上記の昭和37年の最高裁判例からすると、遅延損害金から充当されるとしか解釈しようがなさそうなのだが、一部の裁判例では、元本から充当されるという解釈がされている。これはツンデレの見るところ、遅延損害金の計算なんで面倒な話はしたくないという裁判所の意向が強く出たものではなかろうか(後述の弁護士の話と同じ)。
実はツンデレが弁護士になった20年前は、遅延損害金から充当されるなどと主張する弁護士はほとんどいなかった。15年くらい前、どなたかは存じ上げないのだが、昭和37年の最高裁判例からすれば、遅延損害金から充当されないとおかしいじゃないかという先生が現れ、そういう判例を獲得されたのだ。それが刊行物に紹介され、遅延損害金から充当されると主張する先生が増えていった。というのがツンデレの記憶である。
平成16年には、自賠責保険からの支払については遅延損害金から充当すべしという最高裁判例も言い渡された(最判平成16年12月20日判時1886号46頁)のだが、任意保険からの支払についてはまだ最高裁判例もなく、裁判例が分かれている(遅延損害金から充当した例として東京地判平成22年3月26日自保ジャ1828号36頁。元本から充当した例として東京地判平成25年1月30日自保ジャ1894号31頁。どちらも赤い本に載っている裁判例である。)。
上記の掲示板の議論見てたら、最初から元本に充当した計算で損害賠償請求している弁護士が意外に多くて驚いた。勝つか負けるか分からない論点なら、なるべく依頼者(被害者)に有利な解釈を採用して、それを裁判所に認めさせるように努力するのが弁護士の仕事だと思ってたから。
その掲示板で知ったのだが、この点についての主張例を、樋口明男弁護士がネットで公開していたので紹介する。
http://www.ahiguchi.com/column/log/hidiary.cgi?yyyy=2012&mm=06&dd=29
採用しない弁護士がそうする理由は計算が面倒だからだそうだ。ツンデレはエクセルで計算式を作って、そこに日付と金額を入力するだけで済むようにしておき、訴状には「別紙のとおりの計算になる」とそれを引用するだけである。要するに過払金返還請求訴訟の訴状と同じ。手間だと思ったことはない。
ただ、この方法は、エクセルの表の使い回しによる訂正忘れや、入力ミスなんかが出てくることは避けられない。間違えると裁判官に暴言を吐かれる諸刃の剣w