結婚していない男女間に生まれた婚外子の相続分を、法律婚の子(嫡出子)の半分とする民法の規定(民法900条4号ただし書の規定のうち嫡出でない子の相続分を嫡出子の相続分の2分の1とする部分。以下、「本件規定」という。)の合憲性が争われた2件の遺産分割審判の特別抗告審で、最高裁大法廷(裁判長・竹崎博允長官)は4日、規定は違憲と判断し、二審の判断を破棄して審理を各高裁に差し戻す決定をした。
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20130904154932.pdf
 以上を総合すれば,遅くともAの相続が開始した平成13年7月当時においては,立法府の裁量権を考慮しても,嫡出子と嫡出でない子の法定相続分を区別する合理的な根拠は失われていたというべきである。

  ツンデレは、この規定が違憲の判断を受けること自体にはあまり関心がない。ツンデレはもともとこの規定の合憲性に疑いを持っており、やっと違憲の判断が出たかという程度の関心である。ただ、こういう書き方をされると、平成13年7月以前の相続で不利益を被った非嫡出子はどうなるのかと言いたくなるのは自然な感情である。
 本日の決定は、決定の効力にも触れている。
4 先例としての事実上の拘束性について
本決定は,本件規定が遅くとも平成13年7月当時において憲法14条1項に違反していたと判断するものであり,平成7年大法廷決定並びに前記3(3)キの小法廷判決及び小法廷決定が,それより前に相続が開始した事件についてその相続開始時点での本件規定の合憲性を肯定した判断を変更するものではない。
 他方,憲法に違反する法律は原則として無効であり,その法律に基づいてされた行為の効力も否定されるべきものであることからすると,本件規定は,本決定により遅くとも平成13年7月当時において憲法14条1項に違反していたと判断される以上,本決定の先例としての事実上の拘束性により,上記当時以降は無効であることとなり,また,本件規定に基づいてされた裁判や合意の効力等も否定されることになろう。しかしながら,本件規定は,国民生活や身分関係の基本法である民法の一部を構成し,相続という日常的な現象を規律する規定であって,平成13年7月から既に約12年もの期間が経過していることからすると,その間に,本件規定の合憲性を前提として,多くの遺産の分割が行われ,更にそれを基に新たな権利関係が形成される事態が広く生じてきていることが容易に推察される。取り分け,本決定の違憲判断は,長期にわたる社会状況の変化に照らし,本件規定がその合理性を失ったことを理由として,その違憲性を当裁判所として初めて明らかにするものである。それにもかかわらず,本決定の違憲判断が,先例としての事実上の拘束性という形で既に行われた遺産の分割等の効力にも影響し,いわば解決済みの事案にも効果が及ぶとすることは,著しく法的安定性を害することになる。法的安定性は法に内在する普遍的な要請であり,当裁判所の違憲判断も,その先例としての事実上の拘束性を限定し,法的安定性の確保との調和を図ることが求められているといわなければならず,このことは,裁判において本件規定を違憲と判断することの適否という点からも問題となり得るところといえる(前記3(3)ク参照)。
 以上の観点からすると,既に関係者間において裁判,合意等により確定的なものとなったといえる法律関係までをも現時点で覆すことは相当ではないが,関係者間の法律関係がそのような段階に至っていない事案であれば,本決定により違憲無効とされた本件規定の適用を排除した上で法律関係を確定的なものとするのが相当であるといえる。そして,相続の開始により法律上当然に法定相続分に応じて分割される可分債権又は可分債務については,債務者から支払を受け,又は債権者に弁済をするに当たり,法定相続分に関する規定の適用が問題となり得るものであるから,相続の開始により直ちに本件規定の定める相続分割合による分割がされたものとして法律関係が確定的なものとなったとみることは相当ではなく,その後の関係者間での裁判の終局,明示又は黙示の合意の成立等により上記規定を改めて適用する必要がない状態となったといえる場合に初めて,法律関係が確定的なものとなったとみるのが相当である。
 したがって,本決定の違憲判断は,Aの相続の開始時から本決定までの間に開始された他の相続につき,本件規定を前提としてされた遺産の分割の審判その他の裁判,遺産の分割の協議その他の合意等により確定的なものとなった法律関係に影響を及ぼすものではないと解するのが相当である。


