東京地裁において、株式会社SFCGに対する破産手続開始決定がされ、破産管財人として瀬戸英雄弁護士が選任されたのは平成21年4月21日のことである。SFCG(旧商号「商工ファンド」)は、借主からでなく、保証人から回収するというビジネスモデルを採用しており、これによって泣かされた保証人が数多くいた。
 SFCGの破産からそろそろ5年が過ぎようとしており、保証人の救済の問題は最後の天王山を迎えているようだ。

 今日問題にするのは過払金の話ではない。利息制限法に引き直しても主債務が残っている場合の話である。SFCGから借入れをするような顧客は、そのほとんどがSFCGの存命中に破綻している。問題はそのような借主の保証人になってしまった者たちだ。
 これがSFCGの存命中であれば、SFCG又はその子会社である各地のアセットファイナンスという会社から悪魔のような厳しい取立てを受け、悲惨なことになっていたのであるが、SFCGの末期、すでに有名な話であるが、SFCGが借主に対する債権を二重三重に譲渡したため、この時期の保証人は、SFCGの存命中のような厳しい取立てを受けずに済んだのである。
 SFCGの顧客への貸付債権は5年の消滅時効にかかる。分割弁済の約定であったから、通常は、借主(主たる債務者)が分割弁済の弁済金を一回でも遅滞すれば、借主は期限の利益を喪失し、そこから貸付金債務全体の消滅時効の進行が始まる。
 まとめるとこういうことだ。SFCGの末期の保証人は、平成19年から20年ころ、主債務者が破綻したにもかかわらず、激しい取立てを受けずに済んだ者が多い。そして、この者たちの保証債務が今の時期大量に消滅時効を迎えつつあるのだ。おそらく、この時期を過ぎると、SFCGの債務の大部分が時効によって消滅することになるだろう。保証人の救済の問題は最後の天王山を迎えていると書いたのはそういうことだ。正念場と言ってもいいだろう。
 2、3年前から、盛んに保証人相手に支払督促の申立てをしているのは、アセットファイナンス→SFCG(管財人)→スカイランド→ビーンズと順次譲渡された系統で、ビーンズから委託を受けたサービサーのエイチ・エス債権回収会社というところだ。
 この会社、今までは保証人の住所地の簡易裁判所に140万円の限度で支払督促を申立て、異議が出れば取り下げるということを繰り返してきたが、つい最近、東京簡裁にいきなり訴訟を提起する例に出くわした(140万円の限度であるが。)。消滅時効の完成が迫り、方針を変更したのかもしれない。

 なお、この会社が雑なのか、SFCGからの伝言ゲームでバグが生じたのか、ときどきヘンテコな申立てに出くわす。1、2年前は、ツンデレが代理して自己破産の申立てをし、免責を得た保証人 (もちろん保証債務も債権者名簿に載せていた。) に対して支払督促が申し立てられたし、この度は、平成21年に保証人が行った弁済を主債務者が行ったと主張してきた。
 こういうことだ。この保証人の主債務者は平成19年ころ破綻したのだが、平成20年にSFCGが、平成19年に主債務者が期限の利益を喪失したといって、保証人だけを相手にして訴訟を提起し、敗訴した保証人が平成21年に支払をした。その後、SFCGの破綻だか、債権の二重譲渡にからむゴタゴタだか、理由はよく分からないが、主債務者にも保証人にも請求は来なかった。そういうところに、この度の保証人を被告とする訴訟が提起されたというわけだ。そしてその訴状では、平成21年に被告が行った弁済は主債務者がしたことになっており、その弁済の後支払がなかったから主債務者は期限の利益を喪失したと記載してあったというわけ。原告にしてみれば、平成21年に期限の利益を喪失したのだから、時効はそこから進行を始める。まだ5年の時効は経過していませんよというつもりだったのだろう。でもところがどっこい、主債務者が期限の利益を喪失したのは平成19年で、そこを起算点とすれば消滅時効が完成していたのである(後述のように正確には主債務の時効の起算点は平成20年となる。)。

 少し法律の解説をするが、民法は、債務者に対する訴訟の提起や債務者による債務の承認によって時効は中断すると規定している(民法147条)。保証人が保証債務の弁済をすることは「債務の承認」に当たるが、それによって中断されるのは、保証債務の消滅時効の進行にすぎない。主債務の時効は保証人が保証債務の弁済をしたところで中断しないのだ(大判昭和5年9月17日法律新聞3184号9頁)。そして、保証債務者は、主債務が時効完成後に保証債務の弁済をした場合でも、主債務の時効消滅を援用することができると解されている(東京高判平成7年2月14日判時1526号102頁)。だから、この事案の場合、平成21年に保証人が弁済をしていても、その後に完成した主債務者の時効を援用することができるのである(保証債務には主債務に対する附従性というものがあり、主債務が時効によって消滅すれば、保証債務も消滅する。保証人が主債務の消滅時効を援用すれば、自己の保証債務を免れることができることになる。)。
 ただし、主債務者が破産し免責を受けていた場合、主債務の時効はもはや観念することができないとされているので(最判平成11年11月9日民集53巻8号1403頁)、保証人が主債務の時効を援用するということはできないし、主債務者の法人格が破産終結決定により消滅すると、主債務が消滅し、保証債務のみが独立して存続することになるとされている(最判平成15年3月14日民集57巻3号286頁)。主債務者が破産していると保証人には不利なんだな。
 なお、連帯保証人に対する「履行の請求」により、主債務者との関係でも主債務の時効が中断するとされているので(最判昭和48年9月7日判時718号48頁)、上記の事案の場合、平成20年の訴訟で主債務についても時効が中断していることになるが、連帯保証人に対する勝訴判決が確定しても、主債務の時効期間について民法174条の2第1項は適用されず、主債務の時効期間が10年になるわけではないので(大判昭和20年9月10日民集24巻2号82頁)、上記の事件で保証人が困ることにはならなかった。

 ところで、岡口さん、要件事実マニュアル〈第4版〉では、連帯保証人に対する「履行の請求」により、主債務者との関係でも主債務の時効が中断する(最判昭和48年9月7日判時718号48頁)と、連帯保証人に対する勝訴判決が確定しても、主債務の時効期間が10年になるわけではない(大判昭和20年9月10日民集24巻2号82頁)が別々の頁に載ってるので(265頁と266頁)、連帯保証人に対する保証履行請求権が判決で確定したら、主債務の時効期間はどうなるんだろうって、しばらく考えましたよ。レイアウト上は工夫の余地があるように思います。

 ツンデレは何か問題にぶち当たると、答え探すんじゃなくて、一応自分の頭で考えようとする。ツンデレは自分の長所だと思ってるんだけど、こういうときは「さっさと探せよ」と突っ込まれても仕方ないなとも思う。



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