失敗する」と書き込まれたりしてますが
もうひと頑張りすれば面白いことになりそうです。

今回はチャリティーなので田川や餌蝋ちゃんの手元には
何も残りません。

でも

「当日行けないけどチケットを記念に持ってますから予約します」
とか
「頑張ってください」
とか
「心細いけど一人で行きます」
とか
必ずコメントを書いて送ってくれる

泣かせやがる

田川に目もくれない奴
目にモノを見せてやるww

もうこのイベントはただのイベントではない

決起集会だ!!ww

映像界底辺の人間でも何かやれるということを見せてやろう。

みんな協力頼みます。

追加情報

☆サイレン島にも出演してくれた福山理子さんが
 ボランティアで出演してくれることになりました!
 お前は、相変わらずお人好しだww
 
☆人体実験シリーズの平野君も出演決定です。
 バカだなぁ、変わった性癖暴露されるのにww

行くぞ!お前ら!!ww


イベント名

田中餌蝋&田川幹太 プレゼンツ
杉沢村伝説 田川組同窓会

出 演

田中餌蝋 田川幹太 他 ゲスト予定

会 場

池袋マンホール http://www.livehousemanhole.com/access.html

日 時

2011年 6月18日(土曜日)

18:30 開 場
19:00 開 演
22:00 終 了

チケット費

前売り \2,500−(税込)

※当日、別途でワンドリンク500円かかります。
※チケット費の一部を寄付させていただきます。
→http://www.unicef.or.jp/kinkyu/japan/2011.htm
(日本ユニセフではない!)

チケット予約方法

↓のメールアドレスに予約と枚数を入れてメールください。
追って、チケット代振込み先を返信いたします。

tagawagumi2011@yahoo.co.jp

当日内容

1.田中餌蝋&田川幹太
 今だから話せる禁断の裏話!

2.田川幹太 ワンマンで怖い話
 今までソロで怖い話をしたことが無いのでww

3.ゲスト トーク
 今まで田川組に出演した人間のトークコーナー
 追悼 ナベさん!天国に行ったら言われたい放題だぞ!

4.完全アドリブ生フェイク!
 餌蝋ちゃんと田川が生で!全編打ち合わせなしで!
 映像でしか見せなかった
 フェイク芝居を見せます!
 もしかしたらあなたも急遽参戦もありえます!ww
 どれだけ俺達が凄いことをやってたか活目して見やがれ!!

5.チャリティオークション
 (出品物)

 ・田川組で使用したカメラ
 ・人体実験シリーズで着ていたジャンパー
 ・餌蝋ちゃんのサングラス・帽子
 など       

-----------ここまで転載

 ニコ生のアドレスはこちら。 http://live.nicovideo.jp/gate/lv50934363

【告知】やるぜ!!田中餌蝋!土曜日にニコ生に出演だ!!6月18日チケット生販売!!【転載】

 この情報は田川幹太監督のmixi日記より転載です。
 6/18トークライブ チケット生販売つきニコ生特番が5/28(土) 20:00〜決定。
 ゲストは超常現象研究家にして人体実験探偵団団長・田中餌蝋さん!

-----------ここより転載

mixiからチケット予約してくれた方、
行けないけど寄付だけすると振り込んでくれた方
宣伝に協力してくれている方

本当に感謝感激であります!!

最初、mixiで全く反応なかったんで
「こりゃ、やめたほうが良いかな」と心が折れかけたのですが
応援してくれている人がいる限り、最高のトークライブをやるぜ!!

お金集めてユニセフから子供を救うぜ!!

で、田中餌蝋君が

「では・・・がんばって人を集めましょう・・・」

と、あの口調で



5月28日(土曜日)

20:00放送

ニコニコ生放送 特別放送 田中餌蝋&田川幹太トークライブニコ生版
                  ニコ生特典ありのチケット販売決定!!


やります!!

みにきてください!!


ついでにチケット情報

行けなくてもチケットだけ買ってくれ!!ww




イベント名

田中餌蝋&田川幹太 プレゼンツ
杉沢村伝説 田川組同窓会

出 演

田中餌蝋 田川幹太 他 ゲスト予定

会 場

池袋マンホール http://www.livehousemanhole.com/access.html

日 時

2011年 6月18日(土曜日)

18:30 開 場
19:00 開 演
22:00 終 了

チケット費

前売り \2,500−(税込)

※当日、別途でワンドリンク500円かかります。
※チケット費の一部を寄付させていただきます。
→http://www.unicef.or.jp/kinkyu/japan/2011.htm
(日本ユニセフではない!)

チケット予約方法

↓のメールアドレスに予約と枚数を入れてメールください。
追って、チケット代振込み先を返信いたします。

tagawagumi2011@yahoo.co.jp

当日内容

1.田中餌蝋&田川幹太
 今だから話せる禁断の裏話!

2.田川幹太 ワンマンで怖い話
 今までソロで怖い話をしたことが無いのでww

3.ゲスト トーク
 今まで田川組に出演した人間のトークコーナー
 追悼 ナベさん!天国に行ったら言われたい放題だぞ!

4.完全アドリブ生フェイク!
 餌蝋ちゃんと田川が生で!全編打ち合わせなしで!
 映像でしか見せなかった
 フェイク芝居を見せます!
 もしかしたらあなたも急遽参戦もありえます!ww
 どれだけ俺達が凄いことをやってたか活目して見やがれ!!

5.チャリティオークション
 (出品物)

 ・田川組で使用したカメラ
 ・人体実験シリーズで着ていたジャンパー
 ・餌蝋ちゃんのサングラス・帽子
 など       


一回限りのトークライブ
2回目はありません
ですから、超プレミアチケットなんですよぉ!!
BOOWYの氷室が全曲BOOYの曲やります並に
プレミアなんですよぉ!!

絶対に来てください!!
目標!!満員御礼!!
でも、これない人は・・・
チケットだけでもいいから買って!!


あと、みなさん色々宣伝してください!!(泣

それでは随時
ご報告します

よろしくお願いします!!

-----------ここまで転載

 ちなみに元記事のアドレスはこちら。 http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1726468603&owner_id=8377738

 ニコ生のアドレスはこちら。 http://live.nicovideo.jp/gate/lv50934363

 ちなみに前回、餌蝋さんが出演したバージョンは、あまりに過激な内容だったため(?)タイムシフト再生が付加だったとか……ライブ餌蝋さんが体験できるのはニコ生本放送当日だけ!! …かも。

【告知】6/18池袋マンホール 田中餌蝋&田川幹太 プレゼンツ 杉沢村伝説 田川組同窓会 【転載】

この情報は田川幹太監督のmixi日記より転載です。なお、もうすぐ出来ると思われるイベントのチラシ原稿で、少し協力させていただきました。もしかしたら当日の登場もあるかも…。

-----------ここより転載

トークライブ開催決定!mixiチケット先行予約開始だ!!  2011年05月18日11:57

えーーーーと

前回、地震で延期となったトークライブですが・・・・

田川、トークライブをチャリティーライブとして開催!決定しました!
田中餌蝋君や田川組のメンバーも数人出演します。


MAX100枚限定のチケットなのですが
既に15枚売れてしまいました。(感謝)
なぜ、限定なのかというと
トークショウなのでツメツメは無理なんですよ
(MAX200人入るらしいんですけどww)

で、聞けば
田川レベルの監督のトークショウなど無謀であり
前代未聞であり、おまけにワンマンで100人集めたとなると
快挙というか「しまった!もしかして田川、有名なんじゃね?」と
メーカーの方々を地団駄させれるんじゃないかなと(爆笑)

しかし、バンドやってたんで
集客、大変なのは解ってるんすよ(泣
広いライブハウスに30人って・・・
おまけにワンマンなんて・・・かなり悲しいですよ!!

今まで、ライブヤルヤル詐欺
チャリティーヤルヤル詐欺の田川でしたが
今回は会場も押さえちゃったので詐欺が出来ませんww

マジでやるよ!!



生意気にもmixiでチケット先行予約受け付けますww



収益は全て寄付します

俺ら底辺のドブネズミがどれだけ集められるか
観てみたいんですよね

だからさ・・・

行けなくてもチケットだけ買ってくれ!!ww

イベント名

田中餌蝋&田川幹太 プレゼンツ
杉沢村伝説 田川組同窓会

出 演

田中餌蝋 田川幹太 他 ゲスト予定

会 場

池袋マンホール http://www.livehousemanhole.com/access.html

日 時

2011年 6月18日(土曜日)

18:30 開 場
19:00 開 演
22:00 終 了

チケット費

前売り \2,500−(税込)

※当日、別途でワンドリンク500円かかります。
※チケット費の一部を寄付させていただきます。
→http://www.unicef.or.jp/kinkyu/japan/2011.htm
(日本ユニセフではない!)

チケット予約方法

↓のメールアドレスに予約と枚数を入れてメールください。
追って、チケット代振込み先を返信いたします。

tagawagumi2011@yahoo.co.jp

当日内容

1.田中餌蝋&田川幹太
 今だから話せる禁断の裏話!

2.田川幹太 ワンマンで怖い話
 今までソロで怖い話をしたことが無いのでww

3.ゲスト トーク
 今まで田川組に出演した人間のトークコーナー
 追悼 ナベさん!天国に行ったら言われたい放題だぞ!

4.完全アドリブ生フェイク!
 餌蝋ちゃんと田川が生で!全編打ち合わせなしで!
 映像でしか見せなかった
 フェイク芝居を見せます!
 もしかしたらあなたも急遽参戦もありえます!ww
 どれだけ俺達が凄いことをやってたか活目して見やがれ!!

5.チャリティオークション
 (出品物)

 ・田川組で使用したカメラ
 ・人体実験シリーズで着ていたジャンパー
 ・餌蝋ちゃんのサングラス・帽子
 など       


一回限りのトークライブ
2回目はありません
ですから、超プレミアチケットなんですよぉ!!
BOOWYの氷室が全曲BOOYの曲やります並に
プレミアなんですよぉ!!

