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マイ・バック・ページ私の大好きな『リンダ リンダ リンダ』その他いろいろの山下敦弘監督が実話ベースの社会派作品を手がけたというだけでもちょっと驚きでしたけど、その主演が妻夫木くんに松山ケンイチくんという日本映画の若手二大ビッグスターというのもまた驚きで、いったい何がどうなってこんなメジャー級作品を手がけることになったのでしょう?しかし、山下敦弘監督といえばリアリズムの達人ですから彼独特の緊張感あふれるドラマを楽しみに観に行ってきました。

出演はその他に、忽那汐里、石橋杏奈、韓英恵、中村蒼、長塚圭史、山内圭哉、古舘寛治、松浦祐也、青木崇高、山本浩司、山本剛史、中野英樹、菅原大吉、康すおん、中村育二、山崎一、あがた森魚、三浦友和、早織
監督:山下敦弘

+++ちょいあらすじ
1969年の日本。 反戦運動や全共闘運動が激化する中、東大では安田講堂事件が勃発し警視庁と学生たちの激しい攻防の末に陥落。時代は一つの節目を迎えつつあった。東都新聞の週刊誌記者として働く東大卒の沢田雅巳は理想に燃える若者だったが、現実は程遠くなかなか思うような記事は書かせてもらえず不満を募らせていた。そんなある日、先輩記者・中平の紹介で活動家・梅山と接触する・・・
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これは観応えのある骨太な作品でした。これまでの山下敦弘監督作品と比べてもかなりの重量級です。こんな社会派の映画だって撮れるんだぞという思いも伝わってくる渾身の力作と言ってもいいでしょう。

沢田も梅山も生まれてくるのが少しだけ遅かったのかもしれません。もう少し早く生まれていれば激動の時代の本流に乗って彼らがそれぞれやりたいことをもしかしたら実現出来たのかもしれません。梅山は劇中で誰かが言っていたようにしょせん偽物、似非革命家なのでしょう。東大全共闘議長の唐谷や京大全共闘議長の前園勇とは明らかにモノが違いました。しかしそれでも沢田は梅山の思想に傾倒し結果的には騙されてしまうのです。それはやっぱり梅山に何かしら惹きつけるものがあったからで、それはおそらく唐谷や前園とも共通するものだったのではないでしょうか。

というのも梅山が暴力という強硬手段に正義を見いだして暴走し周囲が見えなくっていく状況は違う作品ですけど『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程』の連合赤軍の姿とも重なってくるんですよね。主義主張や手段は違っても彼らが蜂起していったその動機の部分には何か共通するものがあるような気がしてなりません。この映画は社会派といっても政治的なものをテーマにしているのではなく、この時代ならではの社会への不満という大きなエネルギーを抱えながらその行き場を失い理想と現実の狭間で彷徨い疾走する若者たちの姿を映し出すエモーショナルな作品と言えるでしょう。

きっとこういう映画はリアルにこの時代を体験してさらに主人公たちと同世代だったりすると、また感慨深いものがあるのでしょうね。でも主演の妻夫木聡くんも松山ケンイチくんも、そして山下敦弘監督もこの時代を知らないもっと後の世代なわけで、私は彼らを通してこの時代をリアル感たっぷりに肌で感じとっていくのでしょう。

この作品からはこの時代特有のいろいろな香りが入り混じる独特の空気感が客席にも充満していきます。全共闘や大学紛争とかこういう映画や本などで見聞きする程度でしか知らなくて実際にそれがどういうものかはよく知りませんが、でも私が物心ついた頃にもこの時代の名残みたいなものは散見出来たので何となく記憶の断片と重なるところがありますし、もしかするとそれらはこの映画の中で描かれていた時代の残骸みたいなものだったのかもしれませんね。

ところで山下敦弘監督といえば長回しを用いた繊細なタッチで登場人物たちの心をリアルに映し出していくそんな作風が印象的でしたけど、今作では長回しもありますが一方でカット割りも細かく、固定カメラでドッシリズッシリ絶えず腰を据えた構図が印象的で、また監督の描ける幅の広さを感じるものでした。

倉田さんの「泣きたいときにきちんと泣ける男がいい」に強く共感です。
ところで年下の松山ケンイチくんのほうが昭和の男っぽく感じるのは気のせいでしょうか?(笑)


昭和度★★★★


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