「国会議員枠」の未公開株で資金を集めた疑惑をもたれている武藤貴也議員が釈明会見をしたようである。
動画
https://www.youtube.com/watch?v=F_q-14YBCtk

書き起こし
http://logmi.jp/86748

 この中で武藤議員は、自分に法的責任はないことを強調し、議員辞職の考えがないことを明らかにしたようである。
 さて、今回は、この武藤議員の釈明が法廷で通用するものなのかどうかをこれまで出てきた事情の範囲で検討してみたい。
 まず、疑われている事実
 http://shukan.bunshun.jp/articles/-/5352
 武藤議員の学生時代からの知人が明かす。
「昨年10月末、cLINEで持ちかけてきました。ただ資金がないので、私に資金を集めてくれと。上がった利益の半分を武藤さんに渡すという約束でした」
 この知人が投資家を探したところ23人、合計4104万円が集まり、それぞれ武藤議員の政策秘書の口座に振り込んだ。しかし、結局、未公開株の購入はできず、出資者が返金を求めたが、約800万円を秘書が別の借金返済にあてていたことが発覚。いまだに約700万円が返済されていないという。
 まずは刑事責任から。
 週刊文春の記事のとおりであれば、武藤議員の行為は詐欺罪(刑法246条1項に該当するだろう。
刑法246条1項
人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。

 「人を騙して」、つまり真実と異なる事実を告げて、他人を誤信させたうえ、その誤信に基づいて「財物」(価値のある物)の交付を受ければ詐欺罪が成立する。これは故意犯だから、犯罪が成立するためには、告げる事実が真実でないことを知っていることが必要だ。告げる側が、自分もそれが真実だと思っていれば詐欺罪にはならない。
 この事件でいうと、武藤議員は、「値上がり確実なソフトウェア会社の新規公開株を国会議員枠で買える」という虚偽の事実を告げて、それを信じた(誤信した)出資者から金を集め(財物を交付させた)、ということになる。

 これに対する武藤議員の釈明
1 出資を募る際、「虚偽の事実」が告げられたかどうか(欺罔行為があったかどうかの問題)
そんな状況の中で、非常に困っていた昨年の10月下旬、私の秘書が知人B氏から「値上がりしそうな株があるので、資金をなくしてしまったのなら、この株を購入して穴埋めしてはどうか。枠は押さえている」という話を聞いてきました。「一般公募入札で得意顧客のために押さえられている特別な枠がある」との説明でした。
私も信頼している秘書が間に入っていたこともあり、その話を真に受けてしまい、
この際のやりとりのなかで、A氏が私の名前を使い、国会議員のための枠を押さえていると言って、資金づくりをするといけないと思い、そのようなことがないように、絶対に注意してくださいと言いました。
当然ですが、一般公募入札であり、知人Bが枠を押さえているだけで、国会議員のために枠を押さえているわけではないからです。
先ほども申し上げましたが、A氏はB氏からも資金を預かっていましたので、お互いを知っており、株の枠については私ではなくB氏が押さえているという認識があったと思います。
今回の報道で、私が一度も使用していない「国会議員枠」という言葉がひとり歩きしておりますが、おそらくこのときのA氏とのやりとりを切り取ったものだと思います。
再度申し上げますが、事実と異なりますので、「国会議員が枠を押さえている」という表現を使われては困るという意味で、A氏に伝えていました。

 実際に出資者を集める行為をしたのはA氏であったようなので、出資者がどういう説明を受けたのかは、武藤議員の説明からは分からない。だから、この点については釈明として不十分。政治的にいうなら「説明義務を尽くしていない」ってことになると思う。
 武藤議員は、必死に否定してるようだけど、問題は、「国会議員枠」があったかどうかじゃないんだよね。「一般公募入札で得意顧客のために押さえられている特別な枠がある」という説明であっても、それが事実と異なる説明であり、出資者に対して説明する者が、その説明が事実と異なることを知っていながら出資者を募ったのであれば(一般公募入札で得意顧客のために押さえられている特別な枠なんてものがないことを知っていながら、「ある」という説明をしたのであれば)、やっぱり詐欺行為があったことになる。
 まあ、今検討しているのは、武藤議員の釈明がちゃんと釈明になっているかどうかで、その説明が事実であると証明されたかどうかはまた別の話。週刊文春に掲載されたLINEの画像には、「正直証券会社からもうちが国会議員のために枠を抑えてるのとが一般に知れたら大変だと言っています。」という記載が残っている。今さら「私が一度も使用していない「国会議員枠」という言葉がひとり歩きしておりますが、」なんて言われてもなかなか信用するのは難しいのではないかと思う。muto img_cdd51326798a8b744da5ca41af035a3564696



