絶対に来てください!!
目標!!満員御礼!!
でも、これない人は・・・
チケットだけでもいいから買って!!


あと、みなさん色々宣伝してください!!(泣

それでは随時
ご報告します

よろしくお願いします!!

-----------ここまで転載

お近くの方はぜひぜひ。
あと、続報があれば、またこちらでも掲載させていただきます。

「チャップリンとクーガン[仮題] 」「元祖 大曲藝連鎖 東京江川巡業部」「怪談 皿屋敷[仮題] 」「剣劇女優とストリッパー 」「アナタハン島の眞相はこれだ!! 」

 神戸映画資料館で開催された「忘れられた映画の再発見 収蔵作品より」を観賞しに長田まで出向く。TCC試写室の満員御礼を覚悟していたものの、観客は10人程度か……関西の好事家は元気ないなあ。

「チャップリンとクーガン[仮題] 」
 詳細不明のアニメーション作品(サイレント)。課題の通りジャッキー・クーガンに似せた少年が主人公だが、チャップリンはほんの少ししか出てこない。登場人物は概ね外国人でバタ臭い顔にデフォルメされた体形、もしかしてコマ送りスピードが合っていないのかスローモーな動作は、まるで筋書きが見えないストーリーと相まって悪夢のようだ。

 登場人物の一人がヘッドフォンで音楽を聴きながら踊り、唐突にエアギターとしか思えない動作を見せるが、大正もしくは昭和初期の作品、人間の想像力の偉大さには驚愕させられる。実は最近の作品ってオチじゃないだろうなあ。


「元祖 大曲藝連鎖 東京江川巡業部」
 1分程度のサイレントフィルム。貴重ではあるのだろうけれど、画面の中で何が行われているのかイマイチわからん…。


「怪談 皿屋敷[仮題] 」
 大正時代に作られた番町皿屋敷映画。当然サイレント。これまた断片しか残っていないが、説明によれば現存する日本最古の皿屋敷フィルムだという。

 嬉しいことに残っているのはお菊が化けで出る場面。二重露光や逆回し、果てはコマ撮りまで使って怪異現象を表現していて驚きだ。あと、室内シーンなのにやたらと風が吹いているのは演出か、当時の撮影環境がそうだったのか。


「剣劇女優とストリッパー 」
 以後の2本は戦後の新大都映画作品。まず一本目はそのものズバリ、剣劇女優とストリッパーが出てくる作品だ。まずは掴みのチャンバラシーンで、小さい堀部安兵衛が本筋に関係なく乱入して笑いを誘う。前座にミゼットとは往年の全女かと。

 今やスターとなった剣劇女優の回想が本筋で、かつてドサ回りの小劇団で女座長を務めるも観客は入らず、因業な金貸し婆さんから身体を売れと迫られた折り、劇場主の妹で人気ストリッパーが共演して観客動員アップを実現するサクセスストーリーだ。

 もちろん前3本とは異なりトーキーではあるが、アフレコ弁士が解説も台詞も全部担当するという変わった趣向。

 舞台の場面もヨタヨタで、キメの長台詞シーンはNG入ったのか固定カメラだが撮り直しが入り、いつの間にやら女優が片肌脱いでいたりする。共演と入っても芝居内容とは脈絡なく突然ストリップが始まる。これがまた、トーキョーで人気というミミ・ローズ嬢はドカーンとした体形で、思わず「チェーンジ!!」と叫びたくなる。二人目のフラダンス嬢はスリムで可愛かったけどな。昭和28年のストリッパーなのでバストトップも露出しないけど、客席には普通に女性も子どももいるぞ。

 晴れて借金を返済した剣劇女優は、都会で夢を実現することになり、ミミ・ローズ嬢は「それなら私が新大都映画に紹介してあげるわ!!」って、もうちょっとマシな会社を紹介してくれよ。


「アナタハン島の眞相はこれだ!! 」
 そして今回最大のお目当て。よもや人生で二度も本作を見ることになろうとは…。前回は伊丹グリーン劇場の特撮大会で覆面上映作品として。覆面上映って言われても、当時スタンバーグの『アナタハン』も観てないし、本作の価値など微塵も知る由もなし。その後、映画秘宝で相当うろ覚えのまま本作のレビュー書いたりもしたが。20年以上を経てアナタハンの女王との再会である。

 南海の孤島に30人以上の男たちと奇妙な共同生活を送っていた比嘉和子。彼女の帰国後、「アナタハンの女王事件」としてスキャンダラスに報道された実話を、スキャンダルの本人・比嘉和子自身が主演して映画化したのだから、それ自体が一つの事件だ。後にベティ・ティンペイが主演した『実録 ブルース・リーの死』の経緯に近いか。

 もっとも、言っちゃなんだが御本尊の容姿は正直なところブーデーでスーブー。人間の欲望とはかくも偉大なものであったか。まあ、一人しかいないので「チェーンジ!!」もままならないわけではあるが。そこを新大都の素人同然のキャストとスタッフでダラダラと描いていく。いやあ、ジョセフ・フォン・スタンバーグ監督作品『アナタハン』は実に偉大な作品だったなあ。特撮は円谷英二、音楽は伊福部昭で中山昭二も出ていたし。

 本人が出演していることもあり、アナタハンの女王は男たちの闘争本能に翻弄され、やむなく事態に巻き込まれていく悲劇のヒロインとして描かれる。60分に満たない尺であるので状況の説明以外にドラマが踏み込むこともなく、飲んで騒いで歌って踊って時々殺人という、フリーダムな漂流生活が延々と続く。ある時、これ以上殺人を繰り返さないために拳銃を捨てようと提案され実行するが、オマエらその前にヤシ酒醸すのをやめた方がいいんじゃないのか、とつくづく思う。

 前半で米軍機に空襲されるシーンの火薬効果は、思いのほか迫力があった。後半は台詞自体が聞き取りづらくなり(アフレコ強行で俳優が疲れたのか?)、カオスなまま終幕。新大都作品2本、米国ならサムシング・ウィアード・ビデオがソフト化しそうな内容なのだが、我が国ではなあ。プリントが無事なうちになんとかデジタル化しておいて欲しいものだが。

新釈 四谷怪談

新釈 四谷怪談 昭和24年、名匠・木下恵介監督の手による新しい解釈の「四谷怪談」という触れ込みで有名な本作。基本的に長らく見る気が起きなかった作品だ。

 鶴屋南北の原作自体読んだことがないけれども、四谷怪談と言えば新東宝のお家芸、伊右衛門と直助権兵衛の悪辣な企みによって非業の死を遂げた岩が、怨念の限りに憎き夫を呪い殺すその醍醐味こそが怖さであり面白さであるところ。そりゃもう100%中川信夫の世界だろう。にも関わらず、本作は「封建時代に非人間的に歪曲された碑史伝説を新な解釈のもとに」(キネ旬DB)改変。当時はGHQ占領下にあって映画の内容には厳しい制限がかけられており、仇打ちなどの封建社会を是とする作品の制作は禁じられていた。しかも監督が文芸作家の木下恵介、岩の役には田中絹代と、どう考えてもオドロオドロしいお岩さんの祟りなんか期待できない。また実際に世評としても「お岩の亡霊は伊右ェ門の良心の呵責からくるノイローゼのための幻覚であると合理化した」(TBSオンデマンドの解説より)などと、「本作はゲテモノ怪談とは一線を画したちゃんとした映画ですよ」と言わんばかりで、そのお上品な指向が何とも鼻白むわけだ。

 ところが……である。やれば出来るじゃん木下恵介!!

 貧乏浪人・民谷伊右衛門(上原謙)が士官と財産目当てに直助(瀧澤修)と謀ってお岩を殺し、お梅と再婚するという物語の骨格はよく知られた物語の通りだが、「封建時代に歪曲された」内容を検閲OKにするために、背景や人物関係は大幅に書き改められている。岩は妹の袖(田中絹代・二役)を養うためにお茶屋勤めをしていた下賤の出という設定、伊右衛門も身持ちの悪い素行不良の浪人ではなく、蔵破りに遭った責任を負わされて御役御免となったという設定。直助は今こそ植木職人となっているが、実は小伝馬町の牢獄に囚われていた盗賊だ。

 前後篇の二部作となっており、浪人暮しに飽き疲れた伊右衛門が、豪商・一文字屋の一人娘、梅との結婚のため何とかして岩と別れようとし、岩がそれを必死に拒む前篇の展開は精神的にギリギリと追い詰められる感じでいかにもイヤな話だ。挙句の岩殺害がクライマックスとなるのだが、ここで不快指数はMAXに。まさか見せるまいと高をくくっていた田中お岩の化物メイクだが、ちら見せながらきちんと作り込んでいて怖い。そこに岩に横恋慕する牢上がりのチンピラ小平(佐田啓二)が絡んでカオスと化した上で惨殺。そして次のカットではもう岩と小平が化けて出るという寸法に。なんだ、ちゃんと亡霊出てくるんじゃないか。しかも四谷怪談史上最速で。とにかくこの前篇ラストの展開は新東宝・大蔵・大映が束になっても敵わない怪談映画のカタルシスに満ちている。

 後篇は良心の呵責に苛まれた伊右衛門の乱心を中心に、妹のお袖が事件の真相に迫り、かつまた前篇で散りばめられた様々な伏線を収拾していく。ストーリーとしてはいささか理に落ち過ぎている嫌いはあるが、それでも随所にお岩の亡霊は現れ、一文字屋の業火の中で伊右衛門、直助、そして我儘な娘お梅への呪いが完結する展開は間違いなく怪談映画。中川信夫の「東海道四谷怪談」を超えた、四谷怪談映画最恐の作品と言っても過言ではない。

