告白Book原作小説を読んで映画を再鑑賞してきました。いつもなら、読書の感想と映画の感想は分けて書いていますが、今回は同時に両作品に接しているのであえてごっちゃにしてみます。
原作小説を読んで先ず思ったのは映画の作りの良さですね。再実感です。この原作の内容をあんな風にドラマとしてしっかりとしたストーリーの骨格にした上でとても素晴らしい映像で表現してみせた中島哲也監督はホントに凄いです。原作の必要な部分、不必要な部分を選択し再構成した脚本と演出は原作の魅力を引き出しさらに映画の魅力を存分に与えています。原作の雰囲気からは音楽なんて聞こえてこないのにあの絶妙な選曲はセンスの良さに感心しちゃいます。

そして松たか子さん、あなたは間違いなく天才女優です。原作の主人公・森口悠子に魂を吹き込んだだけじゃなく、この人物が持つ様々な感情を鮮明なまでに際立たせているんですね。序盤の30分近くに渡る森口先生の告白シーンで物凄く緊張感を張り詰めさせて観る者をあっという間に引きずり込んだのは、松たか子さんの巧みな演技力があってこそで、特にあの独特な声のトーンやセリフまわしは、森口先生の告白が修哉や直樹、美月らの心をずっと支配してしまったように、この物語を最初から最後まで覆い尽くしているのです。

原作では、森口悠子、北原美月、下村直樹、渡辺修哉らの告白が刻々と綴られていきます。直樹の母の優子の告白は母の殺害事件の後に直樹の姉が母の日記を読む形で描かれていました。森口先生の娘・愛美が殺された事件と関連した出来事がそれぞれの視点で刻々と重層的に語られていく様子はとても読みごたえがあります。別々の告白でありながらも一つの事件を中心軸にして登場人物たちの心は複雑に絡み合っていて群像劇としても際立つのです。

映画では森口先生が実際に牛乳に血液を混入したのか?そしてラストの爆弾は本当に爆発させたのか?という点で観た方々によって意見がわかれてるようですが、原作を読むと牛乳の一件は森口先生の仕掛けた罠が予想外の出来事によって左右されていたようです。もちろん誰もが本当のことを語っているという確証はありませんし、もしかしたら嘘かもというところがこの作品に深みを与えてもいるわけで映画はそこをさらに強調しているのが面白いんですよね。私は牛乳も爆弾も森口先生のフェイクじゃないかなと思っています。子供たちのいじめのように法には触れないようにして精神的に追いつめていく大人ならではの狡猾な狙いだったんじゃないかと。本当にやってしまったらあの子供たちと同じレベルに成り下がってしまいますもんね。映画に関してはどちらともとれる演出にしたことによっと想像が膨らんでそれもまた面白いですし、あの最後のセリフ「なぁんてね」が実に物凄いインパクトを与えながら幕引きをすることで、その後もしばらく心を縛り付けてしまうのでしょう。

この作品はたんに少年犯罪を描いているわけじゃありませんよね。現実社会における学校でのいじめや犯罪などそんなのはいまどきあたり前というのを前提にした上でそこからさらに踏み込んだ世界を良心や希望といった救いにも頼ることなく追求していった物語なんじゃないかと思います。法に守られ学校に守られそして親に守られる過保護の子供たちに愛娘を殺された母親のこの復讐劇は現代社会への警鐘ともいえるでしょう。


堪能度★★★★★


<2010.11.26 追記>
初見時の感想日記はこちら