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めぐりあう時間たち『愛を読むひと』のスティーヴン・ダルドリーの監督作品です。2002年ゴールデン・グローブ賞作品賞を受賞し主演女優のニコール・キッドマンがオスカー受賞など多くの受賞歴を持つ作品です。以前から観ようと思いつつ機会がなくて録画保留にしてたんですけど、『愛を読むひと』と同じスティーヴン・ダルドリー監督という事で思い出したように鑑賞しました。

出演はその他に、ジュリアン・ムーア、メリル・ストリープ、スティーヴン・ディレイン、ミランダ・リチャードソン、ジョージ・ロフタス、ジョン・C・ライリー、トニ・コレット、エド・ハリス、アリソン・ジャネイ、クレア・デインズ、ジェフ・ダニエルズ、アイリーン・アトキンス、リンゼイ・マーシャル、リンダ・バセット、クリスチャン・コールソン、マーゴ・マーティンデイル、ダニエル・ブロックルバンク、ジャック・ロヴェロ
冒頭からパズルのように異なる時代のシーンが断片的に描かれ、これは気合いを入れて観てないと混乱するかもと集中力のスイッチを入れました。複雑な話なのかなと思いましたけど、それぞれのエピソードの関連性はわりとすぐに察しがついたのでその点では戸惑うことはなかったんですけど、心を病んでるような登場人物たちの物語はその心のひだまでとらえるのがなかなか難しい奥深い作品でした。

まずニコール・キッドマンが女性作家ヴァージニア・ウルフを演じていたことになかなか気づけませんでした。「アレ?ニコールってこの人だっけ?」というくらいの別人ぶりでしたよね。なんとなくそうかなと思っても確信出来ないんですよね。

物語は3つの時代を舞台にそれぞれ悩める女性主人公の姿を小説『ダロウェイ夫人』をキーアイテムに交錯させながら重層的に描いていきます。

1923年、ロンドン郊外。
病気療養中の作家ヴァージニア・ウルフ(ニコール・キッドマン)は夫レナード共にロンドン郊外のリッチモンドで暮らしながら『ダロウェイ夫人』を執筆しています。物語冒頭ではヴァージニアが川で入水自殺するようなシーンが彼女がかなり苦悩し鬱な状態なのが想像されます。そしてこの時点で早くもこの物語が重苦しい雰囲気に包まれていくことを暗示するのです。

1951年、ロサンジェルス。
妊娠中の主婦ローラ・ブラウン(ジュリアン・ムーア)は夫ダンと一人息子リッチーの3人家族。夫は優しく暮らしぶりもまずまずだったが夫の理想的な妻でいることに疲れを感じている。ダンの誕生日に息子とケーキを作ろうとするが上手く作れないことに苛立ちストレスを募らせていきます。そして彼女は突然何かを思い立つと息子を隣人に預け大量の薬瓶を持ってホテルにチェックインしてしまいます。

2001年、ニューヨーク。
編集者のクラリッサ・ヴォーン(メリル・ストリープ)は、友人であり作家のリチャードの受賞パーティーの準備に奔走しています。クラリッサはリチャードがかつて自分につけたミセス・ダロウェイのニックネームに取り憑かれるようにリチャードの世話に勤しんでいますが、その陰では自分の感情を押し殺していたのでした。

物語はこの3つのエピソードで構成されているのですが、共通して登場するのはヴァージニアが執筆した『ダロウェイ夫人』。そして「花」と「女性同士のキス」と「パーティの準備」なども。異なる時代、異なる登場人物たちによるドラマの中でそれぞれのキーアイテムやシチューエーションが繋がりを見せて行く辺りが原題『THE HOURS』やこの邦題の意味するところなのでしょう。小説『ダロウェイ夫人』の内容については劇中でちょっとだけ触れられますけど詳しいところまではよくわかりません。ある屋敷の女主人のお話みたいでしたね(もしかして何か見逃してるかも)。

そして3人の主人公にも共通するところがあり彼女たちはそれぞれ何かの事情から抑圧されたり人生を縛られたりして思うように生きられず、内面に大きなストレスを抱え心を病んでいます。特にヴァージニアとローラの精神状態はけっこう深刻で、言葉は悪いかもしれませんが病的なそれもイヤな意味での雰囲気が充満してるんですよね。前述のようにあのニコール・キッドマンの美しさも輝きも精彩も全く感じられないのですから、演技力としては確かに賞賛に値するものなのかもしれません。ただドラマとしてはそれがあまりに迫真過ぎて登場人物に気持ちを寄り添えなかったりもするんですよね。

そんなわけでドラマ的にもワタシ的にも感情が沿いやすかったのはメリル・ストリープの演じたクラリッサで、忙しくも献身的に日々を過ごしているかにみえた彼女が突然心の内を吐露し始め嗚咽する姿に驚きました。人の気持ちなんてそう簡単にわかるものではないし、心の奥底に押し込んでしまいこで蓋をしてしまってるような気持ちには気づいてあげる事すら出来ませんよね。ストレスを程よく発散出来ればいいのでしょうが、内に溜め込んでしまった先には彼女たちのような結末があるのかもしれません。

決して楽しい映画ではないし、深いところまで理解するのも難しかったのですが、劇中で発せられるセリフの数々がチクチクと突き刺さってくるような切なくて心が痛くなるような作品でした。


心理度★★★★