 果たして木下恵介監督のキャリアを考えたときに、「四谷怪談」誰得という気もするが、怪談映画は「怖い」が最大の誉め言葉ではないのだろうか。「幻覚であると合理化」と言うけれども、天知茂の目撃したお岩の亡霊だって、幻覚と怨霊の間を行き交っていたじゃないか。木下恵介の「新釈 四谷怪談」はメチャメチャ怖い、だからこそ見る価値のある作品だ。やっぱり名匠と謳われる監督は、何を撮ってもすごいなあ。

 ただ、惜しむらくは岩が田中絹代じゃなく高峰秀子とかだったらなあ…。

新釈 四谷怪談 (前・後篇) (2枚組) [DVD]新釈 四谷怪談 (前・後篇) (2枚組) [DVD]
出演:田中絹代
販売元:松竹
(2010-04-01)
販売元:Amazon.co.jp
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『國父傳』『國父孫中山與開國英雄』



国父伝 今年2011年は中華民国建国100年にあたり、そのためか昨年台湾を訪れた際にもいろいろとプレ100年の記念行事的なこと(新硬貨発行とか)が行われていたのだけれども、豪客唱片から2本の「辛亥革命」映画がリリースされていた。それが『國父傳』と『國父孫中山與開國英雄』だ。

 國父は孫文を指し、MRT板南線には沿いには「國父紀念館」もある。行ったことないけれども。中華圏では号の「孫中山」で呼ばれるのが一般的で、欧米では字の「孫逸仙」で知られているという。

 監督は1981年にも辛亥革命映画『辛亥雙十』をショウ・ブラザーズとの合作で撮った中影の丁善璽。今回は香港第一影業との合作だ。観賞前は『國父傳』(1986)が正編で『國父孫中山與開國英雄』(1989)がプリクウェル的な位置づけだと思っていたのだが、大作然としたテーマの割に『國父傳』の上映時間は75分しかない。『狂った野獣』並の尺である。にも関わらず『國父孫中山與開國英雄』の方は94分? おまけに2作とも英題は"The Story of Dr. Sun Yet Sen"。タイトルバックはほぼ同じ。試しにIMDbで検索したところ、香港でのランタイムは156分となっている。HKMDBでは『國父孫中山與開國英雄』(1986)のみ掲載。

 イマイチ事情が呑み込めないが、どうやら1本の大作映画を台湾では『國父傳』として大幅に短縮して公開し、しかる後に「辛亥革命」部分だけを改めて『國父孫中山與開國英雄』として公開したということなのか。

国父孫中山と開国英雄 そういう訳で物語の順序を追って『開國英雄』から。時は1894年、民衆は清国政府の圧政に苦しんでいた。そこで孫文を中心とする開明派の人たちは、打倒清朝の機運を高めつつあった。

 時期的には日清戦争や八国連合など、諸外国からの干渉や侵略の話が出てきても良さそうだけれど、あんまりその辺は語られない。逆に孫文が海外に出向いて資金援助の交渉をしたりしているので、閉鎖的な清朝と世界に開かれた国を目指す孫文という対立軸を明確にしたかったのかもしれない。ロンドンでの清国公使館での孫文拉致軟禁事件などは、実際にイギリスにロケしているようだ。ただ、外国領事館にスコットランドヤードが平気で乗りこんでいくというのが何とも……不平等条約だったんだねえ。喜んでいる場合じゃないぞ、孫文よ。

 史実でも孫文は海外回りが多くて実際の革命にはあまり参加していなかったようだが、映画でもその通りで、多くの「開國英雄」たちが奮戦し、悲惨な最期を遂げたりする様子が、新東宝っぽいパノラマ講談調に進んでいく。印象深いのはリュー・チャーフィーとムーン・リーの開國兄妹(Wikipedia日本版の「孫文」の項では、本作でリュー・チャーフィーが孫文を演じたと書かれているが間違いだろう。多分、林偉生という人)。清朝の偉い人を爆殺しようと大脱走みたいなトンネルテロを敢行した後にカンフー戦にもつれこんで死ぬ。

 市街戦場面ではミニチュア特撮が随所に使用されていて、孫文が外国から購入した新式大砲の威力がド迫力で描かれる。ただ、士気低下に苦しむとはいえ朝廷軍の戦力は巨大で、孫文率いる革命軍は敗戦に敗戦を重ねるが、負傷して戦列を離れていたアレックス・マンがカノジョに説得されて奮起、戦線に復帰したら2分で革命成就。カンタンだな辛亥革命!

 その後孫文が臨時大総統となり中華民国が成立、中国全土を統一するためには正確な地図の作成と鉄道の敷設を急がなければ、と宣言して突然終わる。この凄い途中感。まあ、実際お話は途中なんだが。

 で、『國父傳』。

 オープニングから時は1894年…というところは『開國英雄』と全く同じ。そりゃまあ、同じ映画なんだし。ただ話は端折るわ端折るわ。字幕とナレーションでガンガン革命は進んでいき、20分ほどで清朝打倒、中華民国成立。正確な地図作成と鉄道敷設を急げーって、1986年の観客はこれで納得したのか? もっとも、YouTubeにアップされている『國父傳』は7分×15分割=105分と、DVD版より単純計算で30分ほど長いようで、いったい何が本当の『國父傳』なんだか。俺が見た『國父傳』にはムーン・リーは出てこなかったよ。

 『國父傳』はむしろ、中華民国成立後の内紛、すなわち袁世凱との対立や新政府内部の確執が中心となる。そしてなおかつ、國父・孫文と並んで、いや状況によっては孫文以上に活躍するのが、逆光でカッコよく登場する自称・後継者の蒋介石なのだ! 要するにアレか、『人間革命』と『続人間革命』みたいなモンか。悪い軍閥の罠にかかって風前の灯火な孫文を、軍艦で救いに来るとか凄いぜ蒋介石。

 辛亥革命についても高校世界史程度の知識しかなく、ましてその後のゴタゴタとか本当に何も知らないので、「あー、なんかモメてんなー」ぐらいの感覚で傍観するしかない本作なのだが、革命が成功したら提灯行列、孫文が病の床に倒れると民衆こぞって祈願の総統府参りと、本当に新東宝だな。やがていよいよ孫文崩御、民衆は泣き崩れ、これまでの偉業を回想しつつ、本作の主題曲でもある「國父紀念歌」が流れるのである。



 のだが。ここで映画は終わらない。

 再び激戦シーン(流用フィルム)が始まり、その後蒋介石が革命を引き継ぎ、中国全土を統一したのだという字幕が入り、革命成功を孫文の遺影(本物)に報告するという撮り足し感満載のシーンの後に、やっと映画はエンディングへと向かうのだ。この4分ほどの場面、作品全体の流れからはすごい違和感があるのだが、オリジナルにも存在したのだろうか。

 ちなみに86年には中国でも『孫文』の伝記映画が製作され、こちらには大和田伸也なども出演しているが本作とは別物である。

危険な道



In Harms Way 洋泉社の激烈推奨本「戦艦大和映画大全」に載っていたジョン・ウェイン主演のアメリカ映画。1965年製作でモノクロ・シネスコサイズ。カーク・ダグラス、ヘンリー・フォンダ、ジョージ・ケネディとイイ顔の揃った本編167分の超大作。本書を読むまでそんな作品の存在も知らなかったし、監督のオットー・プレミンジャーも正直、馴染みない。それでもDVDを購入した理由はただ一つ。売値が1,500円だったことと「10mの巨大戦艦大和」が登場するからだ!! あ、二つか。

 観賞前に収録されていた予告編3本を見るが……なんか地味臭い。って言うか、オッサン誰だよと思っていたら、製作兼監督のオットー・プレミンジャーだった。何、俳優さんたち差し置いて出しゃばってんのかなあとイヤな予感が脳裏をよぎる。

 物語は真珠湾攻撃前夜の海軍基地からスタートする。これまで日本側の戦争映画は散々見てきたけれど、当然、戦争は相手のあることであって、アメリカにはアメリカの見方があるわけだ。そこを差し引いても、展開されるドラマは浮気だ三角関係だ出世競争だと、お前ら戦争中なんだからもうちょっと真面目にやれよ、と言いたくなる始末。何たるヨロメキ戦争ドラマ。『ハワイ・マレー沖海戦』で真珠湾出撃前の航空兵が、「今、アメ公たちは何してると思う? 女とダンスを踊っとるんじゃとよ!!」と爆笑するシーンがあったが、本当に米軍はそんな感じだったのか? 最前線で参謀長が友軍のナースをレイプしてるんじゃねえよ。さすが戦勝国は余裕があるなあ、物語上は連合軍の反転攻勢前なんだが。

 ただ、それでもラスト40分ほどを残し、カーク・ダグラスが捨て身の偵察飛行で日本軍の大艦隊を発見するあたりから、ちゃんとした戦争映画になってくる。雲霞のごとく押し寄せるゼロ戦(中には脚だしたままのガウォークなゼロもいるけれど)の攻撃を受けながら、艦隊の中心に巨大戦艦大和を目撃するサスペンス。

 ディテールが甘いためか、あまり大和への寄りの絵はないのだが、それでも全長260mの超巨大戦艦のシルエットがシネスコ映えすることはアメリカ軍もよく知っている。進撃する機動部隊を狭い水路で待ち伏せて。機雷と水雷で攻撃する逆日本海海戦みたいな展開だが、ラスボス戦艦大和は微塵にも臆することなく攻め寄せる。この辺は不沈戦艦の異名を持つ世界最大の戦艦の貫禄だ。そのまま46センチ砲が火を吹くと、米艦艇は一発で粉砕されていく。他の艦艇と差別化した重低音の砲撃音がズッシリと耳に残る。

