Club Blog-Gamo Bazil's Blog of "B"

映画秘宝ライターBazilによる映画・ビデオ鑑賞記。新旧・東西問わず、B級からZ級まで見どころを紹介。

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本日のレビュー

あゝ東映特攻戦記三部作

 京都・ビーバーレコードの閉店セールに乗じて、連作ものだとは全く企図せずに購入した『あゝ同期の桜』『人間魚雷 あゝ回天特別攻撃隊』『あゝ予科練』。1967〜68年にかけて製作・公開されたこの3本は、いずれも当事者たちの手記を原作とした海軍特攻戦記映画だが、『同期の桜』は学徒兵、『回天』は兵学校卒、『予科練』は予科練生と、主役がそれぞれ立場の異なる位置づけで、そこに製作者のスタンスが如実に反映しているようで興味深い。


 『あゝ同期の桜』は監督の中島貞夫が脚色も担当。学業の志半ばでペンを操縦桿に持ち替えて、南洋に散った学徒兵の悲劇の青春を描き、そこには企画に名を連ねる岡田茂の、『きけ、わだつみのこえ』の夢よもう一度の情念が見え隠れするが、それ以上に中島貞夫(東京大学文学部卒)の思いが強くにじみ出る。

 高学歴の彼らは、理不尽な軍隊生活に戸惑い、勝ち目のない戦争という現実も見えている。しかし、打破し難い閉塞感にも無理やりに己を納得させて、いっぱしの軍人へと成長していくのだが、中島貞夫は残酷な青春に追い打ちをかけていく。それが機体の変調から特攻に出撃したものの引き返してきた南条や、脱走して後廃人となった滝のエピソードに現われている。強烈なのはラスト、特攻機の実写フィルムを映し出したうえ、米艦に激突する寸前にストップモーションとなり「この瞬間、彼らは生きていた」とテロップが出て、頭がガツンと殴られるような衝撃を覚えるのだ。なお、山田和夫の著書によれば、このラストに東映社長の大川博が激怒、公開4日目から大川名義の追加テロップを入れさせた、とあるが、DVDには収録されていませんでしたよ。


 第2弾の『人間魚雷 あゝ回天特別攻撃隊』では、そんな中島演出に懲りたのか、東映きっての職人監督・小沢茂弘がメガホンを執った。中村錦之介の自主大作『祇園祭』のパンフで、東映労組の人が「京都撮影所は軍国賛美の映画ばかり撮っている」と批判したのが、ちょうど本作の製作時期に重なるようだ。

 様々なジャンルでサプライズ演出に肝を抜かれる小沢茂弘だが、戦記映画はいささか荷が重かったのか、淡々と撮り進めて行っている印象だ。ゼロ戦に250キロ爆弾をくくりつける神風特攻隊と違い、回天は船体を一から開発しなければならないので、そのエピソードが前半に配置されメカニックな興味を引く。実物大の回天に人が乗り込み水中に沈めるシーンがあるけれど、もしかして本物を使ったのかな。

 前作でキャスティング上、主役の鶴田浩二が後半まで出てこなかったのには驚いたが、本作では前半で殉職してこれまた驚いた。史実でも回天開発を進言した人が、訓練中事故死しているらしい。以後はゴリゴリの職業軍人・松方弘樹と学徒出身の伊丹十三を中心に話は進んでいくが、この対比も面白かった。まるっきり『男たちの大和』そのまんまの出撃前夜の上陸シーンを経て、最後はやはり特攻だけれど、神風と違って実写フィルムがないので、いささか頼り気ない特撮で描写。


 最後の『あゝ予科練』は、『あゝ同期の桜』でも共同脚色を担当した須崎勝弥が単独で脚本、印象的なエピソードを実にうまくつないで見応えのあるドラマに仕上げている。そして出色は、三部作で初めてクレジットされた「特撮 矢島信男」の文字。実際、『あゝ同期の桜』でも実写とのつなぎで、いかにも東映らしい堅実な特撮カットが配置されていたが、本作では短いながらも本格的な大空中戦シーンがある。もしかすると円谷特撮よりもうまいかもしれない。

