87920c47.jpg私の大好きな映画『幸福な食卓』の原作者、瀬尾まいこさんの作家デビュー作です。この文庫本には表題の『卵の緒』と『7's blood』の二つの中編作品が収録されているんだけど、どちらも面白かったです。
『卵の緒』

「僕は捨て子だ。」
いきなりこの言葉で始まる物語。私の心はほんの数秒で鷲掴みされちゃいました。

主人公は小学生の育生。母親と二人暮らし。でも育生は何故か自分は捨て子じゃないかと疑いを持っています。別に家庭が荒んでるわけでもなく朗らかな母で仲良しなんだけど育生は漠然とそんな疑問を抱いてます。物語はそんな育生を中心にお母さんの恋人の朝ちゃんや前向きな登校拒否をしている君を絡ませながら人と人との繋がりを愛情たっぷりに温かく描いていきます。

『7's blood』

こちらも人と人との繋がりを描く物語なんだけど主人公は高校生の七子と小学生の七男の異母姉弟。二人の共通の父親は他界していて七男の母親が刑務所に入るため七子の母親が七男を預かるところから物語は始まります。七子が異母弟の存在とその関係に戸惑うなか、家庭の事情によって七子と七男の二人だけで生活する日々が訪れます。七子はぎくしゃくする七男とふれ合っていくうちに心を通い合わせ、やがて七男との暮らしに母のある思いがあったことに気付いていくのでした。

『卵の緒』も『7's blood』も私の視点からするとちょっと異なる家族の風景です。でも世の中にはいろんな家族の形があると思うし、決して特殊という風には受け止めはしないけど、でも子供の立場ではどうしても周囲の友達や家族と比べてしまうだろうなと思うし、いろいろと彼らなりに苦労や悩みを抱えているんだろうなと思います。小説の後書きにもあったけど、どちらにも描かれている食事の場面というのは印象的ですよね。家庭の中の食事の場面というのはもしかしたらその家庭の幸福度のバロメーターなのかもしれません。友人との付き合いでもやっぱり一緒に食事をしていて楽しい友達というのは大好きなわけだし、一緒に食卓を囲む時間と空間はとても大切なものなのかもしれません。