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息もできない日本では東京フィルメックスで最優秀作品賞と観客賞を受賞したこともあって評判も急上昇。たしか3月の下旬頃から公開が始まっていたと思いますが、よく行くシアターでも上映予定になっていたのでこれまで鑑賞保留してたので観るのが待ち遠しかったです。監督のヤン・イクチュンの長編映画デビュー作であり初主演作品でもあるという渾身の作品です。

出演はその他に、イ・ファン、チョン・マンシク、ユン・スンフン、キム・ヒス、パク・チョンスン、チェ・ヨンミン、オ・ジヘ

+++ちょいあらすじ
友人のところで借金の取り立て屋として働くサンフンはそのあまりの粗暴さに仲間たちからも怖れられているほどだった。サンフンの幼い頃に父の家庭内暴力が原因で母と妹が亡くなり、服役して出所してきて父をサンフンは今も憎み続け金銭的な面倒を見ながらも容赦なく殴りつけもしていた。そんなサンフンがある日通りすがりの女子高生とトラブルになり殴りつけてしまう・・・
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遅まきながら観に行ってよかったです。とても荒々しい作品でしたけど、登場人物たちの息遣いが生々しいほど感じとれ傷つき彷徨う心はそのか細いひだまで繊細に描かれていきます。頭であれこれ考えるというよりは映画の中の魂を感じとる作品と言えるかもしれません。それにしてもシーバル、シーバル、シーバルっ(笑)。韓国映画ではお馴染みの相手を罵倒するこの汚い言葉ですけど、この劇中でいったい何度発せられたんでしょうね。たぶん韓国映画史上最高記録なんじゃないかと思います(笑)。


これは「暴力」をテーマにした物語です。でも決して暴力の野蛮さを楽しむようなものでも暴力の怖さに恐れるようなバイオレンス映画とは違うんですよね。暴力でしか自分を表現出来ずコミュニケーションがとれない主人公がその暴力のもたらす悲しみに打ちひしがれながらも、運命的な出会いをきっかけに愛情の存在に気付き始めそれまでの荒みきった彼の心が少しずつ和らぎ変化を遂げ再生していく人間ドラマです。

友人マンシクが営む取り立て屋で働くキム・サンフン。とても冷酷で粗暴なサンフンは借金の取り立て屋としては有能だったがその暴力は時に仲間にも向けられることもありまるで血に飢えた獣のように理性も感じられない凶暴性は恐れられていました。そんなサンフンがある日道を歩いていて吐いた唾が通りすがりの女子高生ハン・ヨニにかかってしまいます。怒って文句を言い平手打ちをしてきたヨニをサンフンは殴り返しますが、不思議なことにヨニはサンフンを恐れず治療費を要求し、サンフンはその意外な行動にヨニに興味を持つのです。

サンフンが暴力的なのは幼少時代の父の家庭内暴力に起因しています。父の暴力によって妹は殺され母も間接的な原因で亡くなってしまったのです。それはサンフンにとって大きな心の傷となり服役し出所してきた父に対しても憎悪の感情しか抱けないでいました。一方のヨニも母を亡くし傲慢な父親と暴力的な弟との生活に日々悩まされていて、二人は特にその事実を語り合うことはしませんでしたけどお互いのトラウマを自然に感じとり心を導かれるように引き寄せ合っていったのでしょう。

暴力という環境で育ち暴力の連鎖から逃れられない彼らは同時に家族の愛情にも枯渇しているんですよね。愛情を受けてない彼らは誰かを愛することも自分を愛する事も知らずにきたのかもしれません。姉ヒョンソにお金を渡したり甥ヒョンインにお菓子など買い与えていたのはたぶん気持ちを伝える術を他に知らなかったからなのでしょう。サンフンがヨニに心を開きうちとけていくことでヒョンソとヒョンインに対する態度も変化しやがてそれは父親への赦しへと繋がっていきます。

人間は誰もが優しさの種を持っているけどそれを大きく芽生えさせるのは他の誰かの優しさや愛情なのかもしれません。暴力だけが全てだったようなサンフンに少しずつ、少しずつ人間らしい感情が芽生え始めていったとき、彼の不遇な家庭環境はとても辛いものでしたけど世間は決して冷たいばかりじゃない、人間は時として過ちを犯してしまうけどやり直すことも出来るんですね。父を救うために献血をし、そしてヨニの膝枕で泣き崩れたサンスンの姿を目にしたとき涙が頬を伝っていました。

それだけにあの結末は辛いものがありました。そういう世界に身を投じてきた者の、暴力という日常の中で生きてきたゆえの宿命だったとしてもあまりに無慈悲で酷な出来事のように思えました。


人間度★★★★