 そもそも、この話でいちばん胡散臭いのは、「私の秘書が知人B氏から「値上がりしそうな株があるので、資金をなくしてしまったのなら、この株を購入して穴埋めしてはどうか。枠は押さえている」という話を聞いてきました。「一般公募入札で得意顧客のために押さえられている特別な枠がある」との説明でした。」の部分なんだよな。一般公募入札であろうと、そんな枠があるなんて話を聞いたことがないし、B氏がそんな枠を押さえてもらっているというのであれば、B氏がそれを使って金儲けをすればいいことなんで、なんで武藤議員のためにそんな便宜を図るのか。不自然すぎる。
 武藤議員がちゃんと疑惑を払拭したいのなら、「一般公募入札で得意顧客のために押さえられている特別な枠」を用意してたのはどこの証券会社なのかきちんと明らかにすべきであろう。そうすれば、「確かに購入できると言われていた株が、結局購入できなかった」理由も明らかになるだろう(たぶん、「特別な枠」があったという話自体否定されると思うけどね。)。まあ、「自分は秘書から聞いただけでよく知らない」って言い訳するかもしれないけど、そんないい加減な話で他人から何千万円も資金集めさせるのなんてのはあまりにも無責任でちょっと信じがたいところではある。
 最後に、武藤議員に有利なことを言えば、集めたお金は秘書が自分の債権者の返済に回したそうだから、最初から秘書の計画で、武藤議員が秘書に騙されたというストーリーもあり得るのかなあとは思う。

2 出資を募ったのは誰か(実行行為者の問題)

  実際に出資者に説明したのはA氏だという話だが、だからといって、資金を集めたは武藤議員ではないということになるわけではない。大坂城を作ったのは豊臣秀吉ではありません、大工さんですというレベルの話で、資金を集めた主体、つまり返還義務者は誰かは別に考えなければならない。
「週刊誌の記事では、私が指示して資金の準備をしたかのように書かれていましたが、事実はA氏自身の判断で、株式購入をするために、ご自身で資金を準備したことがおわかりいただけると思います。
 資金の準備をしたのは(未公開株の話があると出資者に伝え、出資を募ったのは)A氏自身だといいたいようだ。まあ、釈明がちゃんと釈明になっているかどうかに絞れば、釈明になっていると言えるか。
 うーん、でもなあ。証券会社が押さえてくれてたのは武藤議員の説明でもA氏のためじゃないよね。そうすると集めた資金を払い込んで株式を取得するのはA氏じゃないよね。LINEの画像には「売るタイミングは希望出せますよね?売却指示は武藤さんがされるイメージでしょうか?」というやりとりがある。また、「私が預けたお金を失ってしまったA氏に「この株を購入して私が預けたお金の返済に回してはどうか? 必ず買えるみたいなので」という提案をいたしました。このとき私は、A氏になんとか金銭問題を解決してほしいと考えていたのです。」でしょ。明らかに自分の貸金の回収に使うためのスキーム。少なくとも武藤議員とA氏が共謀してやったことという匂いがぷんぷんしてしまう。
 あと、税金の話も、「お金に困窮していたA氏は、私の話を受けて、前向きに検討し始めました。株式購入について、取得した株の売却時期や利益が出た場合に支払う税金について、何度か問い合わせてきました。」という説明だけどさ、LINEの画像の「あと株ですが、税金は20%とのことでした。」では、誰にかかる税金について話をしているのか分からない。ただ、この「20%」っていう数字は、明らかに株式等の譲渡所得等(譲渡益)の金額の計算なんだけど、これって、株式を売却して利益が出した人にかかる税金なんだよね。
https://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/1463.htm

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 上述したように、この枠は「A氏のために証券会社が押さえてたもの」じゃないよね。そうすると、税金がかかる対象である株式を売却した者はA氏じゃなくて武藤議員だろう。LINEのやりとりもそれを前提にするのが自然だろうと思うのだよ。
 でもまあ、武藤議員に有利そうな事情について触れると、LINEの画像は、A氏が「売るタイミングは希望出せますよね?売却指示は武藤さんがされるイメージでしょうか?」と言ったところ途切れているから、この続きを出せば、「売却の指示は君が出してね」っていう部分が出てくるかもしれない(「オレが出す」って言ってるかもしれないがw)。
 あと、仮に、騙した主体(詐欺の主犯)がA氏だとしても、「A氏に「この株を購入して私が預けたお金の返済に回してはどうか? 必ず買えるみたいなので」という提案をいたしました」武藤議員は、詐欺の共犯(教唆犯、幇助犯)が成立する余地がある。自分の債権回収するために、自分の秘書に指示して秘書の口座使わせてるしね。

