ツンデレblog

淡路島の弁護士が考えたこと

 人気者の女優が、別れた彼氏との間で作り冷凍保存されていた受精卵から、自分(受精卵)を廃棄するなという裁判を起こされたというニュースである。
http://netallica.yahoo.co.jp/news/20161208-31052852-narinariq
 
 米国で活躍するコロンビア人女優の話だが、日本だとどうなるかという話をしようと思う。
 権利義務の主体になることができることを、法律上は「権利能力がある」と表現する。訴訟を起こす主体、原告になれるかどうかは、権利能力があることが前提となる。日本の法律で言えば、民法3条1項に
私権の享有は、出生に始まる。
という条文があり、これにより、人は生まれた時から権利能力を取得するとされている。もちろん、では、「出生」とは何かをめぐっては、身体の一部が母体から出ればいいとか、身体が全部でないとダメだとか、生まれて独立呼吸を始めないと出生したと認められないとか、いろいろ議論はある。 
 ただ、日本の民法は721条で、
胎児は、損害賠償の請求権については、既に生まれたものとみなす。
と定めている。ニュースの事件は、受精卵が、「自分を廃棄するな(殺すな)」という請求をしたというものだから、不法行為に基づく差し止めができるという解釈を採用するなら、日本でも問題にする余地がないわけではなさそうである。
 そうすると、民法721条にいう「胎児」には、着床前の受精卵を含むのかが一応問題になる。子供が生まれるまでについては、受精→着床という順序を経るわけだが、いつから胎児なのかという問題である。一般的に、受精卵が着床してから8週未満の段階では胎芽と呼び、それ以降を胎児と呼ぶらしいが、これが法律上の取扱いなのかはよく分からない。おそらく時報がなるように、ぴ、ぴ、ぴ、ぽーん! 「はい、胎芽から胎児になりましたー」というわけにはいかないだろうから、法律用語としては実用にたえない。おそらく着床したら、民法721条にいう「胎児」に含まれるということになるのではなかろうか(なにしろ学説・判例のないところなので-あるかもしれないが-、思いつきを書いているだけなのだ。)。
 これによれば、日本法で着床前の受精卵に権利能力を認める根拠はなくなるから、ニュースの事件のようなことは起き得ないということになる。仮に、精子と卵子が受精した瞬間から民法721条にいう「胎児」が生まれるという解釈が採用されるのであれば、ニュースと同様に、受精卵が不法行為に関して権利能力を取得する可能性がある。母胎の中なら受精しただけで着床していなくても、権利能力があるのに、試験管ベビーの場合は、同じ受精卵でもどうして権利能力がないのだ?という理屈である。ツンデレは母胎の中かどうかで線引きをすることに合理性はあると思うが、ないと思う人がいないとは限らないだろう。

 以上が日本で同様の事件が起きたとき、それが裁判所によって認められる余地があるかに関する考察だが、同様の事件の話じゃなく、相続に関して受精卵に権利能力が認められたら、相当変なことが起きそうな気がしてきた。
 だいたい、人がいつから権利能力を持つかという議論は、相続の関係で実益を持つ。出生直後に被相続人が死亡すれば、出生した子どもは相続権を持つ。出生前に死亡すれば、生まれた子供は相続権を持たない。さらに、残念なことに、子どもが出生直後に死亡すれば、再転相続がする。この場合、子どもが相続してから死亡するか、相続する前に死亡するかで、相続人の範囲が全然変わってくる可能性がある。
 もっとも、日本民法は、上記のような深刻な問題が生ずるのを避けるため、886条で、
1項
胎児は、相続については、既に生まれたものとみなす。
2項
前項の規定は、胎児が死体で生まれたときは、適用しない。
と定めている(同条は民法965条によって受遺者について準用されている。)。しかし、この規定の仕方でも、胎児が生きて出生したが、すぐ死んだのか、死体で生まれたのかで、結果が大きく変わる可能性がある。

 さて、相当変なことが起きそうな気がしてきたというのは、仮に、未着床の受精卵の段階で相続権があるという解釈をとった場合、その受精卵は、死産が確定しないかぎり、民法886条1項で生まれたものとみなされる状態がずっと継続するわけだから(885条2項に関する法定解除条件説と呼ばれる見解)、受精卵が凍結された状態で保存されている限り、両親が死亡した場合の相続はずっと確定しないことになってしまうじゃないかということである。
 え、待てよ。日本の最高裁判所は、「<健康女性の卵子凍結助成>日産婦「推奨せず」との考え示す」で触れたとおり、代理母を利用した場合、遺伝子母と出生した子どもの親子関係を認めないから、遺伝子母と出生した子どもの間でそもそも相続が発生しないぞ。試験管ベビーの場合に、民法886条1項の適用認めていいのか?