 予科練生ということでキャストはさらに若く、西郷輝彦や谷隼人、桜木健一が七つボタンの制服に身を包んで体当たりの演技を見せ、そこに梅宮辰夫や千葉真一、丹波哲郎、池部良あたりがチラリと顔見せする。意外と言えば意外すぎるキャスティングが、鬼教官の一人を演ずる山城新伍か。軍人精神注入棒や「熊ん蜂」「急降下」と称する激烈なシゴキ場面に、何十人という丸刈り男優たちが肉体の限界とばかりに挑むさまは、いかにこの間の『魁!男塾』が甘かったかを思い知らされたよ。

  

恐怖!キノコ男

a3e9e4b4.jpg 自然豊かな山荘を訪れた若き科学者、プロレスラー、不動産業者、そして軍人。平和な緑に囲まれて過ごす穏やかな休日は、阿鼻叫喚の惨劇へと一変する。それは科学者が発明した化学薬品によって、突然変異を起こした食人キノコが原因だった。

 基本的なプロットは「マタンゴ」そっくりだが、監督・脚本・音楽・撮影を全て担当するデイブ・ワスカバジさん(もちろん出演もしている)に、ヒロインは嫁さん、特別出演にクレジットされるのはご両親と、一家で仲良く製作した自主映画どころではない、まさにホームビデオ。これまで数々の酷い映画を見続けてきたが、本作はわが生涯で目撃してきた映画群の中でも、間違いなく「最低作品」の1本だ。ジャンルとしては裏山映画だけれど、あの「俺だって侵略者だぜ」のドン・ドーラーが巨匠に見える。

 画質も演技もグダグダだが、何より凄いのは「キノコ男」の着ぐるみ。中学生の文化祭の方がよほどマシな造形に仕上がるのではないか。着ぐるみは 1体しか製作されず(製作費は推定数百円程度だろうから、多分中に入る役者がいなかったのだろう)、残る大群はCGで処理されるが、まあその、ホームビデオにしては頑張ってるね、とは思うけれども…。

 こんなのが商業ルートに乗って販売されていること自体が奇跡だが、定価はなんと12,000円。

 果たしてワスカバシ家はこの先生きのこることが出来るのか!? と、他人事ながら少し心配になったけれども、公式サイト(http://www.troubledmoonfilms.com/) にアクセスすると、その後も年に1本ペースで続々と新作をリリースしている。キノコ男マスコットやキノコ男カードゲーム、キノコ男サントラも入手可能だ。調子に乗り過ぎだろワスカバジ!! なんかニコニコ動画で全編見られるようなので、話のタネに、我慢大会に、罰ゲームにどうぞ。

叛乱

2c484b57.jpg クラリオンの新東宝名画シリーズ(VHS)がいろいろとDVD化される中、一向に出る気配がないなあ、と思っていたら、どういう訳か「紀伊国屋書店」レーベルで発売された佐分利信の『叛乱』。それでも5,040円という破格のお値段に相当の間躊躇していたのだが、年末20%オフの方に清水の舞台から飛び降りるつもりで、兵を率いて首相官邸に突撃するつもりで購入してみたら、読み応え有るズッシリと重たいブックレット封入に納得だ。

 「2・26事件」を題材とした映画が大好きなのだが、筆者を皇道派青年将校の理想と純情に引き込んだのが、学生時代にレンタルビデオで見た『叛乱』で、したがっておよそ20年ぶりの再開ということになる。往々にして若いころに見た映画を再見すると、ガラリと印象が変わっていることに驚くものだが。原作は直木賞を受賞した立野信之の「叛亂」だが、何しろ30年来絶版なので読んだことがない。

 立野と親交のあった小林多喜二の「蟹工船」が読み直されている平成20年の日本であるが、『叛乱』の背景も大不況と超格差社会。政治は腐敗し官僚は軍部も含めて自己保身と派閥闘争に終始する。一部の財閥・大企業だけが満州開拓というグローバル経済で肥え太り、庶民は明日の生活にも窮している。そんな時代に変革を求めて、皇道派青年将校たちは軍事革命による昭和維新を断行し、軍閥(統制派)、財閥、元老重臣を誅殺して天皇親政による平和で平等な国家建設の実現を図るのだ。

