・1986年選手権2回戦(6日目第1試合)

 高知商(高知)000 000 020 02  4
 小  松(石川)000 000 020 01  3


 私は当時小学校1年生で、父の勤務の関係で、石川県小松市に住んでいた。
 地元の高校の春夏通じて甲子園初出場のうえ、チームにはエースの元雄(もとお)をはじめ、父の会社の社員の子弟も多数いたため、大阪への帰省時に父に連れられ、初めて甲子園で観戦した。ちなみにかなりの進学校だったそうで、地元では「90年に一度の奇跡」と言われていた。
 
 小松の応援席である1塁側アルプススタンドで観戦。8時開始の第1試合で、序盤は強い雨も降っていたが、途中からすっかり快晴に。当時の高知商といえば全国区の超強豪で、子供心にも勝てる気がしなかったが、元雄が踏ん張り、意外にも0-0のまま進行。高知商の投手は、あの岡林(元ヤクルト)であった。8回表にとうとう高知商が2点を先制し、これまでかと思ったが、その裏小松もすぐに同点に追いつき延長戦に。11回表ついに高知商が2点を勝ち越し、万事休すと思ったが、その裏小松も1点を返し、なお二死二塁、一打同点の場面だったが、次打者は遊ゴロで試合終了。この打者走者が一塁にヘッドスライディングした姿は、今でも目に焼き付いている。
 
 甲子園では、初出場校が球場の雰囲気や相手の名前に飲まれ、力を出し切れずに終わるケースも見られるが、この小松の戦いぶりは、強豪相手に力を出し切った内容であった。以降四半世紀を超え、甲子園で観戦し続けているが、最初がつまらない経験であれば、その後続かなかったかもしれず、素晴らしい試合を見せてくれた両チームの選手には、感謝の念に耐えない。
 
 なお当時「90年に一度」と言われた小松は、1999年の選手権にも出場している。