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18abb55e.jpg『みんなで夜歩く。 ただそれだけなのに、どうしてこんなに特別なんだろう。』

去年、この原作本を読んだとき自分でもビックリするくらい感動して泣きに泣いたんですよね。本を読んでこれだけ泣けたのはちょっと記憶にないくらいです。そんな大好きな本が映画化決定。最初は嬉しさよりも戸惑いのほうが大きかったです。それは原作に対する思い入れやイメージを壊されるといった原作モノにありがちな不安と、内容的に映画化するのが難しいんじゃないかな?という危惧からでした。でもその後、監督と脚本を私がこれまた大好きな「青空のゆくえ」の長澤雅彦監督が務め、主演も「青空のゆくえ」の多部未華子さんと石田卓也くんで、さらに西原亜希さんも出演するという事を知ってからは、あの「青空のゆくえ」の空気感ならばきっとまた気持ちのいい青春映画を観られるかもと期待度も高まっていったのでした。

出演はその他に、加藤ローサ、郭智博、西原亜希、貫地谷しほり、松田まどか、高部あい、柄本佑、池松壮亮、南果歩、嶋田久作、

+++ちょいあらすじ
24時間、一昼夜、夜通しで80キロを歩く高校の伝統行事「歩行祭」。高校生活最後の歩行祭となった甲田貴子は密かな想いを抱いて参加する。それは、一度も話したことのないクラスメイト、西脇融に話しかけるということだった。それは貴子にとって決して簡単なことではなかった。二人の間にはお互い親友にも言えない特別な秘密があったから・・・

最後の歩行祭が今、始まろうとしていた。
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前半を観ていてどうなることやらちょっと不安だったけど後半持ち直し終盤見事にまとめてくれ感動の涙で終われたので原作ファンとしては楽しめて満足できました。

前半はちょっとおちゃらけすぎかなぁ、私としては淡々と主人公二人の心情を描いてほしかったなぁ。物語は「歩行祭」という80キロの道のりを24時間かけて歩く修学旅行と体育祭を足して2で割ったようなイベントを舞台に共通のある重い秘密を胸に秘めたまま3年間を過ごしてしまった男女二人の主人公を描いていくのですが、行動的にはただひたすら歩き続けてるだけで、その中で主人公たちの様々な思いを回想や妄想(笑)で絡めていきながら、友情や恋愛など等身大の高校生らしいエピソードを数々積み重ねていくことによって、最後の奇跡的な出来事をドカーンと昇華させます。過去と現在を並行させながら登場人物の心理を深く掘り下げていくのは小説ならではの描写で、映画では難しいんじゃないかなぁと思ったら、やっぱりそうだったみたいで原作にはないようなコミカルなタッチが目立ちましたね。

こういう脚色・演出は映画だから仕方ないかなとは思ったんですけど、原作の持っている混沌としたような切なさや辛さの重々しさがやっぱり物足りないのは否めません。主人公の二人は高校生活の3年間ずっと喉の奥に小骨がひっかかってたような状態で過ごしてきました。気にしなければ何て事ないようでいてその実はすごく気になって気になって仕方なくて、本当にのびのびとした清々しい高校生活を送れたとは言い難いんですよね。そして迎えた高校生活最後の「歩行祭」。三年間、全く会話をしなかった二人は常にお互いに心の中で相手を意識し続け気持ちを詮索しあってるわけで、そんな揺れ動く気持ち歩いていく中で描いていくので、原作の前半のテンポもその歩調に合わせたものだったんですけど、映像にしちゃうとこの描写は間延びしちゃうのかもしれませんね。軽いタッチで描いてしまったことで1つつのエピソードがやや断片的になっちゃったかなという印象は拭えませんでした。

ただ、それでも私の場合は原作がみっちり頭に入ってるので自分で脳内補完しながら観ていて、それが大きなマイナス要素にはならなかったようです。なんだかんだと感情移入しちゃってってドラマが大きく転がりだす残り20キロの自由歩行からはこれから起きるであろうある奇跡の場面をドキドキしながら待ちかまえてるような心境でした。後半になってからは、私の大好きな青春群像劇。決して大きなドラマではないんだけど、今までずっと二人を遮っていた分厚く冷たい心の壁がすぅーと消えていって、二人の心の距離が近づいていく様子は、それまでどんよりして薄暗かった空が澄み切った青空へと変わっていくように清々しくてとても気持ちのいいものでした。

たぶん原作を読んでないと映画だけでは心のひだまでは伝わらないんじゃないかとは思います。この映画を観るならぜひ原作とセットで楽しんでほしいですね。原作→映画の順番でいいと思います。予告編でも主人公の重要な秘密は明らかになってるくらいだし差し支えないでしょう、たぶん。

原作ファンの私としては注文をつけるとキリがないんですよね。せめてもう少し西脇融の目線で描くことと音楽が作品に合っていればなぁとも思うし。それでも原作の素晴らしさと出演者たちの魅力がとてもキラキラと輝いてみえたのは確かなわけで、またひとつ素敵な青春映画と出会えとても心地よい時間を過ごすことができました。また原作を読み返してみたくなってしまいました。