 映画は後の多くの「2・26」モノの先駆けとして、決起に最後まで反対した安藤大尉を軸として、端緒となった相沢中佐による永田鉄山刺殺事件からクーデターの決行、崩壊、軍法会議と首謀者17名の銃殺までを描く。事件がまだ記憶に新しく、また原作小説の大ヒットにより大筋が人口に膾炙していたためか、個々の人物の描写はアッサリと片付けられ、また皇道派と統制派の対立軸もあまり見えてこない(そもそも統制派の人がほとんど出てこない)。統制派のシンボルが東條英機であることも一因なのか、皇道派将校たちはまるで中国大陸での戦争に反対しているかのような台詞さえ出てくる。

 一方で後の作品では浪花節的に、あるいは恋愛映画的な要素も盛り込んで主役側への感情移入を誘い、また理不尽な現状を打破する希望として大衆の支持を受けていたかのように描かれているが、本作ではそこまで極端な誇張や歪曲はなく、円タクの運転手や野次馬の高島忠夫らからは、「軍人が政治に口をはさんじゃいかん」などと呟かれたりもする。コピーを重ね、作家たちが自らの個性を塗り重ねていく過程で、「2・26事件」全体の構図は昭和忠臣蔵として単純化されていく。時間の経過に伴う記憶の風化は、やがて史実と創作の境界をあいまいにしていく。Wikipediaなどを引いてみると、実在の安藤本人は拳銃で自決未遂しているらしいが、本作ではその場面は割愛、そして続く作品群では「死に急ぐ栗原と、生き抜いて責任を全うしようとする安藤」という「名場面」がテンプレ化するのだ。

 そうそう、2・26事件の主要登場人物として、青年将校から絶大な信頼を集めながら最後に保身に走って裏切る、後の作品では「汚いオトナ」の代表みたいな真崎大将の描写が決定的に甘い。って言うか、全てのキャラクターが実名で登場するのに、この人だけ「正木」表記なのは何故だ……と思っていたら、本作の製作公開当時、真崎閣下本人はまだ生きてたんだね。

 ともあれ新東宝の軍服が似合う男たちに、早坂文雄の重厚なオケが華を添える文化遺産的男映画の傑作。「蟹工船」の山村聡といい、この頃の俳優監督はイイ仕事をするなあ。折しも『蟹工船』がリメイクされるようだけれども(特に見たいとは思わないが)、『叛乱』もリメイクしない? 東京湾に戦艦長門が出撃するシーンも見たいぞ。いっそ皇軍相討つ架空戦記でもいいぞ。


僕らのミライへ逆回転

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 しかし酷い邦題だなあ。

 本邦公開が決まる前から映画秘宝で大騒ぎの"Be Kind Rewind"、公開初日に見に行ったら、やっぱり大体いつものジャック・ブラック映画だった。

 ニュー・ヨークの外れの貧民街(?)のレンタルビデオ店"Be Kind Rewind"。ダニー・グローバー店長は今時個人経営で、今時VHSだけで、今時メジャー作品だけを品揃えして細々と営業していたが、市から再開発のために立ち退きを要請されていた。営業計画を練り直すべくこっそり他店の視察旅行に出かけ、その間をバイトのモス・デフに任せていたが、悪友のジャック・ブラックが発電所テロをしくじって帯伝体質となり(って、もしかして既にここでキングコングをリスペクト?)、テープのデータをすべて消去してしまう。揃え直そうにも今時VHSなんか手に入らない。そこで苦し紛れに考え付いたのが、映画の内容を自分たちで撮り直す、というものだった。客の問い合わせに「スウェーデン版です」と言い訳していたが、世の中わからないもので、この"Sweded"が話題を呼び、店は行列の出来る大人気店となった。しかし、好事魔多く官憲の知るところとなり、彼らの作った"Sweded"ビデオは海賊版として廃棄処分に。

 セリフにもあったが、リメイクだらけの大量生産品であるハリウッド・メジャー作品に対する皮肉が根底にあり、茶化す対象がジャック・ブラック自身が出演していた『キング・コング』も含まれていて笑える。そんな押し付け大作よりも、心のこもった手作りの映画が見たいんだ、ということだろうけれど、そこに至るまでがモス・デフにもジャック・ブラックにも、それほどの映画愛が感じられる場面があるわけでなく、ちょっと唐突にも感じられる。とはいえ、予算のなさをアイデアでカバーした、様々な"Sweded"映画の撮影シーンは楽しい。後半の展開と、その「ちょっとイイ話」っぷりから"オタクのニュー・シネマ・パラダイス"の呼び声が上がっているようだけれど、むしろその手作り感は『マイク・ザ・ウィザード』を思い出す。あと『マチネー』を加えて ONCP三部作としよう(まだ『ニュー・シネマ・パラダイス』見たことないんですけど)。

