ブログネタ
日本映画 に参加中!
ba29b811.jpg『モントリオール映画祭でグランプリを受賞』
私の場合こういう冠がついちゃう映画は一歩引いちゃうとこあるんですけど、この映画は予告編を観ていてスゴク観たかったのでした。緒形拳さんの熱演もありますけど、やっぱり題材の幼児虐待ですね。昨今の社会問題を当然意識してるんだでしょうけど、ホントに陰惨な事件が後を絶たない世の中で何か一筋の希望の光を与えてくれればと、そんな気持ちで観に行きました。

・・・素晴らしぃ!

出演はその他に、高岡早紀、松田翔太、大橋智和、原田貴和子など。

+++ちょいあらすじ
かつて学校長を務めていた松太郎は全く家庭を顧みてこず、妻をアルコール依存症で亡くし、その事を娘からも恨まれ続けていた。ある日、松太郎は自分の家を娘に譲るといって自分は安アパートへ引越、ひっそりと一人暮らしを始めた。彼の部屋の隣には母娘とヒモのような愛人の3人が暮らしていたのだが、彼らの部屋から頻繁に少女の悲鳴が聞こえてきた。松太郎は母と愛人が幼い娘を虐待していることに気がつくと、彼の心の中で何かが動き始めるのだった・・・
+++

奥田瑛二監督の渾身の作品といったところでしょうか。上映終了後、心の中で思わず拍手です。気持ち的にはスタンディングオベーションしてたかもってくらい心にズシーンとくる作品でした。

正午をちょっと過ぎた辺りの回を観たんですんが、お腹がちょっと空いていたのでポップコーンの一番小さいのを買って入ったんですよね。でも本編が始まったらポップコーンに伸ばす手がピタリと止まってしまいました。映画の空気も劇場内の空気も、そして私自身もポップコーンを食べてるような雰囲気じゃ全く無いんですよ。別に序盤早々から事件が起きるわけじゃないんですよ。主人公が家を出て安アパートへと引越て行くただそれだけなんですが、何か空気が張りつめてるような微妙な緊張感が漂ってるんですよね。未だドラマは何も始まっていないのにこの映画には絶対に何かがありそうな予感がするんです。こういう時の予感はほぼ的中するんですよねぇ。ポップコーンなんか食べてる場合じゃないんですよ。

いわゆる映像的にはオーソドックスで正統派な映画的手法といえるんですけど、緻密で丁寧な描写が俳優たちの卓越した表現力を際立たせてています。特に緒形拳さんはもうスゴイの一言ですね。簡単に言えば傷ついた初老の男性と少女が旅をしながらお互いを癒し再生していくロードムービー。母親と愛人から虐待を受けて愛情もかけられずに育った少女はとても孤独でした。かつて家族を顧みず苦しめてきた初老の男性は過去の贖罪のために少女を救おうとします。少女は次第に心を開き笑顔を取り戻していきますが、実は男性もまた彼女に心を救われていきます。

特に少女のほうは心を閉ざし大人に不信感を持っているので、ほとんど誰とも口をきこうとはしません。つまり旅をしながらも二人の間には言葉による会話らしい会話は存在しないんです。でも言葉にしなくとも次第に二人の心が通い合っていく様子が実に鮮明に繊細な心の動きが枝葉までも伝わってくるんです。極端な話、セリフが全くわからなくてもこの映画の伝えたいかなりの部分は伝わるんじゃないでしょうか。外国の映画祭で評価され喝采を浴びたのも納得です。この映画は説明的な言葉には全く頼ってないんですよね。監督らの描写力と俳優達の演技力、合わせた映画全体の表現力が見事なまでに昇華していて素晴らしいんです。

高岡早紀さんの女優としての方向転換は見事に軌道にのってあばずれな女性役では現在トップクラスといえるでしょう。汚れ役ながらも彼女も見事な存在感を放ってましたね。しかし本作で一番輝いていた女優は何と言っても主人公サチコを演じた子役・杉浦花菜さんですね。まだ小さい子にこんなにもしんどい役を演じさせて、彼女の今後の成長に悪影響を与えないかと心配してしまうくらい、親に愛情を受けず虐待されてる女の子を熱演してましたよ。彼女は自分の役を理解してたのかな?してたとしてもそれはそれで末恐ろしいですけどね。

とにかくね、こういう作品は監督らスタッフと出演者ら作り手全ての気持ちが1つになって初めて作り出せるものなんじゃないかと思います。まさにこれこそ「魂の映画」だと思いました。スゴイっ。