nightfalcon それ自体はチャイヨーの功績が大なのかもしれないが、日本の特撮ヒーローが大人気映画大国タイ。一方で言うまでもなく、『マッハ!!!!!!!!』『ガルーダ』『ゾーダ(原題 "The Trek")』と、近年のタイ特撮アクションのレベルはかなり高い。しからば……と、タイ人自らの手でヒーロー特撮を作ってしまおうではないか、という機運の1作、本日のレビュー:

『Night Falcon』

 深夜、バンコック。武器密売白人「ホワイト」の取引現場を急襲したマスクド・ヒーロー「ナイト・ファルコン」。強靭な身体能力でホワイトを圧倒するも、隙を見つけて逃走される。ホワイトは父娘の乗ったトラックを襲い、彼らを人質に取ってナイト・ファルコンに対峙するが、結局、ガソリンの引火による爆発で消息不明に。巻き添えにあった父娘だが、父は死亡。以来娘は、父の身体に突き刺さる真紅の手裏剣を手がかりに、ナイト・ファルコンを仇として追うようになる。

 数年後、カンフーを学ぶ娘には男女カップルの親友がいた。実は彼氏の方がナイト・ファルコンなのだが娘はそんな事情を露知らず、仲良く青春の時を過ごしていたのだ。

 オープニングのアクションはキレにキレ冴えわたるものではあるが、『マッハ!!!!!!!!』同様、気合の入ったアクションシーンは、別撮りのカメラアングルで3回ずつ見せてくれる親切設計だ。さらに、父を亡くしたヒロインが割と可愛い(飯島直子と後藤真希を足してナンボカで割ったみたい)ことが惜しいのか、2枚組みのVCD(念のために注釈すれば、VCDは1枚に約60分収録可能)の内、1枚目がほとんど丸々ヒーローとは無関係の、カンフーやスケボーで遊んでいるシーンに費やされているのはどういうことか。かのように主役サイドが油断しているうちに、悪は再びバンコックに魔の手を伸ばすのだ。

 謎の鉄仮面「アイアンマスク」率いる悪の軍団。秘書的な女悪人「ブラック・スワン」、怪力の「ニコライ」に剣の達人「コジロー」。彼らがさっきどっかで見たような武器密売を行っている。「アイアンマスク」の正体が、ごっつい気になりますね。かくして、「ナイト・ファルコン」は悪を殲滅に出動するのだが、父の仇を目撃した飯島直子が後をつけ、あろうことか結果的には悪の手助けをしてナイト・ファルコンに重傷を負わせてしまう。

nightfalcon2 実は父の仇が「アイアンマスク」こと「ホワイト」だと知ったのも後の祭り、おまけにナイト・ファルコンの彼女であり親友のオネーサンが人質に取られてしまう。どうなるタイ国、どうなる仏教(すみません、関係ありません)。その時、バンコックの立花藤兵衛的なおやっさんに案内されたのは、ナイト・ファルコン秘密基地。見れば自分にぴったしのヘソ出しコスチュームも用意されているではありませんか……って、気色悪いな親父よ。かくして、ヒロインは「ナイト・ファルコン2号」として、悪を倒しに出撃するのだ。

 たとえプミポン国王が許しても……と戦うヒロインの美しさ、凛々しさは万国共通。続編製作を意識してか、やや出し惜しみに過ぎる感はあるものの、タイ語の台詞なんか何ら一切理解できねーよというバリアードな環境を越えて、実に鑑賞に堪えうる本作だ。面白がってチャイヨー過去作ばかり鑑賞していたがために、タイ映画といえばえー加減で行き当たりばったりという印象を強くしていたが、全くの曲解だと実感した。プミポン、ごめん

 なお、Thai Action Heroレーベル第1作としての本作、次回以降に期待が持たれるわけだが……VCDのジャケットに記されたURLはどれもアクセス不能。噂によればメーカー生産も打ち切られて、現存する在庫のみの販売とか。頑張れタイ国、負けるな仏教。なお、公認ページはこちら。2号チャンの素顔も拝めるぞ。