 ところで"Sweded"っていうのは本作で突然言い出した表現なのだろうか。バカ・スウェーデン映画って"Attack of the Animal People"くらいしか印象にないけれど。元々ある言葉ならしょうがないけれど、インチキ・リメイクの完成度だと"Turkish"の方がリアルだと思った。

 …で、YouTubeでは悪乗り"Sweded"が溢れているけれど、これはちょっとイカスと思った、"Be Kind Rewind"のSweded予告編(必ず上記「本物」の予告編の後でご覧ください)。





The Children of Huang Shi(黄石的孩子)

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 オリンピック・イヤーということもあって様々なジャンルの映画が中国とコラボした本年、中華好きとしては足繁く通ったものだが、そんな中、まず本邦公開はされないだろうなあ、という映画を大陸版DVDで見つけてきた。中国・オーストラリア・ドイツの合作で、『007/トゥモロー・ネバー・ダイ』のロジャー・スポティスウッドが監督した『The Children of Huang Shi(黄石の子供たち)』だ。英国人ジャーナリスト(US版Wikipediaでは「冒険家」とあるが)ジョージ・ホッグが日中戦争当時、中国で体験した実話だ。

 日本軍が占領し、灰燼と帰した南京に潜入し取材に当たっていたジョージは、そこで大虐殺の一端を目撃してカメラに収める。だが、彼の行動は日帝の知るところとなり、捕らえられ斬首寸前に共産党ゲリラのリーダー、陳に助けられる。陳の案内で彼が向かったのは黄石の収容施設。そこには日帝の侵攻により家族を失った数十人もの戦災孤児たちが暮らしていた。ボランティアの白人女医リーと共に、施設の子供たちの面倒を見るジョージ。心身ともに傷つき、他人を信用しなくなっていた子供たちも、やがて少しずつ笑顔を取り戻しつつあった。だが、そこにも日本軍の侵略の魔の手は迫りつつあった。ジョージは子供たちを、600マイル離れたシルクロードの果て、山丹へと避難させるため、過酷な旅を始めるのだ。

 主演のジョージ・ホッグを演じるのはジョナサン・リース・マイヤーズ、ヒロインのリーはラダ・ミッチェルと、すみません、あんまり知りません。目当てはチョウ・ユンファとミシェル・リーだよ。ユンファは英領香港時代にも、抗日テーマの『風の輝く朝に』に主演していたけれど、本作では共産ゲリラの英雄役。本当に時代は変わったんだねえ。ミシェル・ヨーは清濁併せ呑み麻薬まで売ってる豪商役。スポティスウッド監督とは007つながりだろうけれど、全くアクションなし。抗日グリーン・ディスティニーを期待したんだけどなあ。

 問題なのであろう大虐殺シーンは、ジョン・ウーの『南京1937』やグロ映画『黒太陽 南京大屠殺』ほどにクドくはないけれど、広場に民間人集めて機関銃でズババババと射殺してしまう判りやすい演出。あと、CGゼロ戦が避難民を銃撃&空爆するシーンが結構迫力ある。同種の場面は『太平洋戦争と姫ゆり部隊』では米軍が、『氷雪の門』ではソ連軍が行う場面があって、ある種被害者の立場での戦争の悲劇を端的にあらわす記号的表現だ。別に目くじら立てずに本邦でも公開してほしいなあ。って言うか、本作の米国配給は日系のソニー・ピクチャーズだぞ。

 冒頭のUS版予告篇はジョージと子供たちとの触れ合いを中心に据えたイイ話構成だけれど、中国版予告篇は戦争シーンを前面に押し出したお子チャマ構成。そんなに戦争映画じゃないよ。いや、私もそういうのを期待してたんだけれど。





Children of Huang Shi(HK)The Children of Huang Shi(香港版)

