2005年08月23日

まじめに考えた

『憲法なんて知らないよ』  池澤夏樹/集英社文庫

たとえば、目の前にふたつの選択肢があったとして、それが今後の人生の分かれ道となるすごく重要な選択肢だったとしたら、どうしますか?
たぶん、人はそれぞれに自分の理想とする信念や目的があって、最後はそれに従って、またはそれを達成するのに、よりよいと思われる方を選んでいくんだと思います。
たとえば、ひとつはハイリスク・ハイリターンな道。ひとつは安全だけどつまらない道。
「無駄な経験なんて何もない。冒険のない人生なんてつまらない!」という信念の人はハイリスクな道を選ぶでしょうし、「継続こそ力なり。ひとつひとつクリアしていけば必ず目標は達成できる!」と努力してきた人は安全な道を選ぶでしょう。
どちらがいいというわけではなく、この場合はきっとどちらも成功するんだと思います。
つまりそんな風に、迷ったときに基準として照らす信念や理想を持っている人は強いっていうことです。

この本を読んで、「あぁ、国も全く同じなんだなぁ」って思いました。
あたりまえのことかもしれないけれど、私は今まで忘れてたのです。
「憲法」というのがすべての法律のもとになる基本方針であること。
特に憲法の「前文」が、目指すべき理想像をはっきりと掲げたものであること。
忘れてたというか、初めてちゃんと理解した、というのが正しいかもしれません。
責任転嫁をすれば、それは学校がちゃんと教えてくれなかったから。もしくは、文章が難解で、ちゃんとしたイメージとして頭に入ってこなかったから。

日本国憲法の原文が英語だったことは知ってましたか?
実は私は、この憲法の草案がアメリカ人によって作られたことはわかっていたけれど、英文での完成した形の憲法を「翻訳」したものが、現在の「日本国憲法」だとは、恥ずかしながら知りませんでした・・・。
もちろん、日本語での原文となったものを勝手に変えることはできませんが、英文の方の原文を、より易しい言葉で翻訳し直すなら問題ないはず。
ということで、それをやったのがこの本の著者、池澤夏樹さんなのです。
おまけにまえがきとして、「憲法とはなんなのか?どうして必要なのか?現在の憲法はどうなのか?」ということが、子どもに語りかける口調でとてもわかりやすく書いてある。
おかげで私にもよくわかりました(^^)
原文だったら、読めといわれても最後まで読む自信は絶対ないけれど、このまえがきとわかりやすい新訳のおかげで、ほんとに自分の意思で最後まで読みたいと思えた。
実際、そんなに長いものではないんですね、憲法って。

たとえば前文の中の
「そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであって」は、
「政府は、国民みなが信じて託した一人一人の大事な気持ちによって運営される。」
といわれると、すっと頭に入って心にまでしみてくる。
「政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従ふことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務であると信ずる」
だとなんだかよくわからないけれど、
「政治のもととなる道義は世界共通であるはずで、それぞれの国の政治はこの道義に沿って進められなければならない。すべてを自分で決められる独立国が、同じように独立した他国を相手にする時に、この道義を無視することは許されない。」
と言われると、「なるほど、そりゃそうだ!」って思う。
学校で「前文」が重要だ重要だといわれたわけがようやくわかりました。

個人的な信念だって、持ってるだけでそれを貫く意志がなければ意味がないように、憲法もみんなが理解して「いい憲法だ」って思わなければ意味がないですよね。
理想を持って生きている人が強いように、みんなが同じ理想に向かっている社会は強いと思う。そしてその「理想」を文章化したものとして、私はこの憲法はすごくいい憲法だと思いました。
中身の条文については、いろいろ改憲論議などがありますね。
でも前文については、変える余地がないくらいに完成度の高い理想が書かれてる。
だから、いかなる改憲論議も、それが前文に書かれている基本理念を変えるようなものであってはいけないんだと改めて思いました。

って、ほんとはこんなことを考えてこの本を手に取ったわけじゃないんですけどね。
衆議院可決だの参議院否決だの、解散総選挙だのと騒がしいので、ちょっと国会のしくみの復習でもしようかと思ったのがほんとのところ(^^;)
ちゃんと国会についてもわかったし、いい本でした。

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