 考えて見れば、邦画に登場する戦艦大和が、艦隊戦で活躍する場面はほぼ皆無。というのも、大和が主役の作品はすべからく、沖縄特攻で撃沈される場面がクライマックスになっているからだ。本作に登場する大和は、そうした悲劇の戦艦ではない。米軍が初めて目撃する正体不明の強敵だ。実際──そして当然のことながら、ジョン・ウェインは大和を沈めることができず、逆に乗艦が大破、本人も重傷を負った場面で戦闘シーンは終わる。

 戦争映画の快楽を求めるには細々としたいやなドラマが長すぎ、はたまたラストは原爆が炸裂する映像で終わるなど、日本人から見てあまり気持ちの良い作品ではないが、それでも戦艦大和が艦隊決戦で大暴れする姿は、機会があればぜひとも大画面で観賞したい1本だった。

危険な道 スペシャル・エディション [DVD]危険な道 スペシャル・エディション [DVD]
出演:ジョン・ウェイン
販売元:パラマウント ホーム エンタテインメント ジャパン
(2010-11-26)
販売元:Amazon.co.jp
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ウルトラマンゼロ THE MOVIE 超決戦!ベリアル銀河帝国

すみません、ネタバレあります。



「少なっ!!」劇場に入ってくるなり小学生男子が思わず声をあげた客の入り、しかもどちらかと言えば俺みたいな「大きなおともだち」が中心。本当にすみません。新年早々、行ってきたぞウルトラマンシリーズ誕生45周年記念作品『ウルトラマンゼロ THE MOVIE 超決戦! ベリアル銀河帝国』。なお、パンフは「てれびくん特別編集」だ。

 前作『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE』で生まれた新ヒーロー「ウルトラマンゼロ」。ウルトラセブンの息子という設定は「いつ? どこで? 誰と!?」と世のオジサンたちを驚愕させた彼を主役に、70年代円谷プロで構想されたという「銀河連邦」のスキームを加味し、不人気と社長退陣のゴタゴタ故か何となく敬遠されていた感のある「ウルトラマンネクサス」の世界観を光の国に統合した作品である。

 現在もなお続いてはいるものの、タイ・チャイヨーとの訴訟合戦にも方向が見えてきたことも大きいのか、今回はウルトラ戦士の世界にミラーマン(ミラーナイト)、ファイヤーマン(グレンファイヤー)、ジャンボーグA(ジャンボット)が合流するのが最大の話題。そこでまた「並行宇宙」が飛び出すあたりは安直だなあと思うが。ウルトラマンAの歌詞にあった「銀河レンポウ」は、てっきり「連峰」の字を充てるのだと思っていたのだが、円谷ヒーローが番組の枠を超えて共闘する「銀河連邦」構想であるらしい。って言うか、「銀河連邦」が歌詞に出てくるヒーローには「トリプルファイター」もあるんだけど、無視か? いやまあ、ベリアル銀河帝国にバービーブーとか参戦されてもなあ。

 イベントたっぷりでお腹いっぱいだった前作に比べれば、今回はウルトラマンゼロの成長と、並行宇宙を救うアイテム「バラージの盾」探しに集中してすっきりしたストーリー。怪獣もミラーマンのアイアンとジャンボーグAのナントカゴーネ以外は量産型でいささか寂しい。何より怪獣もヒーローもよく喋るのだけれど、サンレッドみたいなウルトラマンゼロを筆頭にキザなミラーナイト、粗暴なグレンファイヤー、執事なジャンボットと、みんながみんな揃いも揃ってアニメ臭いのがオジサンには何ともなあ。

 そもそも平成ウルトラマンを全然見ていないので、近年のウルトラヒーローの立ち位置というものを把握していないのだけれども、昭和のオジサンにとってウルトラマンというのは、東映ヒーローと違ってどこか泰然としたオトナというイメージがある。ウルトラマンA最終回のありがたい訓示とか。だいたい何万年とか生きてるという設定が、相当オトナだという大前提だと思う訳で、ウルトラマンゼロのガキっぽさにはどこか違和感がある。口元に親指当てて「フッ…」とか声に出して言うなよう。

 それに、いささかネタバレ気味で恐縮ではあるが、いやまあ死んだと思った仲間がことごとく生きてる。どうせ生きてるんだろうなあと思ったらやっぱり生きてる。そりゃ生きてた方が嬉しいには違いないが、何だか軽いなあと。軽いと言えば銀河連邦遙かに超えて光の国を襲撃した、百万体のダークロプス(量産型にせウルトラマンゼロ)軍団もバカみたいにあっさり片付けられるし、ベリアル銀河帝国によって絶滅させられた星のどこにそれだけ軍事力が? と思う程に宇宙大連合艦隊が集結するしと、ラストに至ってギャグみたいな展開だ。ウルトラ映画のお約束、ラスボス合体怪獣は登場しないものの、何の勝算あってかベリアルがスペースゴジラと言うかグランドキングと言うか、変な怪獣に進化するのもなあ。って言うか、ベリアルは前回の方が強くないか? 進化を遂げるごとにどんどん弱くなってないか?

 今年の冬にも新作映画が準備されているようで、今回結成された新ユニット「ウルティメイトフォースゼロ」が活躍するアベンジャーズみたいな作品になるのであろう。ストーリーに期待するところは少ないので、どんなくすぐりネタが混じるのかだけが楽しみではある。ファイヤーマンからハモニガン復活しないかな、とか。

ウルトラマンゼロ THE MOVIE 超決戦!ベリアル銀河帝国 オリジナル・サウンドトラックウルトラマンゼロ THE MOVIE 超決戦!ベリアル銀河帝国 オリジナル・サウンドトラック
アーティスト:サントラ
販売元:avex trax
(2010-12-22)
販売元:Amazon.co.jp
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GORATH 妖星ゴラス海外版



gorath 『妖星ゴラス』という古典SF映画の傑作がある。今さらそのストーリーを説明するのも甚だ気恥ずかしくはあるが、時は1980年、人類がはるか太陽系宇宙へと勇躍していた時代を舞台に、地球激突の進路を突き進む黒色矮星(ブラックホール)ゴラスの惨禍から人類を救うべく、世界の科学者が一致協力して空前絶後の「地球移動計画」を実行する物語だ。天体衝突ネタは数々あれど、本作の「地球が逃げる」というアイデアは秀逸至極で、南極大陸に原子力で稼働する巨大ジェットパイプ基地を建造して、その推力で地球そのものを動かすという作戦である。

 国連に世界中の科学者が一堂に会し、黒板にそれっぽい数式が書き連ねられ、本多猪四郎の大真面目な演出と相まってリアリティとスケール感に溢れて物語は展開していく(何と劇中の時間経過は足かけ3年である)のだが、本作にはあろうことか巨大怪獣が出現するのである。その名はマグマ。見た目はセイウチそのものなのだが志村喬博士の解説によれば、太古に絶滅した爬虫類だという。この怪獣がジェットパイプの一部を破壊してしまった時間のロスにより、ゴラス回避のスリルが一段と高まるという塩梅なのだが、そこまで大真面目なSFに徹していたのに何で怪獣が?

 大昔の話でいささか記憶もあいまいでソースも見当たらないが、怪獣マグマ登場の背景は「やっぱりツブラヤは怪獣じゃなきゃ」という海外バイヤーからの強い要望があったからだという、まことしやかな噂があり、しかしその一方で「海外版のゴラスにはマグマが出てこないらしいぞ」という説も流れていた20年前。これと同じ話は「フランケンシュタイン対地底怪獣」の大ダコにもあった(山の中にも関わらずラストに大ダコが突然登場するバージョンは、長らく「海外版」と言われてきたが、実際の米国公開版にはタコは出てこない)が、果たして真相は? 沸々とした疑惑が渦巻く中、やっとお目当ての海外版「GORATH」を見る機会を得た。

 最初の方は駆け足気味で、水野久美と白川由美が全裸で水浴しようとする場面もないが、基本的な筋立ては日本版と同じで、事務所で座ったまま電話かけてるだけの撮り足し外人も出てこない。イカす主題歌「俺ら宇宙のパイロット」は全カット。イデ隊員がスイングな曲を口ずさむだけだ…アメリカ人め!!

 さて、問題の怪獣マグマであるが……出てこない!! 何故か志村喬博士が南極に呼び出され、顕微鏡覗き込んで何事かを語り、ジェットビートルで何かを攻撃する場面はあるが、マグマは出てこない。プアな英語力で、それがただの地滑り現象だったのか、それとも何某かの巨大生物が存在することになっていたのかは判らないが、怪獣マグマはビタイチ映らない。

 確かに私にも「何でそこにカイジューが出て来んのよ?」と、マグマを嘲る気持ちがなかったかと言えば嘘になる。しかし、こうして「マグマ抜き」のバージョンを見せられて、あのセイウチが作劇上いかに重要な位置を占めていたのか、どれほどキャラの立った存在だったのかを思い知ったのだった。出せよマグマ!!