怒涛の果て

8b3ca747.jpg 沈没船に眠る財宝をテーマにしたジョン・ウェイン主演の海洋アクション。1948年製作。映画秘宝2007年5月号の特集「男が泣ける純愛映画」で、大林宣彦が熱烈に推奨していた1本で、いまだ日本ではDVD化されていないため、すぐさま米国から取り寄せたのだった(そして例によって、それから観るのを忘れていた)。

 ジョンウェイン? 純愛映画? 大林宣彦? どこか他のページと間違ったかと思うかもしれませんが、ここはれっきとしたBazilのページですのでご安心を。

 原題は"Wake of the Red Witch"。貨物帆船「赤い魔女」号の船長ロールズ(ジョン・ウェイン)は、荒くれで自己中心、そして無責任という最低な人格を誇っていた。ある航海で 500万ドルの金塊を積んだ「赤い魔女」は、ロールズの判断ミスによって座礁し沈没。海難審判で責任を問われ、船長の資格を剥奪される(?)が、実はここに至る伏線とロールズの策略があったのだ。ロールズの部下で同じく責任を問われたローズン(ギグ・ヤング)は、荷主のシドニー(ルーサー・アドラー)から、ロールズと、シドニーの死んだ妻アンジェリーク(ゲイル・ラッセル)との悲恋のいきさつを聞かされるのだ。

 以前に見たジョン・ウェインの海洋アクション『絶海の嵐』(1942)でも、今回同様に人格の破綻した海の男を演じていた。ひねくれて粗暴なジョン・ウェインのイメージが、作品の筋立てとともに、どこか初期の裕次郎主演映画を思わせる。冒頭の謎めいたジョン・ウェインの行動から、特撮技術を駆使した大型帆船の沈没場面まではミステリアスかつスピーディだったものの、そこからの謎解きが口伝による延々と続く回想シーンで構成されてて少し退屈ではある。先述の大林宣彦のインタビューで知ったことだが、本作はジョン・ウェインが製作も兼ねていて、ヒロインを演ずるゲイル・ラッセルへのジョン・ウェイン自身の片思いを綴った映画だという。ロールズの壊れっぷり、映画としての本作の崩れっぷりは、あるいはジョン・ウェインの心象を反映したものか。

 果たしてそんな映画をどうして我慢しながら観ているのか。その答は開始から1時間後に現れる。『絶海の嵐』については、息子のパトリック・ウェインが主演した『続・恐竜の島』について書いた文章の中で少し触れたが、ジョン・ウェインが海底で巨大イカ怪獣と戦う場面がクライマックスだ。

 そして『怒涛の果て』には、中押しにジョン・ウェインが「巨大タコ怪獣」と戦う場面があるのだ!! これが本作をどうしても観賞したかった唯一の理由だ。

 『絶海の嵐』のイカ怪獣は空気圧で操作する結構本格的なもので、カラーフィルムの絶妙な発色とともに怪獣映画としてのリアリティに溢れていた。後にカーク・ダグラスの『海底2万マイル』でも同じモデルが使われたという話を聞いたことがあるが本当だろうか。それに比較すると『怒涛の果て』のタコ怪獣はいささか安っぽい釣り人形。それでも実物大のモデルを水中に沈め、素潜りのジョン・ウェインと格闘する水中撮影はそれなりに迫力がある。IMDbによれば、後にエド・ウッドの『怪物の花嫁』で、このモデルが使われたらしい。

 それにつけても、既にスターとして不動の地位を築いていたジョン・ウェインが、どうして必然性も怪しい怪獣との対決シーンを撮らねばならなかったのか。例えば石原裕次郎の『鷲と鷹』や『太平洋ひとりぼっち』に怪獣が出てくるか? という話だ。もしかして実は怪獣好きなのかジョン・ウェイン。そう言えば『グリーン・ベレー』でジョン・ウェインと共同監督を務めたのは、『人喰いネズミの島』『大蜥蜴の怪』という2本の怪獣映画以外に実績のないレイ・ケロッグだった。いよいよジョン・ウェインの隠れ怪獣映画ファン疑惑が深まる。

 そして、仮にジョン・ウェインが本当に怪獣映画ファンだったとしたら、本作のラストシーンが意外な形で世界の怪獣映画に貢献したことも本懐だったのではないか。

 いよいよ沈没船「赤い魔女」号の金塊回収に向かうジョン・ウェインなのだが、その「だったら俺が潜る」と宣言する場面から、潜水服で降下、海底の探索、船上でロープを繰り出し見守る人々……と、ここの演出が後の『ゴジラ』のラストシーンに瓜二つなのだ。『ゴジラ』も芹沢博士の視点から見れば、これ以上ないほどの男泣き純愛映画だったが。

