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5a5a7759.jpgやっと、白石美帆さん主演のこの作品が一般公開になりました。私は昨年の東京国際映画祭で観たんですが、今でも良く覚えてますから印象に残ってる作品といえますね。もしかしたら一般公開されないんじゃないかとヒヤヒヤしました。最近の白石美帆さんの活躍といえばやっぱりTVドラマ版「電車男」の陣釜さんでしょう。あのお嬢さんルックスの白石さんがこれまでとは真逆な粗暴キャラを熱演して、普通ならイメージが壊れそうで怖いと思うんですけど、今までのお嬢さんキャラからの脱却が図れてすごく成長されたような気がします。

この「ベルナのしっぽ」は大作の影に隠れてしまうような素朴な作品ですけど真心のこもった気持ちのいい物語でした。以前、三ツ沢球技場でたまたま取材に訪れた白石さんとお会いしてちょっとお話させてもらった縁もあるもので、ぜひ白石美帆さんとこの作品を応援してあげたいと思い、再エントリーいたします。

====以下2005.10.26の記述=====
<第18回 東京国際映画祭にて>
原作は1996年に出版された郡司ななえ作のベストセラー。監督は本作がデビュー作となる山口晃司さん。主演もこれが初主演作となった白石美帆ちゃん。物語は1981年、主人公しずくが28歳の年から始まります。まだバリアフリーという言葉も一般的ではなく、障害者に対する理解、対応も十分といえないこの時代に、視覚障害という大きなハンディキャップを背負いながらも、自分らしく前向きに明るく生きていこうとする女性の姿と家族愛、彼女を取りまく人々の優しさとふれ合いを描いたヒューマンドラマです。

+++ちょいあらすじ
「私、日本一のお母さんになる」
24歳の時、病気で失明した元永しずくは、生きていく証を見つけるために出産をし、子供を育てたいと考え、その第一歩としてまず盲導犬を利用することを決意する。そして、訓練センターで彼女は黒のラブラドールレトリバーの盲導犬ベルナと出会う。大の犬嫌いだったしずくは怯えるが、指導員の指示に従い恐る恐るベルナの口に自分の手を入れてみると、ベルナはとても従順で、しずくの不安は薄らいでいく。そして訓練期間を終え、しずくは夫ともに家族としてベルナを迎え入れ、新たな生活へと踏み出していく・・・
+++

80年代のお話ということで、やや垢抜けない野暮ったい感じは否めず、学校で見せられるような映画の雰囲気だったりするんですが、物語はとっても純粋で真っ直ぐでそして前向きで、そんなことちょっとでも考えてしまった私のほうこそ野暮だったかもしれません。お涙頂戴といってしまえばそれまでですが、実際いいお話なんだから仕方がありません。冒頭でベルナが愛想良くクルクルお目々で尻尾をふりふりしてでてきただけで、「この映画、やばひッ絶対泣いちゃうかも」と涙腺を緩むスイッチが入ってしまいました。

で、やっぱり予想通り泣いちゃいました。もう、素直に感動しちゃいました。上映終了後のティーチインで、監督さんが白石さんを褒め称えてましたけど、彼女の熱演はホント素晴らしかったです。本作では彼女にはとても難しい演技のいくつかが要求されるわけですが、まず、目が見えないという特殊な条件、盲導犬ベルナとのパートナーシップと愛情、家族愛、一人の女性が前向きに生きようとしたときに立ちはだかる衝突、挫折、葛藤、苦悩。そんな数々の表現を白石さんはとても自然に演じきっていました。監督さんは主人公のイメージとしては、ありがちな弱々しいヒロイン像ではなく、困難にめげず、時には自己中心的だったり、負けず嫌いで勝ち気な明るい女性をイメージしていたそうで、白石さんはそのイメージにピッタリだったんだそうです。劇中、しずくががベルナを連れて喫茶店に入ろうとすると次々に断られる場面があります。たいていは理不尽な社会の一面としてが描かれるとこですが、しずくは、絶対に食べてやると負けません。隣人にベルナの抜け毛のことで文句を言われても、そちらも内証で猫を飼ってませんか?とやり返す強気な彼女。そんな彼女の性格が、この物語をたんなるお涙頂戴モノでは終わらせなかったんじゃないかなと思いました。

この作品の素晴らしさは間違いなく白石さんとベルナ役の犬たちの功績によるものですね。ベルナは若いときはポーシャという犬で、年をとってからは名前は失念したけど別の年配の犬が演じたそうです。ベルナは黒ラブだから瞳が目立って印象的でラブリィキュートでした。ポーシャは盲導犬の訓練は入ってるものの膀胱炎で合格できなかった犬なんだそうです。今回のベルナ役を演じるにあたり再訓練したそうですが、すぐに対応できたんだそうですよ、スゴイよねぇ。監督さんは撮影現場でベルナに触れることができるのは、トレーナーと白石さんだけという風に実際の盲導犬と同じ環境を作り、撮影外でも常に白石さんがベルナをコントロールするようにして彼女たちのパートーナーシップを高めていったんだそうです。だからなんでしょうか、劇中でもこの二人の関係はとっても自然に描けてるように感じました。

それから、視覚障害者としての演技にも監督さんなりの考えがあり、一般的に視覚障害者のイメージとされがちな目は動かさず顔だけ動くなどの仕草は排除し、いつも目で追うように演技指導されたそうです。監督さんはもしかしたらこの映画を観てその描写に疑問に感じる人もいるかもしれないが、実際に視覚障害者の方の動作は慣れ親しんだ環境においてはとてもスムーズであり、その事は絶対に伝えたくてすごく拘ったとおっしゃってました。私もずっと以前ですけど視覚障害者の方と交流を持ったことがありますが、実際、とってもスムーズでキビキビ行動されるんですよね。なんで見えないのにそんなに動けるの?と驚いた覚えがあります。パソコンのタイピングだってめちゃ早いんですよ。だから、私もこの作品の白石さんの演技はとても自然に感じて観てたんですけど、監督さんのコメントで裏付けがとれて嬉しかったです(笑)。

犬好きならもう問答無用、泣けますよ、きっと。お涙頂戴モノと表現しましたけど、泣かせようというあざとさは特に感じませんでした。ただ純粋に描いている、そんな気持ちが伝わってきます。人に頼らず自立した人生を凄そうと決意した主人公が、プレッシャーに押し潰されそうになり、「人に頼ることは間違ったことではない。誰も一人では生きていけないんだ」ということに気付いたとき、あらためて家族や周囲の人々の愛情、優しさや思いやりといった当たり前でとても大切な存在を気付かせてくれます。お話自体はシンプルでやっぱり終盤には悲しい出来事が待ってるわけだけど、でも最後のしずくの笑顔はとても爽やかで明るくて素敵で救われました。後味もとっても心地良い作品でした。