初心者のための読書ガイド

読書好きの社会人です!私自身も読書暦は短いですが、一緒に良い作品を探しましょう!ジャンルは問いませんよ!

真保裕一『ホワイトアウト』

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テロリストとの緊迫感溢れる攻防!
真保裕一『ホワイトアウト』

日本最大の貯水量を誇る新潟県奥遠和ダム。
ダムの運転員・富樫輝男は遭難者救助に出発するが、猛吹雪の中判断を誤り、一緒に遭難者救助に向かった親友の吉岡和志を亡くしてしまった。
数ヵ月後、吉岡の恋人・平川が奥遠和ダムを訪れる。吉岡の過ごした職場、自然をどうしても見たくて。富樫はその日非番であったが、平川に直接謝罪をするため、ダム内の施設に残っていた。
時を同じくして、テロリスト集団「赤い月」が奥遠和ダムを占拠した。
「赤い月」は政府に50億円を要求し、拒否すれば人質を殺し、ダムを破壊すると通告した。圧倒的な水量を持つ奥遠和ダムが破壊されれば二十万世帯が水没してしまう。
寸でのところで捕まらなかった富樫は。人質となったダムの職員、平川を助けるべく、親友の死を招いた過ちを二度と起こさないことを胸に単身テロリストに挑む。

とにかく息つく間もないほど緊迫感に満ちてます。手に取るとそれなりに分厚いのですが、ついつい一気読みしてしまう作品です。
文章は余計な比喩や誇張がほとんどなく、展開の持つ緊迫感を助けています。
ただ展開の動きが激しいだけでなく、しっかりトリックも取り入れています。さすがは乱歩賞作家。

ちょっとした描写が雪の山中をリアルに感じさせます。
例えば、凍ったダムの水の中に手を入れてしまったとき、「一瞬熱さを感じた」のような表現がありましたが、これは体験しないとなかなかわからないことだと思います。道産子の僕には、これは「あるある体験」なんですよね。

残念な点は、あんまり感情移入できるような人物がいないことでしょうか。文章に余計な比喩がないってことは、ちょっとそっけないんですよね。その分、人物が生きた感じがしない、物語を動かす上での駒でしかないって印象が残りました。それなりに感動的な部分、台詞があったりはするのですが、少し唐突な感じします。

まあ、展開を楽しむ上では全く問題なしです。
間違いなく面白い作品ですので、是非読んでみてください。


真保裕一の来歴(wikipediaより抜粋)
『東京都生まれ。千葉県立国府台高等学校を卒業。小規模の制作会社を転々とした後、シンエイ動画に入社。当初は脚本の製作管理を行なう文芸を担当し、『笑ゥせぇるすまん』『おぼっちゃまくん』で演出を担当。
『連鎖』を書き上げ、1991年に同作で江戸川乱歩賞を受賞。これがきっかけでシンエイ動画を退社。
1998年に『奇跡の人』は日本テレビ系列でドラマ放映され、2000年、『ホワイトアウト』は映画化された。
『連鎖』『取引』など、公務員を題材にした小説は「小役人シリーズ」と呼ばれる。』

真保裕一の人気作品はこちら。

鳥飼否宇『中空』

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竹林と老荘思想と殺人事件
鳥飼否宇『中空』

大隅半島の南端に近い竹茂村。そこには老荘思想を規範とする七世帯が暮らしていた。彼らは二十年前の殺人事件の影に怯えて暮らしていた。
プロの観察者・鳶山、フォトグラファー・猫田は、何十年に一度開花する竹の花を撮影するために竹茂村を訪れる。滞在して三日目の夜、事件は起きる。村人の一人が首なし死体で発見されたのだ。
閉鎖された村で矢継ぎ早に起こる殺人。犯人は、動機は…

横溝正史ミステリ大賞優秀賞受賞作だけあって、因習めいた雰囲気が全編に付きまとっている。トリック等がすごいわけではないけれども、事件と老荘思想の結びつきはよくできています。また、伏線はところどころに自然に配置されており、後々になって「あっ」と思うことがしばしば。

ところどころに横溝正史好きが見えるのは、なんだか微笑ましい。
例えばこんな記述。
「それにしても蒲団の脇のこの衝立。よく見ると芭蕉の俳句かなんか記されているのじゃないかと疑いたくなる。」
『獄門島』ですね。

自然の描写・知識は非常に詳しい。ミステリ作家でここまで書ける人はなかなかいないんじゃないでしょうか。さすがは奄美大島在住。

因習めいた雰囲気があるからといって、昔風の文体というわけではありません。文章は読みやすいですし、展開も無茶だったり動かなかったりするわけではないので、ミステリビギナーにもおススメです。

wikipediaから抜粋
鳥飼否宇(とりかいひう)は福岡県生まれ。九州大学理学部生物学科卒業。編集者を経て、現在は奄美大島に在住。NPO法人奄美野鳥の会の現会長。
第21回横溝正史ミステリ大賞優秀賞を受賞したデビュー作『中空』以来、観察者の鳶山久志と写真家の猫田夏海を主人公としたオーソドックスなネイチャーミステリー(観察者シリーズ)を書き継ぐ一方で、『――的』というタイトルの綾鹿(あやか)市シリーズに代表されるような奇想の炸裂した作品もたびたび上梓している。本名で野鳥や昆虫関係の執筆も行っている。
別名義の例に相棒シリーズのノベライズ(碇卯人で執筆)がある。

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