0c56ebdc.jpg以前から気になっていたこの作品。桜庭 一樹さんの直木賞受賞を機会にとりあず一度はこの作者の作品を読んでおこうかなと手にとって読み始めました。実は直木賞を受賞されるまでずっと男性作家だと思いこんでいたのは内緒です。だって小学生の頃、一樹くんという友達がいたんだもん(苦笑)。
「中学二年生の一年間で、あたし、大西葵十三歳は、人をふたり殺した。」

プロローグ冒頭、いきなりこんなショッキングな文章で始まる物語に緊張感を覚えます。でも、私はここで早くも勝手な思いこみをしちゃうんですよね。きっとこれは少女の妄想的な世界の話で実際に殺人を犯すわけじゃないよねぇと。ところが物語はどこまで読み進んでも一向に明るい兆しを見せてくれず、むしろ一層混沌とした闇の中へと突き進んでいきます。

巻末の解説冒頭にもあったけど「読む人の気持ちをざわざわさせる小説」。私もまさにそんな心境で読んでいました。澱んだ空気感は重苦しくて息苦しくて、胸の中がざわざわしっぱなしなんですよね。気持ち的に読むのがしんどくなってくるところもあるんだけど、居場所を失い浮遊する主人公の葵の心の辿り着く先と彼女を待ちかまえている運命を見届けたいという気持ちも強くて何とか最後まで読み終えました。

私はそんなに読書量があるわけじゃないんだけど、こういう感覚に陥ったのは重松清さんの「疾走」を読んで以来かなぁと。家庭での愛情を得られず、学校では仮面を被って神経をすり減らしながら友達付き合いをして、本当の自分でいられる場所を求めて彷徨う少女・葵。そんな彼女の浮遊する魂に引き寄せられるかのようにゴスロリ少女の宮乃下静香が彼女の前に現れます。一見、全くタイプが異なりそうな二人にはお互い他に人には感じることの出来ない共感点を見出して互いを引き寄せ合っていきます。しかし、それは決して少女特有の連帯感などではなく二人はあくまでも孤独な存在なんですよね。そして謎めいた少女・静香はいつしか葵を漆黒の闇の中へと誘い込んでいきます。

ミステリーでもあるからこれ以上詳しくは書かないけど、読み始めた頃はあまり現実感を感じなかった登場人物たちが次第に街で普通に見かける女の子たちのように感じられてきて存在感を増していって、鼓動や息づかい、そして流れる血までもが感触として伝わってくるようなそんな読み応えを感じる作品でした。

桜庭 一樹さんの作品ってみんなこんな感じのテイストなんでしょうか?他にも気になるタイトルがあるんだけど、この重苦しさにはちょっと躊躇うんですよね。


慟哭度★★★★