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8bb4ad59.jpg警察には犯罪者の家族を保護するという役割もあるそうで、その事を『踊る大走査線』の取材過程で知った君塚良一さんがテーマに据えて脚本、監督を務め作り上げた社会派ドラマです。予告編を見てもやっぱりTV色は感じてしまうのだけど、この作品テーマにはとても興味をひかれたので公開初日に観に行くことにしました。

出演はその他に、松田龍平、石田ゆり子、佐々木蔵之介、佐野史郎、津田寛治、東貴博、冨浦智嗣、木村佳乃、柳葉敏郎

+++ちょいあらすじ
ごく普通に思えた4人家族の船村家。しかしある日、未成年の長男が小学生姉妹殺人事件の容疑者として逮捕されてしまったことから家族の立場は「容疑者の家族」となり一変してしまう。東豊島署の刑事・勝浦は犯人の妹である中学生の沙織の保護を任されマスコミや世間の目から保護するための逃避行を始める・・・
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なかなかの観応えのある作品でした。最初から最後まで張りつめた緊張感が漂い続け結局持っていたお茶は一口も飲まなかったんです。土日の鑑賞では周囲から聞こえてくるポップコーンや菓子類を食べる音もほとんど聞こえてこなかったからみなさん固唾を呑んで観ていたのでしょう。もちろん批評という点で言えばいろいろツッコミどころはあるわけだけど、その前に作品が掲げるテーマに心が掻き乱され打ちのめされあなたはどう思うのかと絶えず問われ続けているような感じでした。

犯罪者の妹と彼女を保護する刑事。被害者の存在、犯人とされた兄や事件の詳細にはほとんど触れることなく物語は徹底して社会の目から逃避行する二人の姿を刻々と描いていきます。ドキュメンタリータッチを狙っての手持ちカメラの映像は臨場感たっぶりで緊張度をなかなか緩めてはくれません。細か過ぎるくらいカット割りも目まぐるしく変化する状況に主人公たちの不安な心情を表していたのでしょう。

突然の兄の逮捕と家宅捜索。何が何だかわからないままどんどん進んでいってしまう展開も主人公・沙織の心境そのままなのかもしれません。気持ちの整理などする時間もないまま自分の意思とは無関係に周囲の物事は進んでいくのです。その中で唯一沙織が自覚出来るのは自分が極悪な犯罪者の妹というレッテルを社会から貼りつけられてしまった事かもしれません。

被害者の心情を思いやることが第一というのは至極当然な事だと思います。でも昔から犯罪者の家族が匿名での誹謗中傷、嫌がらせを受け時には命を絶った事もあるのも事実です。ネット社会となった現代ではその行為はさらに顕著となり義憤にかられた社会が一丸となって叩くのは社会による非情なイジメにも感じられてきます。悪を許さない気持ちは大事だと思うけで、それがエスカレートした先にあるのもある種の暴力かもしれません。少なくとも沙織には罪がないのだから。

ベタ褒めする気はないので書いておきますけど、当初はマスコミが悪役に描かれていたのがいつの間にかネット社会を悪役にしていて腑に落ちないんですよね。暴走しやすいのはどっちも一緒でしょって思うんだけどフジテレビ制作だけに引っ掛かるところです。序盤のほうでマスコミ関係者が犯人の写真を買いますと叫んでる場面があったけど、そういうエピソードのほうがもっと観たかったです。せっかく佐々木蔵之介さんを記者役にキャスティングしたのに過熱報道による被害や問題点にあまり焦点が当てられず肩すかしな気分でした。

出演者たちの熱演は素晴らしく社会性の高い興味深いテーマにどっしりと取り組んだ骨太な作品だったけにちょっとが出すぎてるような演出が随所で気になったのも正直なところです。

ところで勝浦のお父さんに誰かアドバイスしてほしいんだけど娘さんへのプレゼントはああいうお店だったら頼めば包み直してくれると思いますよ。


背凍度★★★★