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f803c7cd.jpg記憶モノというよりはタイムパラドックスものって感じなんですね。主人公は日記をトリガーにして失われた記憶の中にある「あの時」に戻って、愛する幼なじみの人生を救うため過去を変えようとする。しかし、歴史はそう易々と思い通りに変わらない。愛する人のために時空を飛び越えちゃうと聞けばロマンティックなファンタジーを連想しちゃうとこだけど、この物語は重いッ。どんより重くてキツかったですね。とってもスリリングな心理的サスペンスって感じでした。

+++ちょいあらすじ
幼い頃から時々記憶を失ってしまうエヴァン。彼の行動を心配した母親は病院へ連れて行き、それ以降エヴァンは治療のため日記をつけ始める。13歳のある日、エヴァンは幼馴染みのケイリーたちと悪戯をして大事故をひき起こしてしまうが、その事も彼は全く覚えてはいなかった。やがてエヴァンは引っ越すことになり、数年後、大学生となったエヴァンは、記憶を失うこともなくなっていた。しかし、昔の日記を見つけ、エヴァンの意識にある変化が起きる・・・
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作品冒頭でも表示されるだけど、「バタフライ・エフェクト」とは「小さな蝶が羽ばたくと、地球の裏側で竜巻が起こる」という、僅かな違いが後に大きな結果の差を生むというカオス理論。主人公エヴァンが現在の状況を改善するため「もしもあの時、こうしていれば」と考え、それを実行に移すと、それによって彼や周囲の人達の人生が大きく変化してしまうのだけど、それは必ずしも幸せな結果をもたらすとは限らないんですね。スゴク、巧妙な脚本、演出だなぁと感心しちゃいました。

でも個人的にはこの重苦しい雰囲気はちょっと苦手。先が読めないというか過去が読めないというか、自分が幸せになれば誰かが不幸になり、それを救おうとすれば自分に不幸になるという、このなんとも救いようのない彼らの人生は観ていてもちょっと辛かったです。

不遇な家庭環境、若さゆえの暴走、過ち。確かに人生の歯車を狂わせるには十分な要素だとは思うけど、人間ってそんなに弱いものなんだろうか?若い彼らであれば、自分自身の力でいくらでも運命を切り開けるだろうし、まだまだ人生これからの彼らなのだからそういうチャンスや出会いはいくらでもあると思うんだよね。それなのに、彼らはただなるようにしからならなくて、自分でどん底から這い上がろうとか思わなかったんだろうか?親がダメだと子供は必ず不幸になるの?子供の頃のトラウマから一生立ち直れないものなの?エヴァンが車椅子になったら彼はもう人生の脱落者?なんとなく「ミリオンダラーベイビー」のラストを思い出しちゃった。この物語の発想自体は実にステレオタイプで、観る人の固定観念や先入観を巧みに利用しているとこありますよね。ただ「ミリオンダラーベイビー」と違ってタイムスリップという荒唐無稽な要素を用いてブラックなファンタジー仕立てだから憤りを感じるほどじゃないんです。ただちょっとやるせない・・・カナ。

別にこの作品にケチをつけるわけじゃなくて、なんていうか人生について色々考えさせるものがあるなぁって感じなんです。エヴァンの心の中での自分の幸福への欲求と自己犠牲愛の鬩ぎ合いみたいなものは、とてもスリリングで主演のアシュトン・カッチャーの演技にも圧倒されましたヨ。主人公エヴァンの最後の選択はとても切ないものがありましたけど、あのラストには同時にちょっと救われたような気もします。