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東京島直木賞作家の桐野夏生さんの同名ベストセラー小説を映画化したサバイバル・エンタテインメント・ムービー。だいぶ前からシネコンへ行けば必ずと言っていいほど予告編を目にしてきましたが、ここ最近はTVでもたくさんスポットを見かけるようになりその宣伝量からも意気込みが伝わってきて期待も高まってました。日本アカデミー賞最優秀主演女優賞を受賞した木村木村多江さんをヒロインに23人の若い男たちとの無人島でのサバイバル生活を描いていく物語です。

出演はその他に、柄本佑、木村了、染谷将太、山口龍人、南好洋、結城貴史、清水優、阿部亮平、テイ龍進、趙民和、石田佳央、吉田友一、塩見大貴(、中村無何有、松川貴弘、保科光志、藤川俊生、サヘル・ローズ、古藤ロレナ、鶴見辰吾
監督: 篠崎誠

+++ちょいあらすじ
清子と隆は船で夫婦ふたり旅の途中で嵐に遭い無人島に漂着する。日に日に弱っていく夫に対して妻の清子は逞しく意外な適応能力を発揮していく。そんなある日、過酷なアルバイトから逃げ出してきたという16人の若者たちが島へ漂着。無人島でただ一人の女性として周囲からもてはやされ東京島のトキとして楽園生活をエンジョイする清子でしたが、ふとした出来事からその状況が変わりはじめ・・・
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私が想像していたのとはだいぶ雰囲気の違うサバイバル・ムービーでした。逆に言えばそれはこれまでにはなかった感じの新鮮さでその点では楽しめたわけなんだけど、無人島でのサバイバルなお話にしては何だかリゾート気分が漂うのが不思議です。

もっとギラギラした空気の中でガツガツした人間たちのドラマが描かれていくのかと思っていたんですけど、この物語の主人公で無人島で唯一の女性である清子がなんだかんだで一番貪欲でガツガツしてましたね。「ここへ来てお前だけが太っている」というワタナベのセリフが象徴的なように、この物語は無人島でただ一人の女性として特別扱いを受けながらも強かに時には人を欺いて生き抜こうとするヒロインの姿を描いていくのです。

夫との旅行中に船が嵐に巻き込まれ無人島に漂着した清子。そこへ与那国島でのバイトから逃げ出してきた16人の若い男たちが漂着しこの無人島を東京島と名付けコミュニティを形成していきます。夫の隆が不慮の事故で亡くなると腕っ節の強い乱暴者のカスカベが清子の夫となり牛耳りだしますが、そこへ新たに密航を見つかり放り出された6人の中国人たちも漂着していたことがわかり不穏な空気が漂い始めたと思った直後、カスカベも崖下に転落死してしまいます。

ここから清子を巡っての男たちの欲望まみれの駆け引きが繰り広げられていくのかと思いきや、皆さんもしかして今流行りの草食系男子?なんと彼らは清子の夫を定期的にくじ引きで決めていくという提案をしてきたのです。争いを嫌い穏便で平和な方法を選択した彼らに清子は歯がゆい思いをしつつも従わざるをえませんでした。

年齢はちょっといっててもこの島でただ一人の女性ということで若い男の子たちからちやほやされてきた清子でしたが、彼らの平和的な選択によって東京島のトキならぬ女王様扱いの日々も終息してしまい、逆ハーレムのような状況に逆上せていた清子もガッカリしてしまいます。安住を求める彼らに対して中国人たちはと言えば少人数ながらも逞しく生活力があり、この島からの脱出を強く願う清子は次第に中国人たちの強いサバイバル能力に惹かれていくのです。

無人島といってもサバイバル生活における知識も多少は持っている上で安定した食料と水が得られ最低限でも日々の生活が保たれていれば過度なストレスもたまらないし飢餓感を感じるような場面は全くといっていいほどありません。彼らのコミュニティは文化的で理性的な秩序があり選出されたリーダーのもとで話し合いも行われ目立った争いごとも起きません。となれば満たされない男の子たちの性欲というのが争点になりそうなものですが、この作品はそこに点火しないんですよね。

無人島でのサバイバル生活というわりには必死で生き抜くようなスリリングさとは程遠いようなお話なんですが、その中でこの島から何としても脱出したい一心で日和見な行動をして立ち回るヒロイン清子の姿が鮮烈な印象を与えてくれるのです。この映画の面白さはヒロイン清子のキャラと彼女の行動によって変化する自身の立場と周囲との関係性に尽きるんじゃないでしょうか。なので映画を観ているぶんにはそれなりに楽しいんですけど、そのわりに満足感を得られるようなドラマとしての観応えは感じられなかったんですよね。

しかもラストはちょっと迷走気味?後日談的な10年後のエピソードって必要だったのかな?あれで作品全体の印象も変わってしまうことになるのですが、あの後清子は救助を呼ぶような連絡も何もしなかったということですよね?そして無人島では日本人と中国人、その他の人たちも同じ共同体として運命を歩んでるの?よくわからない結末ですよね。ワタナベがあの場にこなかったのも謎。

思うに物語には面白くなりそうな要素がいろいろ仕込まれているわりにはその要素が期待する方向には生かされず、気分的には盛り上がれそうなのに盛り上がれなくて、映画に上手く乗っていけないところが昇華不良に感じてしまうのでしょう。なんだかもったいないですよね。

HERMESのスカーフのなんとも贅沢な使い方が文明に毒された現代に生きる私には一番印象的だったかも(笑)。


必死度★★★