 そしていよいよい迫りくる妖星ゴラス。月はゴラスに呑みこまれ、列車は脱線し、東京は水没する。刻む秒針、迫りくる運命の瞬間……遂に時計は、ゴラス再接近を伝える時刻を迎えた。






 え〜、「We did it?」「We did it!」の会話もカットかよう。




 
 ラストは久保明と水野久美が、利根川に組まれたオープンセットを見降ろす場面だが、ナレーションがかぶったりして尺が合わなくなったのか、音楽がまるまる『世界大戦争』に差し替えられていたのだった。それ、人類が滅亡するゲンの悪い曲なのに。

妖星ゴラス [DVD]妖星ゴラス [DVD]
出演:池部良
販売元:東宝
(2004-02-27)
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世界大洪水(Deluge)



deluge 世の中にパニック・スペクタクル映画は数々あるけれども、「人類絶滅」「地球滅亡」にまで突っ走る映画はそれほど多くはない。たいていの場合、来るべき週末は人類の叡智か無理のある幸運で未然に防がれるのが常だ。映画秘宝2011年2月号で組まれた特集「オール・ジャンル ランキング」の中の「犠牲者規模で観るパニック映画Best3」では、60億人類をチョッコラチョイでパーにしてしまった男気ある作品のタイトルが列挙されているが、そんな勇敢な作品に勝るとも劣らない、スカっちした滅亡を描いた作品が、1933年作「Deluge」だ。邦題は「世界大洪水」。

 YouTubeにアップされたスペクタクル・シーンを見ていただければ一目瞭然、阿鼻叫喚な地獄絵図が繰り広げられるが、実はこれ、開巻早々15分程度で訪れるカオス。さしたる理由も特に説明されず、巨大地震と大型ハリケーンが盆と正月のように来襲して欧米沈没。それ以外の世界は製作者の関心になかったのか全く語られないので不明だが、恐らくは同様に大滅亡の渦中に沈んだものと思われる。

 それでは残り55分で何が描かれるかと言うと、文明の復活とその陰に消えた一つの儚い愛。人類滅亡新派大悲劇だ。

 人口の大半が消滅したアメリカ大陸には、残された資源で新たに国家再建に尽力する人々と、法と秩序が崩壊した世界で強いものだけが生き残れば良い、力こそが正義だと考える北斗の拳イズムの悪党がヒャッハー! と暮らしていた。そこに漂流してきた謎の美女クレア。彼女は悪党ジェプソンの棲家を逃れ、常識人マーティンの元にやってきたのだった。マーティンは大絶滅の夜に妻子を失い孤独に暮らしており、やがて悪党一派との戦いの中で二人は愛し合うようになる。

 ところが、生き残った人々が新たな街を建設しており、実はそこに死んだと思っていた妻と子どもも無事に暮らしていた。マーティンは再会した妻子と生活をはじめ、やがて街の人々に推されて新リーダーとして活動することになる。居場所を失ったクレアは、ただ一人無法の荒野へと帰って行くのだった。

 何しろ70分で世界崩壊と人類復興を描くので、慌ただしいにもほどがあるが、メロドラマを軸にして破綻なくストーリーは進行する。クレアを演ずるペギー・シャノンは本作で初めて見たが、可憐さとヴァンプ感が同居してさしずめアメリカン小畑絹子の風情だ。圧巻の大特撮は80年前の仕事とは思えない精緻な映像で、マンハッタン崩壊の美しさは息を呑むばかり。別に地震国でもなく、また原爆開発前にしてディザスター・ビジュアルへのイマジネーションは流石にプロの職人技だ。災害後の荒涼感も実にうまく表現されていて、復興に力尽くす人々の明るさが何ともアメリカン。

 90年代にアメリカでVHSは発売されたようだが未DVD化。版権買ってDVD出すのってどのくらいかかるのかなあ、と真剣に考えたくなる至高の特撮パニック篇だった。

Attack of the Galactic Monsters


Attack of the Galactic Monsters (1969) Part 1/3
アップロード者 francisiii. - 注目の映画やテレビショーを最初から最後まで見る。

attack of the galactic monsters 遙か遠い未来の世界、地球侵略を企む異星人が、怪獣軍団を操って来襲してきた。迎え撃つのは人類最後の希望、万能戦艦轟天号と、我らが怪獣王ゴジラだ!! とまるっきり『ゴジラ FINAL WARS』と同じストーリーだがさにあらず、本作は1983年に多分アメリカで放映された50分ほどのTVムービーだ。

 元ソースは『惑星大戦争』と『流星人間ゾーン』のゴジラ登場編。基本的なストーリーは『惑星大戦争』に準じているが、睦五郎演ずる恒星ヨミ第3惑星地球攻撃総司令官ヘルがガロガバラン星人の手下に設定されるなど、部分的に変更されたり話の前後を入れ替えたりしている。

 何しろ1時間に満たない尺なので、『惑星大戦争』前半の宇宙ステーション・テラの遭難や滝川博士邸でのアクション・シーンはばっさりとカット。森田健作・沖雅也・宮内洋・浅野ゆう子の4人が久々の再会を祝って乾杯しているところに防衛軍基地から呼び出しの電話が……で、急いで基地に戻ってみると、何と浅野ゆう子が宇宙人に誘拐されていたのだ!! って、さっきまで一緒に飲んでたじゃないか!? そんな細かい矛盾を気にすることなく、「とにかく浅野ゆう子の黒革ボンデージが1秒でも早く見たいんだ!!」というスタッフの並々ならぬ意気込みが痛いほどに伝わってくるのだ。

 かくしてガロガバラン星人の地球攻撃は唐突に激しく始まった。ヘルファイターによる世界各都市への空爆に加えて、恐獣ミサイルからは凶悪な怪獣が現れて人々を襲う。地球防衛軍は轟天の完成を急ぎ、地底からは怪獣王ゴジラが僕らのために出動だ!! 取りあえずガイガン瞬殺。

 ぼけぼけのVHS画質で、当然のことながら全編英語吹き替えではあるけれど、元々の話をだいたい知っているおかげであまり苦にはならない。『ゾーン』流用フィルムは割と的確に挿入されて、『惑星』との画質の差はともかくとしてあまり違和感がないのは、もしかしてこれ、東宝自身が編集したかと思わせる。ただ、ゴジラ登場場面には必ず「惑星大戦争のテーマ」(LPではなく劇伴メインタイトル)が流れるルールになっていて、三沢郷の『ゾーン』サントラと混濁してなんともシュール。と言うかカオス。

 中盤には睦五郎が金星と共に爆殺されてその後の展開が不安になるが、ちゃんと轟天対大魔艦の一大決戦はクライマックスに用意され、しかもゾーンファイターは意外な場面で突如登場、コーヒー吹きそうになり、ラストの池部良特攻は、何故かリリカルな「平和への願い」のメロディーをかき消して「惑星大戦争のテーマ」で元気良く突っ込むという豪快なオチに。『ID4』のオッサン特攻、基地大歓声を思い出したが、アメリカ人は特攻についてどういう感覚を持っているのだろうか…。

 それにつけてもお話の構成といい、全力疾走するゾーン版ゴジラといい、もしかして本当に『GFW』の元ネタなんじゃないのかコレ。こんな作品が存在すること自体、つい最近まで知りもしなかったが。

メガ・ピラニア



メガ・ピラニア 賛同する人は少ない(と言うか、誰もいない)だろうけれど、間違いなく映画の歴史を変えた印象的なビジュアルの一つに、『メガシャークVSジャイアント・オクトパス』における、超ド級巨大サメがダイブして航行中の旅客機をたたき落とすシーンがある。究極の表現の自由と言おうか、ああ、人間は思いついたら何を描写してもいいんだ……と深く感嘆したものだ。この作品を製作した米国の便乗映画専門メーカー・アサイラムが送る「メガ・シリーズ」最新作が『メガ・ピラニア』だ。もちろん、ジェームズ・キャメロンがトラウマに触れて酷評した『ピラニア3D』の便乗作品。

 ベネズエラを訪問中の米国要人が謎の死を遂げ、テロを疑ったCIAは特殊部隊の隊員フィッチを調査に派遣する。だが事件は意外すぎる展開を見せ、真犯人は環境破壊かなんかで生態に異常を来たしたピラニアだった。しかも奴らは、無制限に成長するのだ。

 元がTV映画なので流血とおっぱいは控えめだが、サイズだけは無制限、無秩序、無節操。当初はフツーのピラニアより少し大きいくらいかと思ったが、食人と共食いを重ねてどんどん成長していく様子は『メガ・スネーク』に近いか。人間を丸のみするくらいはご愛想、やがては群れで襲いかかって戦艦や原潜を鎮めるわ、陸に向かってジャンプしてはビルの外壁に突き刺さるわ、果ては軍用ヘリを一口に咥えるわとやりたい放題。しまいには元々がピラニアであったことなどどっちでも良くなる体たらくだ。

 もちろん低予算で早い・安いが信条のアサイラム作品なので技術的には超テキトー。曖昧な魚影がバチャバチャしてるうちに水面が鮮血に染まるという、左足仕事にもほどがあるVFXだけれど、これで「CGが安物臭い」と文句を言うのは田舎者。思いついたモン価値のC調で無責任な作品を楽しめないなら『アバター』でも見ていた方がいい。飛びかかる肉食魚類をアリキックでバシバシ倒していく超絶の展開に悶絶してこそアサイラムの神髄だ。

 リミッターが外れたようにエスカレートし巨大化するピラニア軍団に、どういうオチをつけるつもりかと不安な予感は的中し、ラストはいささか拍子抜けたが基本的にはOKな出来。しかし、年末に本邦発売も5,000円を超える定価というのがなあ。2,000円なら確実に買いなんだがなあ。

 なお、本家アサイラムではクリスマス商戦に『Mega Shark VS Crocosaurus』が控える。巨大メガ怪獣のさらなる大暴れに超期待だ。

メガ・ピラニア [DVD]メガ・ピラニア [DVD]
出演:ポール・ローガン
ビデオメーカー(2010-12-03)
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『海魔、陸を行く』『クトゥルーの呼び声』『夜半歌聲』『夜半歌聲續集』 in カナザワ映画祭2010 世界怪談大会

海魔、陸を行く 『海魔、陸を行く』

 現在は新橋でTCC試写室を運営していたりする国映が、1950年に製作した動物"ドキュメンタリー"。監督は後に『水戸黄門漫遊記 怪力類人猿』などを手がけた伊賀山正徳。主人公のタコの声を演ずるのは徳川夢声で、同時期の『エノケンのとび助冒険旅行』なんかと同様、戦後僅かに5年、まだまだ荒れ果てた国土にあって子ども達に夢を与えようとする企画なのだろうが、しかし!

