2013年パリ・オペラ座バレエ学校が創立300年を迎えたのを機に研究成果を『世界のバレエ学校—誕生から300年の歴史』(2014年新国立劇場運営財団情報センター)にまとめた。その巻末に<ひょうごインビテーショナル>におけるバレエ学校招聘事業の記録がある。1991年から16年間にわたって海外から招聘された13のバレエ学校の公演記録を収めたものである。

 事業の主体は兵庫県だが、企画アドバイザーでプログラムの立案から制作まで実務面を担当されたのは薄井先生であった。これだけのバレエ学校を毎年(大震災の年を除く)招聘されるとは。またプログラムの内容が奮っている。そもそもなぜこの記録を掲載したかというと、最初は、ある公演のレビューをネット上の記事から発見。やがてシリーズで開催されていることに気づき、そこから情報の断片を集めていった結果、いつしか第1回から第15回まで一つの線につながったのだ。考古学の発掘作業のようであった。その過程で、薄井先生のお名前を確認することができた。

 「先生、すごい企画だったのですね」とお電話すると、「それほどでも」と謙遜されるのでこちらはすっかり拍子抜け。

 「プログラム一式お持ちでないでしょうか。本に掲載したいのです」

 「そんなものありません。兵庫県立芸術文化センターに聞いてごらんなさい」

 ということで、早速センターに問い合わせてみる。すると、資料として保管はしてあるが、一式まとめてあるわけではないので、年度ごとの箱からそれぞれ探し出さなければならないとのこと。ご面倒をおかけしそうなのであきらめようかと一瞬思ったものの、思い切ってコピーをお願いしたところ、「・・・。一ヶ月くらいあれば」とのご返答をいただいたので、お言葉に甘えてお願いしてしまった。そして一式揃ったところで、入力作業に入った。選ばれた学校といい、プログラムの選曲といい、営利目的とは無縁、アカデミックなセンスの良さが伺われて、薄井先生の見識の深さを改めて知った思いだった。

 例えば、フォーサイスやプレルジョカージュの作品も上演されているし、マチュー・ガニオとマリーヌ・ガニオの兄妹や若き日のナターリヤ・オーシポワやウラジーミル・シクリャローフらの名前もプログラムに見られる。そして重要なのは、日本のバレエ教室の生徒も参加し、国際国流の場となっていたことだ。先生は、ご自分のお仕事を自慢されるような方ではなかったが<ひょうごインビテーショナル>の事業一つ顧みても、先生の偉大さが今更ながら偲ばれるのである。

 

【修正とお詫び】

『世界のバレエ学校』はじめにp3:ジョン・クランコ・バレエ・スクール(1961年)→正しくは(1971年)です。

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