 あらかた金塊を回収し終えた後で、「赤い魔女」号はバランスを崩し遥か深海へと沈みゆき、慌ててロープを手繰り寄せるも空しく切断されていて、気泡だけが海面を揺らす(ね、一緒でしょ)。「幸福に暮せよ」とか「あのジョン・ウェインが最期の一人とは…」とかのセリフはないが、哀悼を込めた人々の表情が海に沈む夕陽へと切り替わり、そこに幻の「赤い魔女」号が笑顔のジョン・ウェインとゲイル・ラッセルを乗せて、天空へと旅立つイメージが被ってエンディング。ジョン・ウェインの公私混同純愛映画は、最後まで公私混同を貫いて結末を迎えるのだった。

 

 

レジェンド 三蔵法師の秘宝

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 強大なパワーを持つチベット仏教の秘宝・三蔵法師の遺骨を巡り、欲しいものは腕づくでも奪う白人コレクターと、秘宝を守護する運命を担った曲芸師の一家が対決する。ちょっと『マッハ!!!!!!!!』入った「女インディ・ジョーンズ」と言うか、「中華トゥーム・レイダー」と言うべきか。

 本作はベイジル・ポールドゥリスが音楽を担当した最期の劇場用映画。本年(2008年)は北京オリンピック開催を契機として、『ハムナプトラ3  呪われた皇帝の秘宝』『ドラゴン・キングダム』『カンフー・パンダ』と、3本のハリウッド製カンフー映画が公開されたが、それらのチャイナ趣味との聞き分けも興味深い。天湖や敦煌、チベットのラサにロケした本作を、実にゆったりとしたベイジル節が流れる。

 製作は主演も兼ねるミシェル・ヨー姐さんで、まだ「ミシェール・キング」名義だった『チャイニーズ・ウォーリアーズ』から15年を経て「女インディ」に挑むが、勢い押しの前回に比べて余裕と共に円熟味を増し、なおも変わらぬスタイルと抜群に長い手脚で流麗なアクションを見せる。とはいえ、エグゼクティブ・プロデューサーとして配役は相当に厚かましく、8歳下のベン・チャップリンを恋人に、20歳下のブランドン・チャンを弟役に据えて、果たして自分は何歳の役のつもりなのか。なお、ブランドン・チャンは次の美少女仮面映画『シルバー・ホーク』にも抜擢、なおかつ劇場映画としてはその2作しかキャリアにない。ヨー姐さんとのただならぬ関係を想像させるが果たして。

 ヨー姐さんとベン・チャップリンが恋人だった頃の切ない思い出を語る場面、カーラジオから流れているのが、テレサ・テンの「時の流れに身をまかせ」(北京語版)というのが余りに渋すぎ。『ステルス』のリチャード・ロクスバーグが野望たっぷりのケント・ギルバート的風貌で巨悪を演ずるが、少し線が細すぎるかも。『ダイ・アナザー・デイ』で彼の将軍様を演じた香港映画の「いつものおじさん」ケネス・ツァンが、ヨー姐さん一族の執事という地味な役どころで「いつも」感を醸し出していたのも嬉しかった。

 秘宝映画(雑誌じゃなくて)お決まりの謎解きは、一本調子に過ぎて若干物足りないけれど、ラストの「男塾」も逃げ出しそうなド派手なトラップでの死闘はそれなりに迫力もあって、観賞後感はまずまず満足。ラサでの大群衆ロケがとにかく凄い。米国では公開もソフト化もされていない感じだけれど、サントラは出てないのかなあ。