 物語は海中で漁師に捕らえられたタコが鮮魚店に売られるも隙を見て脱走、一路生まれ故郷の海を目指して、果てしなく理不尽な逆タイヤキくんな冒険を繰り広げる物語だ。もちろん、物語に登場するタコは設定上1匹なわけだが、いったい本作の撮影のために何匹のタコがスタッフに美味しくいただかれてしまったのだろうか。思わず"チャトラン"の名前が脳裏をよぎる。

 陸を進むタコの動作は、『キングコング対ゴジラ』の海魔大ダコの場面を彷彿とさせるが、あの撮影でもタコを動かすのに棒でつついたり火を近づけたりとさんざん苦労した逸話が残る。夢声タコも積極的に演技していたとは到底思えず、後半は面倒になったのか糸を括りつけて引っ張っていると思しきカットもちらほら。

 そんなタコくんに襲いかかる強敵の数々。カエルやカマキリ、クモとの出会いに突然のクマの襲撃、回想シーンではウツボ対タコ一家の大激闘、そしてクライマックスではヘビの大群との死闘! 蛸蛇大戦・蛸! 海を目前に控えて、ヘビがうじゃうじゃいる谷間を超えなければならない、進路にはかろうじてタコ1匹が通れるだけの朽ちかけた吊り橋! どうするタコくん、どうなる夢声! その時、一羽のモンシロチョウからの励ます声が……キミはあの時、クモの巣から救ってあげた蝶々のお嬢さん。って言うか、ドキュメンタリーってそういうものか?

 期せずして「トカゲ特撮」と「生け簀特撮」の両方を味わえるお得作。プリントはタイトル部分でさえ欠落したボロポロの状態ではあったが。続編『海魔の逆襲』なる作品は、監督が「痴漢透明人間シリーズ」の関孝司! うわソレすげー見たいんですけど、国映さん!

the_call_of_cthulhu_dvd_cover 『クトゥルーの呼び声』

 モノクロ・スタンダード・サイレント作品だが2004年作。多分自主製作のナンチャッテ無声映画だ。H.P.ラブクラフトの同名小説をほぼ忠実に映像化したらしいのだが、クトゥルー関係は全然読んだことも見たこともないので新鮮と言えば新鮮だ。何しろ私は"ルルイエ"と聞いても『ウルトラマンティガ ファイナル・オデッセイ』しか、"古きもの"と聞いても『ゴジラ ファイナル・ウォーズ』の佐野史郎しか思い出さん。

 自主映画の俳優さんは、そのクサくわざとらしい演技とセリフ回しがしばしば鼻に付くものだが、「サイレント」という体裁はそういう意味では効果的だった。時代設定もラブクラフトと同時代(?)の1920年代なので、当時の記録フィルムも織り交ぜつつ進行するが、それ以外はビデオな画質もカッティングも"今"の映画そのままなのが少し残念。音楽もシンセだしなあ。貨物船の特撮はチャチいものの、巨大クトゥルーは登場場面は少ないながらストップモーション。



夜半歌聲 『夜半歌聲』『夜半歌聲續集』

 戦時中の中国で製作された「オペラ座の怪人」の翻案作品。正編は1937年、続編は1941年の作品だ。公開時には恐怖のあまりに死者が出たとの逸話や、妻の中国語の先生が「あんな怖い映画は絶対に見ない! だから見たことない!」と言っていたという話を聞き、大変に期待を込めた作品だ。

 取り壊しの決まった劇場から夜な夜な聞こえる謎の歌声。その劇場を訪れた劇団が体験する不思議な怪異。と、当初の期待を存分に持たせるのだが、"ファントム"の述懐が始まると、おや? と思わせる。映画秘宝や公式サイトの事前情報では全く触れられていなかったが、本作は抗日映画という側面もあったのだ。

 "ファントム"は大方の予想通りかつてこの劇場の大スターだったが、さらにその前は革命闘士のリーダー。軍閥や悪徳地主を打ち倒して人民を解放するために戦っていたのだ。俳優となってからも革命への情熱はとどまることなく、自らが脚本を書いた舞台劇「熱血」は、そのアジテーションな主題歌と共に大衆の圧倒的な支持を受けていた。しかし、劇場主である元軍閥の大地主から疎まれ、さらには地主の娘との恋に横やりを入れる地主のイヌみたいな男から、嫉妬の末に硫酸で顔を焼かれて怪物になってしまったのだった。

 同年代の『游撃進行曲』ほど直接的ではないが、軍閥や地主の背後に「日帝」が暗喩されていることは明らかで、これも毛沢東派の作品なのかなと思っていたが、中国映画の歴史をひも解いてみると、そもそも戦前中国映画は左翼的な傾向が強く、また国民党と共産党で映画製作会社の争奪戦が行われていたらしい。

 さて、"ファントム"は自らの変わり果てた姿に絶望し、恋人には「死んだ」と伝えさせたところ、彼女は悲しみのあまりに気が狂ってしまった。そんな彼女の心を慰めるために、彼は夜な夜な月の光の中で歌を聴かせていたのだが、訪れた劇団に男前で革命闘士の気概を持つ団員が。"ファントム"はその男に自らの後を継がせついでに恋人にも沿わせようと目論んでいたのだが、そいつは彼女持ちのリア充だった! オペラ座の再婚計画は一瞬にして頓挫。そんな勝手な思惑を持たれていたとは露とも知らない男前は困り果てるが、何だか"ファントム"に嫌われてしまう。……この映画、怖くないよ! どこで死ぬんだよ当時の観客!!

 最後はオリジナル『オペラ座の怪人』同様に舞台大混乱の末、『フランケンシュタイン』みたいに追い立てられる怪人と、ホント、ユニバーサル・ホラーをよく研究してるなあ。演出もなかなかにモダンでハリウッド的。そんなに怖くはなかったが、大ヒットしたとの逸話にウソはない快作だ。

 と、ここまでが正編。

 4年後に作られた『續集』。怪人のメイクが違うぞ、と思ったところ、監督の物忘れでもスタッフの手抜きでもなく、前作のラストを生き延びた"ファントム"が理不尽な放浪の果てに、悪い気違い博士に騙されてさらにひどい顔に改造されていたことが判る。この博士の実験室を指して『フランケンシュタイン』的であるとの解説もあったが、健康男女のはく製を展示していたりと、深作欣二の『黒蜥蜴』を思い出させる舞台装置。そうか、1941年の中国映画でおっぱい映すのはアリだったのか。

 ただ、ホラー的な側面はほとんどこの博士に関するエピソードだけで、全編を貫くのは「革命」エピソード。前作の男前は南に渡って革命軍に合流、ついに人民革命の烽火は上がり、虐げられていた農民や人道主義のために起ち投獄されていた闘士たちが解放されていく姿が感動的に描かれるが、怪人ほぼそっちのけ。いや、正確には相変わらず物語の中心にいるものの、基本的に誰も怪人の風貌には気も留めず、普通に革命運動の中で戦ったり捕まったりしてるだけだ。自慢の歌声も回想シーン以外ではラストに1回聴かせるだけ。部分的には面白いところもあるが、全体にはバラバラなエピソードとご都合主義な展開が何とも残念な凡作に終わってしまった。

 正編は中国でVCD、アメリカでDVDが出ている模様。なお、この監督はホラーにこだわる左翼映画監督として色々と作品を撮っているらしいが、結局『夜半歌聲』しかヒットせず、戦後も香港に渡って映画製作を続けていたが鳴かず飛ばず、失意のうちに交通事故で死去したとの事(自殺説もあり)。

 また、『夜半歌聲』自体は何度もリメイクされ、90年代にはレスリー・チャン主演作が(見てないなあ)。07年には大陸で全30話のドラマにもなっているようだが、どんなのかなあ。

明治天皇と日露大戦争

明治天皇と日露大戦争 完璧な映画というものがもしも存在するとすれば、本作は日本人にとって紛れもなくその1本に数えられるべき作品だろう。ほぼ全シーン・全カットがすべて名場面、全ダイアログがすべて名台詞。恐らくいかなる思想・信条を抱く人にも、その内なる秘めた愛国心を揺さぶらずにはいられない本作に付されたキャッチコピーは「大感動国宝篇」。昭和32年、大蔵貢社長体制の新東宝が社運を賭けて世に送り出し、空前の大ヒット作となった「大シネスコ」戦争巨編、それが『明治天皇と日露大戦争』だ。

 義和団の変の終結後、満州にとどまり軍備を増強する世界最大の陸軍国・帝政ロシアに対して、東洋の小国・日本が果敢に立ち向かい大勝利を収めた日露戦争を、明治天皇の指導と軍部の奮闘を中心にパノラミックに描き、後の邦画各社の戦記大作の原型となった作品であるとも言える。

 全編を貫く明るく前向きな作風は、その他の新東宝戦争映画──続編にあたる『天皇・皇后と日清戦争』『明治大帝と乃木将軍』を含めて──とも一線を画し、そこに戦場の「動」と宮中の「静」が絶妙のバランスで配置される。新東宝男性陣オールスター・キャストではあるが、全体にはそれほど予算をかけたようにも見えず、はたまた早撮りで有名な渡辺邦男監督作品とあってさほど丁寧に撮られたようにも見受けられない。山縣有朋演ずる高田稔の噛んだセリフもそのままだ。にも拘わらず、画面からみなぎる気迫と言うか気力と言おうか、数値や理屈では言い表せないエネルギーが本作には満ち満ちている。

 その最たるところが完全に天皇になり切った嵐寛寿郎の演技を超越した存在感にある。アラカンの発する一言が、脚本に指示された俳優のセリフの域を凌駕して、真に天皇の言葉として魂に響いてくる。自然、周囲で演ずる元老・内閣・大本営の面々を演ずる名だたる俳優陣も、真実の天皇の言葉に恐懼、畏敬する内面がにじみ出てくる。実に講談調の芝居がかったやり取りでありながら、それが明治のドキュメンタリーを見ているような高揚感にとらわれてくるのだ。

