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956af42d.jpg山崎ナオコーラさん原作の同名小説を「犬猫」の井口奈己監督が映画化した作品です。WOWOWユーザーの中にはメイキング&プロモーションをご覧になってる方も多いんじゃないかと思うのですが、私は映画本編を楽しみにしてたので頑張って観ないようにしてました。原作は著者の名前からして気になっていたんだけど、コーラ好きに由来してると「王様のブランチ」で本人が語ってました(でも最近はそれほどでもないらしい→コーラ好き)。原作本はこのタイトルだけ見て素通りしちゃったんだけど、芥川賞候補にもなった新作の「カツラ美容室別室」も気になるとこなので、映画が良かったら読んでみようかなと思ってます。

出演はその他に、蒼井優、忍成修吾、市川実和子、藤田陽、MariMari、あがた森魚、温水洋一、桂春團治

+++ちょいあらすじ
美術学校に通う19歳の磯貝みるめは、赴任してきたばかりの39歳のリトグラフの非常勤講師・ユリから絵のモデルを頼まれ引き受けることになった。そして彼女のアトリエに連れて行かれたみるめは、言われるがままに服を脱がされてしまう。20歳も年上のユリにすっかり虜になってしまったみるめはそれから彼女と濃密な時間を共に過ごすようになっていった・・・
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シネセゾン渋谷って久々に来たけどリニューアルしたばかりらしく綺麗になってました。午後一の回なので先にチケットを買って、これまた久しぶりにマークシティのアフタヌーンティーカフェに行って大好きなグリーンソースと小海老のパスタでランチタイム。で、開場時間が近づき再び劇場に行くとチケット購入者の大行列!平日でこれなら土日はもっと混むんでしょうね。

物語には、美大が舞台になってる時点でツボにハマっちゃいました。ユリが担当しているリトグラフは私も授業で少し習ったことがあるけど、意外な色合いが生まれてくるので面白いんですよね。シュールレアリズムの世界でもあります。プリントごっこでも似たようなことは出来ます。あれってとても良く出来た家庭用オフセット印刷機なんですヨ。絵の面白さって、絵そのものだけじゃなくて画材道具の面白さっていうのもあるんですよね。

ストーリーの見所は交錯する二つの三角関係とそれぞれの人物の関係性。20歳年上のユリ先生に骨抜きにされた19歳の学生みるめと彼に想いを寄せるえんちゃん。そのえんちゃんに密かに恋心を抱くみるめの友達でもある堂本くん。この構図で面白いのがみるめもえんちゃんも自分の好きな人の事で頭がいっぱいなとこ。みるめはユリ先生のことばかり考えていてえんちゃんの気持ちには全く鈍感。でも、そんなえんちゃんも堂本くんの気持ちには全く気付いてなくて冷たい素振りをしちゃうと言う風に、自分を想ってくれてる他の人の存在に全然気付いてないんですよね。本人は気付いていなかったり、隠してたりする気持ちをスクリーン越しに観ている私には全てお見通しなもんだから、ちょっとした会話のやりとりにも彼らの心のヒダまで感じとれて、もどかしかったり切なかったりで胸がキュンキュン締め付けられちゃいます。

ユリ先生とみるめにどの時点から恋が芽生えてたのかわからないけど、気が付けば好きになってたという事なんでしょう。わざわざ言葉で確認しなくても、お互いの心の中には感じるものがあって、自然に形になっていくという事ってありますよね。私はありますヨ(笑)。韓国ドラマのように甘ったるい言葉、情熱的なセリフなど一切出てこないけど、それでも人を好きになったときの嬉しさや幸福感や切なさやもどかしさや辛さといった感情の数々がしっかり伝わってきます。誰もハッキリとは口にしなかったけど、えんちゃんの気持ちだって堂本の気持ちだって、あのもどかしさにキュンとしちゃったし、山田先生や猪熊さんの大人の優しさみたいなののちゃんと伝わってきましたよね。

