ツンデレblog

淡路島の弁護士が考えたこと

カテゴリ : 消費者保護

 指定暴力団・住吉会系の暴力団員らによる特殊詐欺事件の被害者が30日、暴力団対策法に基づき、事件に直接関与していない住吉会トップで代表の西口茂男総裁ら最高幹部3人を含む組員7人を相手に、詐取金など計約2億2000万円の賠償を求める訴訟を東京地裁に起こした。原告弁護団によると、特殊詐欺事件を巡って暴力団トップの使用者責任を問う訴訟は全国初。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160630-00000026-mai-soci
 警視庁組織犯罪対策4課などは14~15年、住吉会の3次団体幹部ら33人を詐欺容疑で逮捕。リーダー格で組長代行の男(42)=懲役10年の実刑判決=など組員8人を含む28人が起訴された。グループは全国の約170人から15億円以上を詐取したとみられるが、捜査では西口総裁ら最高幹部の直接的な関与は確認できなかった。
 原告弁護団によると、組員でない複数の被告が「グループから抜けたら家族が暴力団から危害を加えられると思い、指示に従った」などと警察や検察の取り調べに供述。「詐欺事件は住吉会の影響力や便益を利用したもので、組員の地位と資金獲得行為が結びついていた」として、トップの責任が問えると判断した。
 きっかけは刑事記録であることは間違いないが、否認されたら(当然されるだろう)どうするんだろう?
 刑事記録だのみだと、仮にこの事件で勝っても、同種事件の被害救済につながるとは思えないな。



やっぱり たずね人 船越政博さん
 http://blog.livedoor.jp/bakara2012/archives/47173906.html

KAGEYAMA_140120

 法律構成がどうもしっくりいかなくて悩んでいる事件がある。複雑な話を分かりやすくデフォルメするとこういうことだ。
 ある資産家のところに、証券会社の職員が節税目的の保険のセールスに来た。節税の方法は、相続時精算課税制度を使うというもの。
  https://www.nta.go.jp/taxanswer/sozoku/4103.htm
 相続時精算課税制度とは、原則として60歳以上の父母又は祖父母から、20歳以上の推定相続人である子又は孫に対し、財産を贈与した場合において選択できる贈与税の制度です。この制度を選択する場合には、贈与を受けた年の翌年の2月1日から3月15日の間に一定の書類を添付した贈与税の申告書を提出する必要があります。
 なお、この制度を選択すると、その選択に係る贈与者から贈与を受ける財産については、その選択をした年分以降全てこの制度が適用され、「暦年課税(注)」へ変更することはできません。
 また、この制度の贈与者である父母又は祖父母が亡くなった時の相続税の計算上、相続財産の価額にこの制度を適用した贈与財産の価額(贈与時の時価)を加算して相続税額を計算します。具体的な贈与税及び相続税の計算については「4 税額の計算」をご覧ください。
 このように、相続時精算課税の制度は、贈与税・相続税を通じた課税が行われる制度です。
 上記のとおり、このこの制度を利用するためには、「贈与を受けた年の翌年の2月1日から3月15日の間に一定の書類を添付した贈与税の申告書を提出する必要がある」のであるが、勧誘の際、証券会社の職員が、「何もする必要はありません。この保険を購入すれば、自動的に相続時精算課税制度の適用が受けられます。」と説明した。明らかな虚偽説明であり、説明義務違反だろう。
 説明を受けた資産家は、贈与を受ける子に、その通り、「何もする必要がない」と伝え、子が何もしないでいたところ、相続時精算課税制度の適用を受けることができず、手続をしていれば払わなくてよかった贈与税、延滞金、無申告加算税などを納付せざるを得なくなった。