 また物語の端々に登場する代議士の演説や国民大会の様子が凄い。大観衆を前に龍崎一郎演ずる戸水博士が政府支援、戦争支援の大演説を打ち、感極まった聴衆が愛国の極みを絶叫し大喝采を呼ぶ場面の激情。本当は当時だって反戦運動もあっただろうし、なかなか成功しない旅順攻略作戦に苛立った国民が乃木大将の家に投石するなどの描写が『二百三高地』には出てきたが、本作にはそんなものは一切ない。全国民100%の支持率だ。

 俳優の中では乃木大将を演じた林寛がハマリ過ぎて怖いほどで、基本的に新東宝作品でしか見たことがない気がするが、もう怪談映画で切られて化けて出ても、『地獄』で業突く張りな介護施設経営者を演じても、『スーパージャイアンツ』で宇宙服着て人工衛星に突撃しても、もう乃木大将にしか見えない。他には大感動の戦況報告を読み上げる沼田曜一や細川俊夫が登場場面も多く印象に深い。

 そして特筆すべきは鈴木静一の音楽で、突撃ラッパをモチーフに勇壮なマーチ曲をメインテーマとして、随所に流れる軍歌と相まって物語をこれ以上なく盛り上げていく。はたまた、音楽的な抑揚で名調子の解説を聴かせる高橋博のナレーションも、新東宝戦記には欠かせない重要アイテムだ。ところどころに現れる字幕スーパーも、状況説明を超えてドラマの一部として視野に踊る。

 冷静に見れば一面的な視点で起伏のない物語がただ羅列された、「映画」としての出来は惨憺たる作品であるはずなのだが、何度見てもメインテーマが終わり高橋博のナレーションが聞こえてくると、「冷静に見る目」は途端に消え失せ、アドレナリン全開で90数分を疾走してしまう。本作を同時代に体感した観衆は、明治日本の大躍進に、戦後復興から経済発展へと邁進する当時の日本の勇躍を重ね合わせたのだろうか。何にしても実に羨ましい。今もし、こんな映画が作られたとしたら各方面から批判殺到なのだろうな。何とも寂しくつまらない時代になったものである。

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出演:嵐寛寿郎
販売元:バップ
発売日:2005-07-21
おすすめ度:4.5
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二百三高地



二百三高地 それまで日露戦争を描いた映画と言えば、新東宝の『明治天皇と日露大戦争』や東宝の『日本海大海戦』に代表されるように、陽性で勇敢な作品がメジャーと言えた。それは日露戦争が、大国ロシアを相手に明治新政府が堂々の勝利を収めたことによるところが大きいのだろう。しかし、遅れて戦記大作路線に参入した東映は、この『二百三高地』で真逆の作風を提示することになる。この予告編を見て劇場に足を運んだ当時の観客は、どういう気持ちで本作に対峙したのだろうか。

 監督は舛田利雄、脚本は笠原和夫で、本作の萌芽は6年前の笠原脚本作品『あゝ決戦航空隊』(監督:山下耕作)に見ることができる。軍首脳から一兵卒、民間人に至る重層的な配役と、とりわけ底辺の目線から描かれる前線の現実にフォーカスした作劇は、『二百三高地』や以後の舛田・笠原戦記に共通する。

 一応、キャスティング上の主役は仲代達矢演ずる乃木希典大将だが、物語を引っ張るのはあおい輝彦が率いる陸軍小隊。やくざ、幇間、豆腐屋、職人と出自はバラバラで、いずれも徴兵により満州へと送られる。物語も日露交渉や旅順港閉塞作戦あたりはサッパリと省略、また事後の水師営の会見もなければ日本海大海戦は「矢印」だけで描写。全く旅順攻防戦のみを一点集中で描き切る。

 特撮は東宝からベテラン中野昭慶を招聘。旅順要塞の大ジオラマからお得意の爆発描写を遺憾なく発揮。硝煙の臭い漂う中、死屍累々の突撃作戦が敢行されていくのである。

 一方ドラマはベタの極みを尽くし、主人公あおい輝彦が反戦運動にも共感するロシア贔屓の教師であったり、あり得ない偶然で出会った夏目雅子が異様に積極的であっという間に恋に落ちたりする展開はしらける。多分、戦争映画に女性を関わらせる展開は『動乱』から始まる東映の得意技だが、30年前の当時としても女性観は古臭く演歌っぽい。

 それでも一応の世界観、戦争観を抱いて従軍したあおい輝彦が、巨大な殺人装置として立ちはだかるロシアの旅順要塞の前に、友軍が次々と死んでいく姿に人格崩壊を来たしていく様相は身震いするものがあり、特に第1部終了間際、第2次総攻撃で日本軍・ロシア軍共に多大な戦死者を出し、あるいはゾンビ化した傷病兵がうめき苦しむ中をさまよい歩く場面は強烈だ。さだまさしの鬱陶しい「防人の詩」も、この場面ではこの曲しかないだろうという程に画面にマッチしていた。

 また、陸軍上層部の中では事実上こちらが主人公じゃないのかと思わせる丹波哲郎のフリーダムな怪演。この時期、大作映画の監督として舛田利雄は各方面で重宝されていたが、その真骨頂は丹波哲郎の取り扱いのうまさであったのではないか。『ノストラダムスの大予言』しかり、『人間革命(正・続)』しかり。『日本海大海戦・海ゆかば』や『零戦燃ゆ』が凡作に終わったのは、ひとえに丹波分が足りないからではないかとすら思える。本作でも弾薬の補給要請に訪れた乃木第3軍の参謀を迎えるや、突然「歯が痛い」と言いだしてゴロンと横になったりやりたい放題。しまいには乃木をテコ入れに司令部へと出向き、作戦を変更させるやあっという間に旅順を落としてしまうという丹波マジックを見せる。って言うか、実質的に旅順を落としたのは乃木じゃなくて児玉じゃないか。

 ラストバトルは日露両軍ともに弾を撃ち尽くしては石を投げ合い、銃座やスコップで殴り合い、果ては噛みつき、眼潰し、最後は首をゴキっと捻じ曲げるなどブルース・リー殺法が炸裂。戦争って、そこまでしなきゃならんものかねと呆然とする。明治ヤング・ジャパンが列強大国に打ち勝つというテーマは微塵も感じさせない暴力の応酬。『バトル・ロワイヤル』が裸足で逃げ出す実録戦記。「愛とロマン」のキャッチコピーに騙されて、長らくうろ覚えでバカにしていてすみませんと頭の下がる、暴力映画の極致だ。

 …だけどやっぱり、夏目雅子はいらんよなあ。

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出演:仲代達矢
販売元:東映ビデオ
発売日:2010-06-01
おすすめ度:4.0
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第五福竜丸

第五福竜丸 南太平洋で操業中に米軍の水爆実験に遭遇した日本のマグロ漁船「第五福竜丸」。映画『ゴジラ』や『美女と液体人間』がモデルにしたが、5年後の1959年、近代映画協会が事件そのものを映画化。監督・脚本は新藤兼人。

 『原爆の子』がセンチメンタリズムに堕しすぎていてイマイチ乗れず、なんとなく本作についても敬遠していたのだが、好著「タケマツ画房の仕事」に載っていた本作の映画看板が、巨大なキノコ雲に電飾をあしらった物と知り、一転して俄然興味を持ち、ようやく入手できたので観賞することになった。

 主人公の久保山愛吉無線長を演ずるのは宇野重吉で、乙羽信子との夫婦役は新藤兼人のデビュー作『愛妻物語』と同じだ。当時の宇野重吉の実年齢は45歳で亡くなった久保山とほぼ同年齢だけれど老けて見えるなあ。

 映画は第五福竜丸の焼津出港から始まりドキュメンタリー・タッチで進行。マグロはえ縄漁の場面は実際に漁船で撮影しており、釣り上がったマグロを撲殺したり、巨大なサメを刺殺したりのモンドな映像が興味を引く。漁師たちの苦しいながらも楽しい船上生活が活き活きと描かれるさまは、明るい「蟹工船」と言うか「南太平洋の一攫千金」と言うべきか。

 そんな第五福竜丸がビキニ環礁へと廻航し、キャッスル・ブラボー実験に遭遇する場面が、当然ながら前半の山場になる。流石に宣伝スチールのようにイイ特撮場面はないが、それでも閃光と原子雲、間があって爆風が襲う演出は静かでリアルな恐怖だ。もしかすると『ゴジラ』の栄光丸の沈没場面は、水爆実験によるものとのの暗喩かなと想像した。そして降り注ぐ死の灰。乗組員たちが何の疑問も抱かずに全身に浴びる場面はぞっとする迫力だ。

 やがて港に戻った船だが全員の皮膚にひどい火傷の症状が現れており、地方紙の記者が水爆実験に遭遇したとの特ダネを報じると、日本中が大騒ぎとなる。

 『原爆の子』が反戦・反核をあまりに前面に押し出していたのとは異なり、本作では反核映画っぽい要素を排し、むしろ日本の科学陣が米国の非協力や圧力の中、死の灰の正体の解析に努め、被害者たちの治療に立ち向かっていく様子を力強く描いていく。京都大学の物理学教授でストロンチウム90の検出に成功する木下博士演ずる千田是也なんか、全く東宝怪獣博士の趣向だ。ラストに久保山愛吉の葬儀場面で「原爆許すまじ」の歌が合唱されて、ああ、一応左翼傾向の映画だったんだなと思いだされるが、地域の人々も政治家も役人も、一様に「水爆の死の灰」に真摯に立ち向かっていく姿は、良い意味でとてつもなく愛国的だ。

 また、Wikipediaキネ旬DBにも載っていないが、演技陣で注目されるのが田中邦衛。元々が新藤兼人の『愛妻物語』で映画デビューしているようだが、乗組員の一人としてセリフもほとんどない役で出演するも、絶妙の位置取りで常に画面の目立つ所に登場。川谷拓三かと、福本清三かと。若大将シリーズの「青大将」役で人気を博す前、無名時代の邦衛に拍手だ。