3 被害者は、「特別な枠の話」に騙されて出資したのか(その誤信に基づいて財物を交付したのかどうか-欺罔行為との因果関係)

週刊誌の記事によると、A氏は「国会議員からの話だから信用した」と証言していると書かれていますが、実際この話は(秘書の知人の)B氏からの話だということをA氏は知っていたので、「国会議員だから信用した」という話は事実と異なります。そして検討の結果、A氏は株式購入のための資金の準備をするという話でした。

週刊誌の記事では、私が指示して資金の準備をしたかのように書かれていましたが、事実はA氏自身の判断で、株式購入をするために、ご自身で資金を準備したことがおわかりいただけると思います。

 論点がずれてる。
 これはA氏が「国会議員だから信用した」というのは事実に反するという釈明である。おそらく、武藤議員は、「A氏は騙されていない」と言いたいのであろう。しかし、問題は、武藤議員がA氏の話に応じて出資してきた人たちとの関係で詐欺罪が成立するかどうかであり、A氏に対する関係で詐欺になるかどうか(武藤氏がA氏を騙したかどうか)ではない。
 すでに説明したように、出資者との関係では、A氏が虚偽の事実を告げて資金を集めたというのであれば、出資者は「特別の枠」を信じて出資したということになるのであろうから、誰か主犯かはともかく欺罔行為と出資者との被害との間に因果関係を否定することはできないだろう。
 というかさあ、LINEの画像見ると、武藤議員、はっきり「正直証券会社からもうちが国会議員のために枠を抑えてるのとが一般に知れたら大変だと言っています。」って打ち込んでるよね。B氏からの話だということを知ってる人にこんなこと言うかあ?

4 結論
  まあ、現在、報道されているところだけでは、はっきりと武藤議員に詐欺が成立すると言いきるだけの事情はないだろう。特に問題なのは、未公開株が購入できなかった理由。「特別枠があったのかなかったのか」及び「(仮に枠がなかったとして)武藤議員が最初から枠が存在しないことを知っていたのかどうか(故意の有無)」の2点。ここは事実はどうだったのかを判断する材料が何もない。まあ枠の有無については、「そんなもんあるかいな」とは思うが、武藤議員がないことを知っていたかどうか(詐欺の故意があったかどうか)についてはなんとも言えない。言動を見る限り世間知らずなお方ですから、秘書の言うことを信じてました。疑いもしませんでしたと言われると、ウソだろとは言いづらい。そこがはっきりすると主犯か共犯かはともかく、詐欺罪の成立から逃れることはできないだろう。

5 民事責任
  上記で検討したのは刑事責任であって民事責任はまた別である。他人を騙してお金を交付させた者には不法行為に基づく損害賠償責任が生ずる。こっちの条文は
民法709条
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

となっている。
 いちばん大きいのは、「故意又は過失によって」の部分。刑事事件では、武藤議員に故意があるかどうかが分からず、刑事責任が発生するかどうか分からないと書いたが、民事責任は過失があれば成立する。
 そして、故意に関して、さっき、「「自分は秘書から聞いただけでよく知らない」って言い訳するかもしれないけど、そんないい加減な話で他人から何千万円も資金集めさせるのなんてのはあまりにも無責任でちょっと信じがたいところではある。」って書いたように、「特別枠の有無」なんて、きちんと調査した上で出資者を募るべきものであり、秘書のいうことを信じたから自分に過失がないなんて話は法廷では通用しない。
 武藤議員が民事責任を免れることができるのは、「特別枠はきちんと存在したが、証券会社等第三者のせいで、株式の購入がうまくいかなかった」という場合のみである。そして、おそらくこのような事情の立証責任は、武藤議員の側にある。
 もっとも、武藤議員の釈明だと、「現在すべての方に返済が済んだとの報告を受けています。」だから、それが事実だとすると、たとえ民事責任が発生していたとしても、その賠償責任は消滅してしまったことにはなる。
 被害弁償をしてもいったん発生した犯罪がなくなるわけではない刑事責任とは違う点である(泥棒が「盗んだものは返したから窃盗罪は成立しない」っていうのは変でしょ。)。
 武藤議員はこれで責任を果たしたつもりになってるようだから、民事にせよ刑事にせよ、だれかが司法手続きを起こさないと上記の疑問点は解消されないだろうなあ。
と思っていたら、
武藤氏「身の潔白示したい」 文芸春秋社への提訴を検討
http://www.sankei.com/west/news/150828/wst1508280084-n1.html
だそうだ。ふーん。まあ、週刊文春は金銭トラブル以外のことも報道してるからなあ(LGBTの人の人権の観点からちょっと扱いづらい。基本的人権の尊重が「日本的精神」を破壊し、現在の日本の「精神的荒廃」をもたらしたって言ってる人だけど)

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