 実際の事件ではどんな説明をしたかが当然争点になったりしていて、もっともっと複雑なわけだが、ツンデレの違和感を浮かび上がらせるために、上記のような事例を考えてもらいたい。ここでどうもしっくりこないのは、この場合、保険を購入したのは親で、誤った説明を聞いたのも親である。説明義務違反(虚偽説明)を受けたのは親であるのだが、実際に損害を被ったのは子である。そこの関係をどうするのかがとても悩ましい。
 ツンデレの事案では、たまたま親が死亡し、贈与を受けた子が唯一の相続人だったので、相続により、人格が一体化したとかそれなりに説明ができそうなんだが、これ、親が生きてたり、相続人が複数だとどうなるんだろう? 
 なんとなく胎児性致死傷に関する水俣病刑事事件を思いおこさせる。
最決昭和63年2月29日刑集42巻2号314頁
 現行法上,胎児は,堕胎の罪において独立の行為客体として特別に規定されている場合を除き,母体の一部を構成するものと取り扱われていると解されるから,業務上過失致死罪の成否を論ずるに当たっては,胎児に病変を発生させることは,人である母体の一部に対するものとして,人に病変を発生させることにほかならない。そして、胎児が出生し人となった後、右病変に起因して死亡するに至った場合は、結局、人に病変を発生させて人に死の結果をもたらしたことに帰するから、病変の発生時において客体が人であることを要するとの立場を採ると否とにかかわらず、同罪が成立するものと解するのが相当である。
 ツンデレは、この決定について、司法試験の口述試験で上智大の林幹人教授から聞かれたことがある。この決定については、上智大の林幹人教授が、ちょっと特殊な読み方をしていて、ツンデレは、それを発表した法セミに目を通していたのだが、この決定の言い回しまでは覚えておらず、「あの、過失の法定的付合説みたいな見解」と言って、そのような読み方をしない林教授に怒られたのであった(すげえおっかなかった。)。
 
 ちなみに、ツンデレの事件では、証券会社から説明を聞いたのも子で、子が親に伝えて親が契約とという流れだったので、説明を受けた者と被害者が同じという幸運もあって、比較的説明・立証がしやすい状況なのだが、おそらく大多数の、親が説明を受けるパターンだと、立証が相当困難になるだろうなあ。亡くなる例も多いだろう。そして、立証の困難性等から、被害者が戦うことを諦める、埋もれた例も多いのだろうと想像する。

やっぱり たずね人 船越政博さん
 http://blog.livedoor.jp/bakara2012/archives/47173906.html

KAGEYAMA_140120

 今どき珍しい口座振込み型のヤミ金の事件が来た。
 が、経済的被害はなし。
 手を出したのは2件だが、まだ一度も返金したことがなかったのだ。例によって、親兄弟等関係者のところに電話が鳴りまくり、親に連れられて子がツンデレ事務所にやってきた。
 まあ、元本の返済義務もないのは、昔苦労して勝ち取った最高裁判決があって明らかなんで、払わないよというだけなんだが、それだけだとなかなか解決しないからね。しつこく電話かけ続けるとか、口座凍結するとか、少し相手に嫌がらせしないと脅迫電話が続く可能性がある。
 だから、「金はどこに返せばいいんだ?」とか聞いて、振込先を聞き出した上で凍結。これで一丁上がり。
 最初、なかなか口座番号教えてくれなかったんで、依頼者の目の前で、何回もヤミ金に電話をかけて、「犯行グループに電話かけ続け「回線封じ」」を実演し、口座聞き出した後は、逆に、何度も「送金したら連絡してください」とか何回も連絡してきたんで、今度は、「必勝 悪徳電話撃退法」を依頼者の目の前で実演することとなった。
 で、あがったのは一丁だけなんで、もう一件どうなったんだって聞いたら、「キャッシュカードを送付した」とのこと。をいをい、それは犯罪じゃん。
犯罪による収益の移転防止に関する法律27条
 他人になりすまして特定事業者(第二条第二項第一号から第十五号まで及び第三十五号に掲げる特定事業者に限る。以下この条において同じ。)との間における預貯金契約(別表第二条第二項第一号から第三十六号までに掲げる者の項の下欄に規定する預貯金契約をいう。以下この項において同じ。)に係る役務の提供を受けること又はこれを第三者にさせることを目的として、当該預貯金契約に係る預貯金通帳、預貯金の引出用のカード、預貯金の引出し又は振込みに必要な情報その他特定事業者との間における預貯金契約に係る役務の提供を受けるために必要なものとして政令で定めるもの(以下この条において「預貯金通帳等」という。)を譲り受け、その交付を受け、又はその提供を受けた者は、一年以下の懲役若しくは百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。通常の商取引又は金融取引として行われるものであることその他の正当な理由がないのに、有償で、預貯金通帳等を譲り受け、その交付を受け、又はその提供を受けた者も、同様とする。
  相手方に前項前段の目的があることの情を知って、その者に預貯金通帳等を譲り渡し、交付し、又は提供した者も、同項と同様とする。通常の商取引又は金融取引として行われるものであることその他の正当な理由がないのに、有償で、預貯金通帳等を譲り渡し、交付し、又は提供した者も、同様とする。
1項が他人名義の預金口座を自己のために使うために、通帳やカードを譲り受ける行為、2項が、同様の目的で通帳やカードを譲り渡す行為を、それぞれ処罰する法律である。
 少し前まで、ヤミ金は、どうしても支払うことができなくなったヤミ金の被害者に、ヤミ金が通帳とカードを送ってくれば、もう請求しないって言って、大事な犯罪ツールになる他人名義の口座を取得していたんだが(ツンデレの依頼者にもそれやった奴がいた。)、今回のはいきなりカード送らせたそうだ。
 その理屈がちょっと新しい。「キャッシュカードを渡してください。貸したお金の返済は、通帳使って自分の口座に入れてください。カードは悪用しません。目的外に使用しません。」
 もちろん、目的外に使用された結果、振り込め詐欺の被害者が発生し、銀行やら警察やらからの呼出しを受けてるとのこと。
 返済に使うからカード送ってっていうのが新しいなあと思ったのと、借主が上の説明を信じたっていうのが真実なら、犯罪収益移転防止法は成立しないなあというのと。
 自白次第なんで、警察の自白強要が怖い類型だが…。
 案の定、その後、親から、「警察に、これは犯罪だって言われてる」っていう電話があった。刑事弁護の依頼はないから少なくとも現時点での逮捕はされてないんだろう。