 あとですね、ニュースの事例に関して言えば、日本の法律が適用されないのは当然だけど、どこの法律が適用されるんだ?という問題もありますね。米国在住のコロンビア人女性とその胎児の関係。胎児はどこの国籍なんでしょう?国籍に関して、アメリカは出生地主義だからアメリカで生まれたらアメリカ国籍なんでしょうけど。コロンビアはどうなんでしょうね。差止め請求は国際私法上、どう性質決定されるんでしょう。親子関係なのか、不法行為なのか。不法行為なら一般に行為地法が適用されると考えられてますから、アメリカ法が適用されるんでしょうね。
 こんなん、日本の田舎の街弁じゃ手に負えませんわ。


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 法律解釈は裁判所の専権というけどさ、裁判官が法律解釈で独自性を発揮する場面て、原告の請求を棄却する場面しかないよね。従前の法律解釈を工夫して新しい請求を認めることはほとんどない。ほとんどないからこそ、そういう判断が「画期的」ともてはやされる。裁判官は基本的に、権利者の権利を守りたいなんて考えていないと思う。むしろ守りたくないと考えていると思う(新しい法律解釈を示しての話っですよ、もちろん。新しい解釈で権利を認めることには躊躇するけど、新しい解釈で請求を棄却することには躊躇がないという話。)。
   抽象的な話で水掛け論になってもあれなので、例をあげるとこういうの

自分で考えるということ(法律実務編)
http://blog.livedoor.jp/bakara2012/archives/43098779.html


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9月14日の「保育園騒音訴訟:次回本人尋問へ」以降の保育園騒音訴訟の報告です。
 今までずっと報告しておりましたとおり、保育園から出ている騒音の大きさ(暗騒音の量及び影響)については、鑑定をやって、原告本人の測定がほぼ正しいということが明らかになり、残る問題は、保育園設立の経緯(音が出ることが分かっていて建てたじゃないか、さんざん対策しろと言ってきたじゃないか、ということ、音を出す側の悪質性とか不誠実とかの話。)だけになっておりました。
 で、それについて、原告が今まで主張してきたのがあるから、「争点を明確にするため認否してくれ」、「しない」「できない」っていうやりとりが前回のエントリですね。
 前回の期日の後、仕方なしに、原告は、被告の認否の後、「被告はウソをついている」という反論用にとってあった資料(甲号証)を含めてかなり詳細な陳述書を作成しました。それが今回公開するものです。
 で、ですね、驚くべきことに、この陳述書が出ると、被告から、「陳述書には間違いがある」という反論の陳述書が提出されたんです。しかも、それがどこかというと、
 平成19年9月7日、HT弁護士は、私に対し、自治会役員と面談したが、自治会役員は自治会としてこの問題を取り上げるつもりはないとの返答を得た旨書面を送ってきました。
 それで、私は、自治会長のTG氏に対し、HT弁護士からの連絡があったかどうかを確認したところ、HT弁護士からの連絡は受けていない、本件(騒音問題)については、今年の1月に●園のKB氏と立ち話があった程度であるとの回答を得ました。
のところなんです。
 うーん、たしかにHT弁護士の書面のところは初めて裁判で言及したかもねえ。でも、前回エントリで紹介した書面の中にも、
  そして、調停が不調に終わった後、被告から町内会への騒音問題に対する協議の申し入れがなされることはなかった。被告は調停委員に、やる気もないのに町内会と話し合うなどと言って調停を終わらせたのである。
って書いてあるんだよねえ(下線は本ブログで引用の際付したもの。)。だったら認否すればよかったんじゃないのかなあ。

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 そして、さる平成28年11月16日、神戸地裁で原告本人尋問が行われました。
 でもね、上の詳細な陳述書の中で、被告が事実と違うって言ってるのは、上記の点だけなわけですよ。反対尋問っていうのは主尋問の範囲でしかできないわけで、こっちはわざと反対尋問されないように、ドクロだのFAXだのという話は主尋問でしてないわけです。そうすると、被告の反対尋問はどうなるか?
 「なんで六甲ライナーは訴えないのか?」とか、「園庭をドームで覆うなんてできないのにどう思いますか?」とか、ひたすら「意見を求める尋問」「論争に渡る尋問」「誤導尋問」「重複尋問」「主尋問の範囲を超える尋問」の嵐でしたよ。裁判長の「質問変えてください」が2回くらい出たし。
 こっちは「そんなことしかできないのね」って感じだったけど、原告本人は、何を言ってるんだって怒ってました。そりゃまあそうだろうとは思うけど。
 10月に1件新聞社から取材の電話がかかってきたので、次回が人証調べであることと、詳細はブログ見てねって話をしたんだが、来てくれたかなあ。傍聴人は一人いたけど、報道はされなかったな。

 判決は平成29年2月9日午後1時10分。


ツンデレblogの過去の「保育園と騒音」に関係するエントリの一覧

あえて保育園を擁護しない
http://blog.livedoor.jp/bakara2012/archives/39625846.html

保育園児の声は騒音? 近隣住民の1人が提訴 神戸
http://blog.livedoor.jp/bakara2012/archives/40050869.html

騒音裁判の請求の趣旨
http://blog.livedoor.jp/bakara2012/archives/40086879.html

隣人訴訟と保育園騒音訴訟
http://blog.livedoor.jp/bakara2012/archives/40122877.html

保育園の音、不協和音 「苦痛」の訴えに園側困惑 神戸
http://blog.livedoor.jp/bakara2012/archives/40249249.html