 残念ながら音楽は林光。悪いとは言わないが劇伴として実に弱く、甘く、軽い。題材としてもドラマの作りとしても、これは伊福部昭が好適だろうに…。

 他の乗組員が回復していく中、久保山の病状のみが改善せず、やがて死に至るのだが、ラジオで逐一容態が報道されるのも印象的。日本中がこの事件に深い関心を持っていたのだろう、今ではとても考えられない世相だ。例えば東海村原発の臨界事故のときを思い出してみても。情報リテラシーは昭和29年よりはるかに進んでいるはずなのにね。

 声高な反米・反核を叫ぶでもなく、安易な難病映画に堕することもなく、新藤兼人の頂点の一つと言える静かで骨太な作品である。

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出演:宇野重吉
販売元:パイオニアLDC
発売日:2001-07-10
おすすめ度:4.5
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インチョン!



inchon_poster 朝鮮戦争において、国連軍の総司令官ダグラス・マッカーサーが立案・実行した奇跡の奇襲作戦「仁川上陸作戦」を、5年の歳月と4800万ドル(当時のレートで50億円)の巨費を投じて描く戦争超大作映画。1981年米韓合作で監督はテレンス・ヤング。主演はマッカーサー役のローレンス・オリヴィエにジャクリーン・ビセット、ベン・ギャザラ。それに日本からは三船敏郎が参戦! そんな超大作にも関わらず、日本未公開・未放映。それどころかビデオもDVDも未発売。従って、そもそも観た人がほとんどいないという幻の作品だ。

 本作を製作したのはカルト教団の統一教会で、プロデューサーは当時の国際勝共連合の会長だった石井光治、教祖・文鮮明も「スペシャル・アドバイザー」の肩書で一枚看板のクレジットだ。そもそも文鮮明が「キリスト教の真理」全15部作の映画製作を発案し、その栄えある第1作としてクランクインしたのが「Inchon!」だったという訳だ。

 この作品については映画秘宝やブログでの町山智浩氏のレビューに詳しいが、それ以上に、もしかして日本語の文章としては最も詳細にレビューしているのではないかと思われるのが、代々木系映画評論家・山田和夫氏の著書『偽りの映像 戦争映画を描く眼』かもしれない。本書によれば、この企画は当初日本の東宝に持ち込まれ、準備稿は須崎勝弥が手掛けたという。とすれば、想定される監督は丸山誠治、特撮監督は中野昭慶あたりであったのだろうか。マッカーサー役はハロルド・コンウェイかもしれないが。このまま映画化されればどれほど素晴らしい作品に仕上がったのかと感嘆するが夢もまた夢。怪しい宗教団体の反共映画に手を貸すのかと激しい反対運動が起こり、結局東宝は製作を断念してしまった。こういう場合、我々は「表現の自由」についてどのように考えれば良いのだろうか……。

 かくして映画は迷走し、米国人スタッフを中心に撮影が開始される(監督もアンドリュー・V・マクラグランから変更)が、何しろプロデューサーがド素人の世界日報社長なので現場は混乱、飽くなき撮り直しを重ねて膨大な制作費を積み重ねるも世評は散々、もともと3時間以上の長尺映画はカンヌで140分、米国で105分まで切られるも興行成績は惨憺たるもので早々に打ち切り。かくしてソフト化もならず、ただジェリー・ゴールドスミスのサントラCDだけがプレミア価格で取引されるに至ったのだった。

 そんな作品であるが科学の進歩とは素晴らしいもので、統一教会系ケーブルTVで放映されたバージョンが少しずつ出回っており、私が観たのもこれだ。138分はカンヌより短く通常版より長い。しかし、山田和夫が憎々しげに叩いていた「結婚間際の娘が『北鮮軍』に暴行される」シーンなんかなかったぞ……ホントに観て書いた?

 映画は大きく二つに分かれ、前半はソ連の支援を受けた北朝鮮の戦車部隊が韓国に電撃侵攻、民家と言わず婦女子と言わず破壊・殺戮を繰り広げる中、ヒロインのジャクリーン・ビセットが戦災孤児を連れて国連軍が本拠を置く釜山への逃避行を描く。とにかく北朝鮮共産軍の悪逆非道、残忍冷酷っぷりが凄まじく、とりわけ口八丁の冷酷な政治局員の外道な姿が、世の東西問わず『氷雪の門』や『若き勇者たち』にも見た卑劣なコミュニストのテンプレである。本物の戦車を韓国の街並み狭しと縦横無尽に走らせた映像は迫力で、また北の侵攻を阻止するため、避難民で溢れる漢江の鉄橋を韓国軍が爆破する非情のスペクタクルも印象深い。ここだけ見ればさほどの失敗作には見えない。のだが。

 後半はマッカーサーの奇襲作戦を成功させるため、仁川港の灯台を巡る北朝鮮軍と米国海兵隊特殊部隊とのスパイ戦に移るが、これがまた……。見た目にも地味なうえに突然現れる三船敏郎。実際、朝鮮戦争に際しては日本の旧海軍軍人が海上保安庁から特別掃海隊として派遣され、戦死者も出しているのだけれど(ちゃんと靖国に入れたのかなあ)、それをモデルとしたと思われる三船敏郎は、「韓国人嫁と結婚して韓国に婿入りした旧帝国海軍士官」という大変に不思議な立場に設定。忍者のような格好で登場するや、北朝鮮が国連軍艦隊の入港を阻止するために海峡に敷設した機雷群を、一人で、泳いで、除去するという離れ業を見せてくれるのだ。ついでにマシンガンもぶっ放すぞ。『スター・ウォーズ』は断ったのに、コレとか『1941』とか『武士道ブレード』には出る世界のミフネの確かな作品選択眼。

 ここでは実景・ロケセットに加えてミニチュア特撮もふんだんに盛り込まれるが、北の警備艇が迫る! 息をひそめるミフネとベン・ギャザラ! そしてカメラが引くとチャプチャプした水溜りにユラユラと浮かぶオモチャのボートが! 締まらないにも程がある。せめてココだけでも東宝に任せてくれよ!

 そして全編にわたって登場するマッカーサー元帥は、新東宝の『明治天皇と日露大戦争』における明治天皇と乃木将軍と東郷元帥を足して摩り下ろしてご飯にかけたような存在感。終始あいまいな泣きべそ顔で愚痴を言っているか、弱音を吐くか、時々笑えないオヤジギャグをかますだけで、本当にギャラに見合った仕事が出来ていますかローレンス・オリヴィエ卿!? 目標の灯台が消灯し上陸作戦の失敗を悟るや、甲板上で滔々とトルーマン大統領に対する謝罪の電文案を泣きながら語り始めて部下に書き取らせるという、今は他にやることがあるんじゃないの? という感動的な場面は笑いを誘う。

 須崎原案が完成作品にどれだけ生きているのかは知らないが、例えば件の「結婚間際の娘」が婚約者と「君の名は」的にはぐれた後、着るはずだった純白のウェディングドレスを引き裂いて負傷した米兵の手当てに使ったりするあたり、ああ、東宝センスだなあと思った。ゴールドスミスのカッコいいマーチに乗せて、上陸用舟艇がビーチに迫る場面も『キスカ』のようだったし。この上陸場面も『史上最大の作戦』をまねようとしているが、もちろん遠く及ばず、しかもその後の陸戦場面が全くないままマッカーサーの凱旋演説に行って終わっちゃうのも何とも物足りない。特に中国軍とのジェット戦闘機戦は見たかったよ。文鮮明が存命なうちに「Inchon!2」をぜひ。今の統一教会が作ったら、北朝鮮寄りのストーリーになりそうではあるが…。

超級学校覇王 Future Cops



超級学校覇王 ヴァンダムよりも1年早い1993年、香港一の無責任監督バリー・ウォンが撮った世界初の実写版「ストリート・ファイター」。もちろんカプコンその他の権利者には無断で、本編中には「本作のキャラクターはオリジナルです」と言い訳が出たり、名前を微妙に改変したりしているのだが、
米IMDbは容赦なく実名で記載

 ゲーム自体イマイチよく知らないのだが、2043年の未来から1993年の現代に逃亡した犯罪者集団を追って、バルログ、ガイル、ダルシムの3人の未来警察(英題の由来はここか)が、とある学校に潜入し、落ちこぼれ少年を助けながら犯人を追うという、これまた『ドラゴンボール・エボリューション』より早い学園ラブコメへと改変。なんだか『ドラえもん』みたいな展開だなあと思っていたら、そちらもパクっていたらしい。他に「スーパーマリオ・ブラザーズ」も出てくるし、ラストにはまさかの孫悟空が「つ・か・も・う・ぜ!」のジングルと共に登場だ。

 かの如く、ぼんくらバリー・ウォン監督の才覚のとりわけ頭の悪い部分を集大成したようなドラマなのだが、呆れるばかりの超豪華キャスト。バルログにはアンティ゛・ラウ、ガイルはジャッキー・チュン(チェンじゃないよ)、ダルシムはサイモン・ヤム。敵役のケンはイーキン・チェン、サガットはビリー・チョウ。チュンリーにはチンミー・ヤウに、最初と最後にしか出てこないリュウ役はアーロン・カクだ。90年代香港明星がバカの限りを尽くし、これまたアクション監督がチン・シウトンなので、危険極まりないノー・フューチャーなワイヤー・アクションが随所に現れる。

 『新七龍珠』同様、将来にわたって絶対に日本では公開も発売もされなさそうな本作だが、90年代香港アクション映画を俯瞰する際には欠くことのできないマスト・アイテムの1本。なお、ジャッキー・チュンが『ゴースト ニューヨークの幻』のロクロ場面のパロディをやっていたが、同じネタはバリーの異常性愛映画『満清十大酷刑』でもやってなかったか?
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