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阪急電車 片道15分の奇跡有川浩さんの原作小説『阪急電車』をこれが劇場用映画デビュー作となる三宅喜重さんが監督を務め映画化した作品です。原作読者ならわかると思いますが、このお話は同じ電車にたまたま乗り合わせた人々が日常の風景の中で噛み締めるほろ苦さやふとしたことから得られる幸福など人生の機微をの数々を描いていく小さな物語の連結です。その魅力を大事にすれば映画もおそらく小さいままだと思うので、散歩を楽しむような気持ちで観に行きました。

出演はその他に、南果歩、谷村美月、有村架純、芦田愛菜、小柳友、勝地涼、玉山鉄二、高須瑠香、安めぐみ、鈴木亮平、宮本信子、相武紗季、大杉漣、黒川芽以、森田涼花
監督:三宅喜重

+++ちょいあらすじ
OLの高瀬翔子は会社の同僚の羽田健介と三年間の交際を経ていよいよ結婚することになったが、健介は翔子がマリッジブルーの最中に後輩女子と浮気をしさらに妊娠させてしまう。彼女と結婚するから別れてほしいという健介。彼女が差し出す母子手帳に妊娠は寝取った後輩の強かな策略であり健介はまんまとそれに引っ掛かった情けない男なんだと見抜いた翔子は、別れてあげてさらに婚約不履行で訴えないかわりに二人の結婚式に招待するよう約束させる・・・
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原作は大好きで何度も読み返してセリフを暗記しちゃうほど熟読してしまったので、もしかすると映画は期待ハズレになるかもとけっこう不安でした。そういう観点で言うと原作のほうが物語の質としては断然いいんですよね。と、序盤辺りではかなり強くそう思っていたのですが、次第に原作とは違う映画ならではのアレンジや脚色の巧さが感じられてきて映画版としての出来栄えに感動しちゃいました。すごくヨカッタです。気持ちよく泣けちゃいました。

原作では最初と最後を飾った征志とユキのエピソードがざっくり省かれてしまってるんですね。実は映画ポスターを見ていて二人にあてはまりそうな出演者がいないなァと思っていたので、やっぱりなと。あの図書館での出会いをきっかけにした恋物語は有川浩さんならではのエピソードだっただけに残念でしたけど、いきなり結婚式に討ち入りする翔子の話から入るのインパクトがあるだけに映画的に正しいんだと思います。

ハッキリ言ってこの映画には原作のように情緒や情感、登場人物たちの心理や機微をじっくり味わうような深い味わいはありません。テンポが良すぎてちょっと忙しく感じるくらい。でも考えてみたら原作は自分の想像の世界で各駅ごとにゆっくりドラマを描けますけど、実際にあの短い乗車時間で各エピソードを収めるなんてムリな話なんですよね。もしそのまま全部描いていたらあの電車は何往復しちゃうことか(笑)。

なので原作では電車内でのエピソードを車外のシーンに変えたり、原作にはないシーンを加えたりしているわけですが、それがけっこう原作とは違う映画ならではの味わいになっていて楽しめた気がします。例えばショウコちゃんのくだりは原作では翔子とのホームでのやりとりしかないのですが、ショウコちゃんにも焦点を当てたことで原作では泣かなかったのに少女の切なさと翔子に勇気づけられた姿に泣けてしまいました。原作でも胸が締め付けられるエピソードでしたけどこの劇中では感情揺さぶられ度のピークポイントで「ガンバレっ!ショウコちゃん」と思わず抱きしめてあげたくなりました。

玉山鉄二さんが演じた悦子ちゃんの彼氏のアホ会社員(原作では名前は出てこなかったけどタツなんとか?でしたっけ?)が時江さんの旦那さんの若かりし頃に似てるなんてくだりは原作にはないんですけど、あれも何気にホッコリするエピソードでしたね。宮本信子さん演じる時江さんは原作でも毅然とした素敵な御祖母サマでしたけど、この時江さんには思わず「カッコイイ」を連発してしまいました。谷村美月さん演じる美帆ちゃんは原作よりも可愛い印象でむしろ好感を持ってゴンちゃんと呼びたくなってしまったし、勝地涼くん演じる軍オタ&パンクの圭一くんもつられて好感度アップですよね。芦田愛菜ちゃん演じる亜美ちゃんに関してはもはや何も言うことはありません。天才子役。

翔子とミサのエピソードは原作だともっと長めにあるんですけど、だいぶ省いちゃってました。でもそれで正解だったと思います。というのも中谷美紀さんも戸田恵梨香さんもキャラが立ち過ぎなんだもん(笑)。中谷美紀さんの演じる翔子はあれ以上目立つと逆に好感度が落ちて同情されにくそうな気もします。元婚約者と寝取った女(原作ではどちらも名前はでてきませんでしたが、結婚式場に羽田家、小峰家と表記されて新婦はたしかヒナコって友人が呼んでましたね)をもうちょっと人間的にランクを落としても良かったかも。原作よりも翔子の討ち入りは気合いが伝わってきて怖かったです(笑)。一方、戸田恵梨香さんはというとあんなDVD男カツヤなんてあなたが本気になればそんな男一蹴出来るでしょ?ってイメージが(笑)。でも南果歩さん演じる伊藤康江とのエピソードは良かったですね。

原作はそれほどボリュームがあるわけじゃないですし、そのまま映画化するのも難しかったと思うのですが、観終えてしまえばなんだかんだといい脚本だったなァと思いました。で、気になってエンドロールのクレジットを見ていたら、何と担当してるのは岡田惠和さんじゃないですかッ。さすがは名脚本家。

まぁ映画評としてはいろいろあるとは思いますけど、この映画を楽しもうとするのであれば前向きに原作とセットで味わうのがベストでオススメかと。中洲の「生」の文字なんて原作を読んでいないとさっぱり意味不明でしょうけど、あれは原作へのオマージュと原作ファンへの心のこもった贈り物ですね(嬉)。

機会があればもう一度劇場で観ておきたいです。


感動度★★★★☆