はじめて“自家製マッコリ”を飲んだのは、新宿と新大久保のあいだ、職安通り沿いにあった「韓国食堂」でした。僕が2008年に興味を持ち、新宿ー新大久保で飲める店を探した時、もうここしかなかった。昔は「武橋洞」なんかでも飲めたらしいんだけど、オーナーが変わってしまってからは飲めなくなった。
そうして唯一“自家製”を出していたこの店は界隈では古参の店。オモニは、細身なんですが貫禄ある感じのおばちゃんで、きつめのパーマをかけた、サザエさんっぽい髪型。愛想はよくないけれど、15人ぐらいのキャパのお店の厨房を一人で仕切っている、職人ぽい印象の人でした。店内には液晶TVがついていたりして、他の“自家製”を出してるところに比べれば、こぎれいで古びた感じはしなかったと思います。だから“自家製マッコリ”がこんなところで飲めるのか、と初めて行った時にはちょっとびっくりした。
さて“自家製”にはスタンダードな様式があって、それはビールの空き瓶で出されるということ。韓国食堂では普通のビールと一緒に、ラップで頭をとめられたそれが冷やされていました。頼むとラップをピッと取ってから運ばれてくる。ここのやつは、二東なんかの甘ったるいのとはちがって、キレがあって美味かった。マッコリをビールで割るモッコリなんていう飲み方は、加熱して発酵しなくなったどんよりしたタルい味を、炭酸で割ってキレを出すための飲み方のような気がします。そうする必要がないぐらいのキレがあって爽快な、らしくないどぶろくでした。
その韓国食堂が、2010年末にひそやかに閉店してしまいました。