毎日新聞て、取材せずに書くのが伝統なの?
http://blog.livedoor.jp/bakara2012/archives/40325353.html

保育園から反論きたよ
http://blog.livedoor.jp/bakara2012/archives/40349747.html

保育園・公園と騒音 雑感
http://blog.livedoor.jp/bakara2012/archives/40365174.html

子どもの声 騒音規制見直しへ
http://blog.livedoor.jp/bakara2012/archives/40382568.html

ひとの主張をすり替えて、叩く人
http://blog.livedoor.jp/bakara2012/archives/40402604.html

百聞は一見にしかず(保育園騒音関係)
http://blog.livedoor.jp/bakara2012/archives/40436496.html

「子どもの声」騒音にあらず=環境条例改正へ-東京都
http://blog.livedoor.jp/bakara2012/archives/40643388.html

自作自演じゃないよ
http://blog.livedoor.jp/bakara2012/archives/40660252.html

保育園と住民 トラブル急増
http://blog.livedoor.jp/bakara2012/archives/40684696.html

保育園騒音訴訟準備書面
http://blog.livedoor.jp/bakara2012/archives/40856586.html

保育園の設計変更
http://blog.livedoor.jp/bakara2012/archives/40874305.html

日本の未来はツンデレに託されたw
http://blog.livedoor.jp/bakara2012/archives/41059421.html

悪いが運動会の声への苦情と一緒にしないでもらいたいんだが…
http://blog.livedoor.jp/bakara2012/archives/41079417.html

テレビにでます
http://blog.livedoor.jp/bakara2012/archives/41098840.html

急増する「保育園と住民のトラブルの記事」
http://blog.livedoor.jp/bakara2012/archives/41171184.html

学童保育の利用、最多93万人 待機児童は3年連続増
http://blog.livedoor.jp/bakara2012/archives/41236501.html

保育園騒音訴訟第3回
http://blog.livedoor.jp/bakara2012/archives/41523465.html

業務連絡 12/2
http://blog.livedoor.jp/bakara2012/archives/41569960.html

子どもの声は「騒音」?増える訴訟
http://blog.livedoor.jp/bakara2012/archives/41621634.html

子供の声うるさい…苦情で保育所整備滞る例
http://blog.livedoor.jp/bakara2012/archives/41678467.html

来年4月の保育園定員を100人分(1歳児)拡大!(東京都港区)
http://blog.livedoor.jp/bakara2012/archives/42019412.html

保育園騒音訴訟反論(連休明け提出予定)
http://blog.livedoor.jp/bakara2012/archives/42258189.html

「子供の声等に関する規制の見直し」について意見募集します だそうだ。
http://blog.livedoor.jp/bakara2012/archives/42264018.html

保育園の新設難航問題の落としどころはどこに求めるべきか?
http://blog.livedoor.jp/bakara2012/archives/42337163.html

シカーネ(Schikane)って何?
http://blog.livedoor.jp/bakara2012/archives/42472093.html

保坂展人さんがいらっしゃいました
http://blog.livedoor.jp/bakara2012/archives/42477799.html

暗騒音をどうやって除外するか
http://blog.livedoor.jp/bakara2012/archives/42541008.html

保育園騒音訴訟:騒音訴訟でなぜ騒音測定を行うのか
http://blog.livedoor.jp/bakara2012/archives/43116119.html

保育園騒音訴訟:子どもの声 特別視せず騒音規制対象に
http://blog.livedoor.jp/bakara2012/archives/44346890.html

保育園騒音訴訟:騒音測定しました。
http://blog.livedoor.jp/bakara2012/archives/44712821.html

保育園騒音訴訟:東京都の新条例について
http://blog.livedoor.jp/bakara2012/archives/45373567.html

「園児の声、騒音」35%が「同感」 厚労省が調査、白書記載へ
http://blog.livedoor.jp/bakara2012/archives/45517601.html

保育園騒音訴訟:1億総活躍社会の実現で和解のチャンス?
http://blog.livedoor.jp/bakara2012/archives/46340744.html

保育園が足りない 建設めぐり住民と事業者が対立
http://blog.livedoor.jp/bakara2012/archives/46483741.html

保育所不足 建設反対続き…目黒区苦渋の庁舎敷地貸し出し
http://blog.livedoor.jp/bakara2012/archives/46881883.html

<私立保育園>「子供の声うるさい」開園断念 千葉・市川
http://blog.livedoor.jp/bakara2012/archives/47343652.html

杉村太蔵が憤慨「子供の声が騒音扱いされるなんて」
http://blog.livedoor.jp/bakara2012/archives/47356111.html

毎日新聞「子どもの声は騒音じゃない」キャンペーン記事
http://blog.livedoor.jp/bakara2012/archives/47416744.html

子どもの声と騒音:壁に囲まれた公園発見
http://blog.livedoor.jp/bakara2012/archives/47450683.html

保育園騒音訴訟:騒音規定値はどのように決まるか
http://blog.livedoor.jp/bakara2012/archives/47533284.html

保育園騒音訴訟:次回本人尋問へ
http://blog.livedoor.jp/bakara2012/archives/48448216.html


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