やっぱり たずね人 船越政博さん
 http://blog.livedoor.jp/bakara2012/archives/47173906.html

KAGEYAMA_140120

 http://www.fnn-news.com/news/headlines/articles/CONN00306874.html
振り込め詐欺グループがだまし取った現金500万円を横取りしようとした疑いで、早稲田大学生ら4人が、警視庁に逮捕された。
内山容疑者らは、詐欺の受け取り役が、東京・文京区の江戸川橋駅に行くよう指示されたとの情報を得て、待ち伏せし、ジャンパーで変装した幾原被告が、少年の顔を殴って、「警察だ。お前受け子だろ。金だせよ」と言って、現金を奪おうとした。
幾原被告は、「相手が犯罪者なら、犯罪にならないと思った」と犯行を認めているが、ほかの3人は否認している。
振り込め詐欺の被害金横取りグループが摘発されるのは異例で、警視庁は、実態を調べている。
 摘発されるのは異例かもしれませんが、これは昔からあることですね。犯罪者が盗んだり騙し取ったお金をとられたとき、被害者が警察に届け出る可能性は低いですから。
 昔、システム金融のヤミ金と電話で話したとき、被害者(債務者)から送られてくる手形・小切手を、転送届けでごっそりやられた。もちろん警察になんか届けられないから泣き寝入りです。って話を聞いたことがあります。
 ただし、上は「受け子が被害届ださないと思っていた」場合の話で、「相手が犯罪者なら、犯罪にならないと思った」が本当だとちょっとね。財物罪の保護法益についての本件説と所持説の争いまで知ってたら土下座して謝るけどさ。判例はこの点についてはっきり言ってるわけじゃないけど、「平穏な占有」とか「一見不法な占有とみられない占有」は刑事上保護されるというのが通説で、これで実務も動いていると言っていい。そういうわけで、①所有者による取り戻しも、②第三者による奪取(この事件はこの例)も、③禁制品(覚せい剤とか)の奪取も、すべて犯罪になるとされている。

 さて、ツンデレが気になるのは、この早大生くんたちが、どうやって受け子を捕まえたのかですね。かけ子よりは簡単とはいえ、警察でも受け子の逮捕はなかなか困難ですよ。「内山容疑者らは、詐欺の受け取り役が、東京・文京区の江戸川橋駅に行くよう指示されたとの情報を得て、」って書いてあるけどねえ。
 ツンデレの想像だけど、ありそうなのは次のようなストーリー。
 情報元は、振り込め詐欺グループ内の裏切り者。こいつが組織の金を独り占めしようと考えた。ただ、自分が組織の金を盗んでトンズラすると、自分が組織から粛清されるから、外部の連中(早大生ら)に受け子の情報を流して、受け子から奪わせ、それを山分けしようとした。これなら、裏切り者は、組織の中で他の仲間と一緒に被害者面できる。
 しょせん犯罪者だからね。このくらいのことはやると思うよ。今回逮捕された連中がどうやって情報を得たかについて、どれだけ話すのかがポイント。いずれにせよ組織内部からのリークの可能性が高いように思うので、警察は犯罪グループ全体の解明に努力して欲しい。


KAGEYAMA_140120

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