※その後サントラは香港で発売されていたことが判明したけど、eBayで150ドル也!! Basil Poledourisのサイトで主要曲を聴くことはできました。

幸せの1ページ

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 女流冒険作家のアレクサンドラは、自らと同じ名前を冠したヒーロー小説「アレックス・ローバー」シリーズで大ヒットを飛ばしていたが、本人は主人公とは裏腹の引きこもりで潔癖症。作品のネタも全てネットから得ていたのだ。そんな彼女の元に、はるか南太平洋から1通のメールが届く。父親が研究のために出かけたまま音信不通となり、自身も怪我をした少女ニムが、勇敢な冒険家アレックスに助けを求めているのだ。アレクサンドラは苦悩の末に勇気を振り絞り、ニムを助けに旅立つ決意をする。主演のジョディ・フォスターが、これまでのキャリアから一転、コメディエンヌに挑戦したハートフル・アドベンチャー『幸せの1 ページ』。

 ……という事前情報で見に行ったのだが、全然そんな話じゃなかったよ。

 原題は"Nim's Island"で、そもそも主演もジョディではなくニム役のアビゲイル・ブレスリン。どこかで見覚えがあるような気がしていたが、『サイン』のあの子か。海図にも載らず、どこの国の領土かもわからない南海の孤島で父親と二人きりで暮らす少女が、父親の留守中に様々な苦難と戦う「南海ホーム・アローン」だ。どこを取ってもリアリティのないストーリー展開に終始首をかしげていたのだが、原作が児童文学と知って納得した。

 現代文明と隔絶し、海洋生物学者である父親以外の人間を知らず、友達は島の動物たちだけという「外こもり」少女ニムだが、こちらもアレクサンドラと同様にメールと衛星携帯電話で外の世界と一定の接点を持っている。

 その父親が調査に出かけた船が悪天候に巻き込まれて難破し、音信不通で生死も判らない。自分自身もそれなりに重い怪我を負って、憧れのヒーロー「アレックス・ローバー」にメールで助けを求める。そこからは様々な現実的な解決手段が想起され、見ている途中では『空と海の間に』みたいな展開かなと思った(…って言うか、実際に思い出したのは佐々木守が翻案した後藤久美子主演のドラマ『空と海をこえて』の方)けれど、ジョディもアビゲイルも極端な社会不適応に設定されているので、常識を超越した、明後日の方向へとアクションを起こし始めるのだ。

 それならそれで、やはりどのようにでも話は面白く出来そうなものだが、実にもどかしい。一つにはジョディ・フォスターのコメディ演技がありきたりで鼻につくこと、もう一つはアレクサンドラとニムそれぞれの「冒険」が全然シンクロせず、それどころかアレクサンドラは中盤のクライマックスである「海賊退治」にも、「怪我の治療」にも、「父親の捜索」にも全く関わらない。もう『クライシス2050』におけるチャールトン・ヘストンと同様に、ジョディ・フォスターの出演シーンが全部要らないと言っても過言ではない。

 あるべきアレクサンドラの代わりにニムをサポートするのが、友達の動物くん軍団なのだが、ご主人様の物知らずとは裏腹に、人間様の事情に異様に通じていて別の意味で怖い。特にペリカン「ガリレオ」の大活躍には目を見張るが、そこまで出来るなら伝言メモの一つくらい届けてみてはどうか。あ、でもトカゲは可愛いよ。トカゲ。トカゲだけでも見る価値はあるかもね。このトカゲ主演でスピンオフ作ってほしいくらいだ。

 謎の邦題『幸せの1ページ』の秘密はラストのラストに登場するが、わざわざタイトルにするほどの重大なセリフか、それは。ジョディ主演のオシャレ映画として売りたい角川の魂胆が見え見えで、実際カップル客がとても多かったけれど、彼ら彼女らは面白かったのかなあ。他人事ながら心配になる。

 あ、でも念のために繰り返しますが、トカゲは可愛いよ。トカゲ。『300』のジェラルド・バトラーなんかより、正しい女子はトカゲに惚れなさい。

 

巨大毒蟲の館

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 外部の男たちを招き入れてお風呂パーティを開いていた女子大寮。堅物の理系学生キャミーは参加せず、飼育している遺伝子改造昆虫の研究を続けていた。ところが、普段から彼女の昆虫たちを気持ち悪がっていた寮の女王・ジョシーが乱入、虫たちを全て殺虫剤で駆除してしまう。悲嘆にくれるキャミーだったが、それが惨劇の序章だったことは、誰も気づいていなかった。