井口奈己監督の前作「犬猫」も好きで、この監督さんとても個性的で味のある瑞々しいタッチで描くんですよね。おっそろしいほど抑揚がなくて平淡に見えるけど、実はそこには心の機微がしっかり描きこまれているんですよ。井口監督の作風はたぶん万人受けしないでしょう。観る人を選ぶ作品なのかもしれません。たぶん退屈だったと思う方も多いんじゃないでしょうか。評判に乗って観に行く人や、タイトルからエロいの期待してる人は注意したほうがいいですヨ。お願いですから、退屈でも上映中に爆睡してイビキなんかかかないでくださいね(実際にいたんですよ、館内に響き渡るほどのチョー迷惑な人が)、淡々とした静かな作品なんだからネ。

井口奈己監督の持ち味で魅力でもあるその一つが大胆過ぎるくらいの長回しだと思うんです。長回しが物語に時間と空間に余白を与え、その余白がスクリーンの中にいる人物の繊細な心理を際立たせているような感じかな。何て言うのか、じっくりと映画と対話しながら観ている、そういう時間の流れを感じさせてくれるんです。それは物語に現実感を得られるのと同時にあたかも同じ時間を共有してるかのような感覚を覚えちゃうんです。

ユリたちの個展に訪れたえんちゃんがソファに腰掛けるんだけど、スクリーンの右端にいて左側はずっとガラ空きな状態。そしてえんちゃんはフレームの外側にあるお菓子に手を伸ばして次から次へと食べていき、しまいには皿ごと膝の上に持ってきて食べ出します。ただそれだけの描写が淡々と続くんです。この構図はお皿のフレームインのためだったのかなぁと思うんだけど、えんちゃんにとって恋敵のユリ先生の個展にやってきてお菓子をひたすら食べまくっただけで帰ったのはえんちゃんの小さな抵抗なのかな?構図で特に印象的だったのが廊下や道を映すアングルです。遠近法を生かすような深い奥行きのアングルが多かったけど、登場人物が奥に消えていくまでしっかりと長回しで捉えていくそのなんともいえない時間の流れが映画のリズムと空気になってるんですよね。

原作にアレンジをだいぶ加えてるみたいなんだけど、とってもユルーイ彼らの日常の風景には思わずクスクスと笑ってしまうツボがいっぱいです。劇場が満席だったわりには反応少なかったけど、私はけっこういろんなとこで笑いましたよ。特に、モデルになったみるめの服を脱がせるときのユリ先生の「オーイエス」。信玄餅の食べる時の猪熊家流作法を丁寧に解説しながら食べる猪熊さん(信玄餅はすぐにわかったし、あれって必ず黄粉をこぼすんだよね)はかなりツボ。

出演者についてはもう完璧ィでしょう?永作さん、松山ケンイチくん、蒼井優ちゃんに忍成くん、温水さんに、あがた森魚さん、みんなヨカッタよ。バランスもいいしみんなそれぞれ持ち味発揮していて最高のキャスティングでしょ。なんとなく主演は永作博美さんと松山ケンイチくんの二人という印象を宣伝から受けるけど、蒼井優ちゃんも主演の一人といえるでしょう。ストーリーの後半は主人公だと言えるし、蒼井優ちゃんの表現力にはうっとり惚れ惚れしちゃいます。ホントなら出演者一人一人について語り尽くしたい心境だけど、既に長い駄文と化してるのでやめておきます。一つだけ書いておくと、なかなか主演の巡ってこない忍成修吾くんだけど、最後にちょっと美味しい思いが出来てヨカッタね。ラストのえんちゃんと堂本のシーンは微笑ましかったなぁ。

井口ワールドは映像的なごまかしが効かない分、役者の力量は推し量れちゃいやすいのかもしれないけど、個性的な役者さんほどその素材の良さが生かされるような気もします。演じてる役者たちにはかなりプレッシャーがかかるのか、それとも自然体でいられるのかわからないけど、リアルな息遣いを感じちゃうのでした。

上映が終了して外に出ると次の回もSOLD OUT。劇場まで来てガッカリして帰って行く人たちも多かったです。今後、観賞を予定されてる方はチケットを早めに購入しておいたほうがいいかもしれませんよ。

劇場を後にした私はこれまたまた久しぶりに渋谷TSUTAYAに寄って原作本を購入。どこにあるのかわからなくて店員さんに聞いたけど、映画を観たばかりの私は何の恥じらいもなく堂々とタイトルを言えました(笑)。

純愛度★★★★★