 要するに、平成13年7月以降に相続開始(被相続人の死亡)となった事案で、まだ解決してないものは違憲として扱い、解決済みのものは、それを覆すなというわけである。法的安定性を重視するのは分からなくはないが、これは重視しすぎではないか?最高裁のいうのは結局、非嫡出子の権利よりも法的安定性を重視しましょうというものである。例えば同じ平成13年8月31日に被相続人が死亡した事案で、まだ相続人間で揉めているかどうかで民法900条4号が違憲として扱われたり、合憲として扱われたりするのである。下手をすれば、同じ親から生まれた非嫡出子が2人いて、一人は解決済みで民法900条4号が合憲、もう一人はゴネていたため違憲なんてこともあり得る。そして、最大の問題は、この最高裁決定の扱いに関する解釈について、なんら法的根拠が示されてないことである。法的根拠が示されてないことである。法的根拠が示されてないことである。
 理屈なんかいらない。とにかくそれが妥当だからいいんだ。これが日本の司法のトップのいうことですか?

 ところで、この規定(民法900条4号ただし書の規定のうち嫡出でない子の相続分を嫡出子の相続分の2分の1とする部分)が憲法に反しないかどうかについては、平成7年に合憲の大法廷判決があったのだが、それ以降も小法廷での合憲判断がいくつかある(平成15年~16年の3件は全部同じ当事者だそうだ。)。

・平成15年3月28日第二小法廷判決(相続開始時平成12年9月)
 合憲:北川弘治,福田 博,亀山継夫
 違憲:梶谷玄,滝井繁男。
・平成15年3月31日第一小法廷判決 (相続開始時平成12年9月)
 合憲:島田仁郎(補足意見),横尾和子,甲斐中辰夫
 違憲:深澤武久,泉 徳治
・平成16年10月14日第一小法廷判決 (相続開始時平成12年9月)
 合憲:島田仁郎(補足意見),横尾和子,甲斐中辰夫
 違憲:才口千晴,泉 徳治
・平成21年9月30日第二小法廷決定(相続開始時平成12年6月)
 合憲:古田佑紀,中川了滋,竹内行夫(補足意見)
 違憲:今井 功


 過去の判例に関与し、今回も関与していたのは竹内行夫裁判官(今年7月に退官)だけで、竹内裁判官は今回違憲だから意見変えてるのかなと思ったら、そうではなかった。
 裁判官竹内行夫の補足意見は,次のとおりである。
 1(1) 法定相続分を決定するに当たっては,相続発生時において有効に存在した法令が適用されるのであるから,本件における民法900条4号ただし書前段の規定(以下「本件規定」という。)の憲法適合性の判断基準時は,相続が発生した平成12年6月30日(以下「本件基準日」という。)ということになる。したがって,多数意見は,飽くまでも本件基準日において本件規定が憲法14条1項に違反しないとするものであって,本件基準日以降の社会情勢の変動等によりその後本件規定が違憲の状態に至った可能性を否定するものではないと解される。
(中略)
そうすると,少なくとも現時点においては,本件規定は,違憲の疑いが極めて強いものであるといわざるを得ない。

 平成12年6月30日には合憲だけど、平成21年9月30日には違憲だと、こういう意見なのである。この期間のどの時点から違憲に変わったのかは明らかにしてないわけで、今回、平成13年7月に違憲だという判断をしたからといって、従前の判断を覆したとか、ぶれたとか、そういう話ではない。
 ただ、もう一つ、平成21年判決の竹内補足意見は、違憲判決の効力にも触れている。
 前記大法廷決定における5名の裁判官の反対意見は,本件規定の有効性を前提としてなされた従前の裁判,合意の効力を維持すべきであると述べるが,違憲判断の効力を遡及させず,従前の裁判等の効力を維持することの法的な根拠については,上記反対意見は明らかにしておらず,学説においても十分な議論が尽くされているとはいい難い状況にある。また,上記反対意見に従えば,同じ時期に相続が発生したにもかかわらず,本件規定が適用される事案とそうでない事案が生ずることになるという問題も生じかねない。
 論旨がはっきりしないんだが、どうも違憲とした場合の効果について明確じゃないから違憲説はとれないよと言っているっぽい。だったら、違憲判断の効力を遡及させないという以上,従前の裁判等の効力を維持することの法的な根拠を明らかにしろよと言いたいのである。