 「国際ホラー・SF映画祭」なんていう、本当に実在するのかと思ってググったら、今年もアリゾナで開催されるらしい(http://www.horrorscifi.com/index.html)イベントで、"ベスト・モンスター・ムービー賞"を受賞したことが唯一の勲章、どこに出しても恥ずかしくないビデオ・スルー映画。クリエイティブ・アグザが考えた日本向けキャッチが男前。曰く

   「巨大昆虫VS女子大生 貴方の期待は裏切らない」

 キャミーの研究は、太古、昆虫が巨大で知能も高かったことを、眠っていた遺伝子を覚醒させることで証明するという、誰の役に立つのか判らない内容だが、怪獣映画基準ではこんなに楽しい研究はない。かくして、カマキリ、サソリ、クモ、カブトムシ、クワガタムシあたりが続々と安いCGで巨大化する。

 寮生たちが一人ずつ謎の失踪を遂げるミステリアスな出だしから、昆虫軍団との血みどろバトルまでの構成もうまく退屈させない。優等生キャミー、女王ジョシーに、姐御肌のソフィー、日本からのカンフー使い留学生フミと、きちんとキャラの立った書きわけも好感が持てる。特にジョシー役のロンダ・デントは、幼虫に寄生されてバンパイア・ゾンビ化するところまで、往年のスクリーム・クィーン女優ブリンク・スティーブンスを思わせる風貌で嬉しい。きっと意識したんだろうね。グダグダな巨大昆虫VFXを補って余りある、フレッド・オーレン・レイ・スピリットの良き継承作品で、圧倒的な支持を贈りたい。

 エンドロールでは例によって「動物を傷つけたり殺したりしていません」と出るが、その後で少し間を置いて「でも、虫はちょっと殺しました」と出るのも素敵だ。2005年カナダ映画。人生について深く考えるところの何もない作品だけれど、頭を空っぽにしたいときにはちょうどいい、まるで21世紀の『ナイトメア・シスターズ』である。

 

ロボット大襲来(Target Earth)

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 RUNコーポレーションなる書店系DVDメーカーから、突然発売された2本のパブリック・ドメイン・ロボットSF映画。『クロノス』は輸入盤で既に見たので、今回は未見の『ロボット大襲来』に挑戦だ。原題は"Target Earth"。製作はハーマン・コーエン。主演はアメリカン佐原健二のリチャード・デニング。

 ある朝、目覚めてみると街は突然無人になっていた。電気も水道も止まり、電話も通じない。残っていた人々は全て、夕べ深酒したりなどして前後不覚になっていた面々。果たして何が起こっていたのか、そしてこれからどうなるのか…困惑する彼らの前に、明らかに人間ではない、何者かの影が迫る。

 ミステリー仕立ての侵略SFで、とにかく何も事情が判らないままに、観客も劇中人物とともに謎の渦中に放り出される前半の展開は実に見事。『オメガマン』ばりに「誰もいない」大都会の寂寥感は、静かな恐怖を描き出す。この展開が持続すれば不朽の名作足り得たかもしれないが、残念ながら物語の半ばで突如として米軍の作戦本部が登場し、現況を逐一説明してくれることになる。さすがに『クローバーフィールド』には早かったか。以下は謎の侵略ロボット対策と、放棄された街に取り残された人々のサバイバル・バトルが並行して展開することになる。

 それでも敵の正体は金星から来襲したロボット軍団らしい、という以外には特に説明もされず、ミステリー的緊張感は持続する。ロボットは人間大の多面体で、「大襲来」とは名ばかり、実際に画面に登場するのは1体だけ。もう少しがんばれよ。死の街の生存者と凶悪な殺人犯との確執は、特撮シーンをなるべく避ける方便とはいえそこそこに緊迫する。ロボットの弱点は50年代なら超音波とかそこら辺だろうなあ、と思っていたら全くその通り。1954年作品。『地球防衛軍』や『宇宙大戦争』が衝撃だったのは、当地の侵略SFのレベルがこんな具合だったからなんだろうね。

 

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Bazil
兼業フリーライター
◆連載
 ビデオ指名手配(1999〜2005)(映画秘宝・洋泉社)
◆単発
 DVD「スキージャンプ・ラージヒル・ペア」初回限定版特典「スキージャンプ・ペア公式ガイドブック」、CD「頭脳戦隊クビレンジャーVS頭角戦隊アタマイザー5 ミュージック・ファイル」 など
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