ブログネタ
日本映画3 に参加中!
大鹿村騒動記阪本順治監督と原田芳雄さんがタッグを組みさらに阪本組と言われる常連俳優たちが集っての長野県の山村に300年以上も伝わる「大鹿歌舞伎」をモチーフに描かれる群像喜劇です。予告編を目にした時にもこの顔ぶれはスゴイなぁと思いましたけど、それはたんに人気スターを集めたのとも違う一癖も二癖もある個性派実力派揃いということで、このメンツならきっと面白いことをやってくれるんじゃないかと楽しみにしてました。

出演はその他に、松たか子、佐藤浩市、冨浦智嗣、瑛太、石橋蓮司、小野武彦、小倉一郎、でんでん、加藤虎ノ介、三國連太郎
監督: 阪本順治

+++ちょいあらすじ
南アルプスの懐にある山村・大鹿村で300年異常の歴史を持つ伝統行事「大鹿歌舞伎」がもうすぐ本番を向かえようとしたある日、村には台風が大型の台風が接近しつつあった。そして「大鹿歌舞伎」の主人公・影清を演じる村歌舞伎の花形役者の風祭善の身はさらにもう一つの台風に見舞われようとしていた・・・
+++

期待通りというかこういう映画であって欲しいなと思った通りの作品でした。実力派の名優たちが揃ったならではの味わいが堪能出来ました。こういう役者たちが集まる映画だと監督さんもいつものお仕事より楽だったのではないでしょうか?イチイチ細かい演出なんかつけなくても役者さんたちが自然に勝手に物語を転がしていけば、思い描く作品にも自然と出来上がっていくような気もします。

善にとってのもう一つの台風。18年前に幼馴染みで友人の治と一緒に駆け落ちしその後に善のもとに離婚届けを送り音信不通だった貴子が、治と一緒に大鹿村に帰ってきます。それだけでも小さな村は十分騒動になるのですが、貴子は認知症のようなものを患っていたことから話はさらにややこしくなるのです。貴子の記憶は曖昧になり治を善と呼ぶようになったり時おり奇行に走ったりと治もすっかりまいってしまい仕方なく善の所へ連れ帰ってきたのでした。

誰よりも信頼をしていた妻・貴子と幼馴染みの治の裏切りは善にとっては許し難いことでしたけど、さすがに貴子の現状では怒るに怒れません。また治にしてもお調子者ながらも彼も貴子の状況に疲弊困憊し悩んだ末に帰ってきたので、一通り文句を言って怒りの矛を収めてしまうのです。現実的に考えれば本来とてもシリアスな状況にあるんですけど、演じている原田芳雄さん、岸部一徳さん、そして大楠道代さんの掛け合いが阿吽の呼吸とも言うべき見事な芝居で笑いを振りまいてくれるのです。この3人の芝居だけでも観る価値のある映画じゃないかと思いますが、その3人を盛り立てるように支える周囲の人々もいい味を見せてくれるんですよね。

小野武彦さんが演じる旅館の主が言うように「悲劇のあとには喜劇」というのがこの映画そのものなのかもしれません。村歌舞伎が縁で夫婦となり愛した妻・貴子が裏切った挙げ句に再会した彼女はまるで別人です。しかし善は貴子の世話に振り回され困惑しながらも面倒をみながら数日後に迫る彼の生き甲斐の「大鹿歌舞伎」の成功を目指すのです。

これはいわゆるご当地映画というもので、現地の関係者や住民たちがエキストラなどでも多数参加されてるようで、ドラマは創り物でありながらもどこかセミドキュメンタリーのような香りを漂わせます。その本命と言える劇中劇「大鹿歌舞伎」は手作り感たっぷりながらも味わい深く魅せられてしまいましたが、その歌舞伎上で善と貴子の夫婦の再生していく姿が感動的で歌舞伎のクライマックスと共に昇華していく様子に心打たれてしまいました。

群像劇好きとしては周囲の人物についてもエピソードをもっと色濃く描いていけばより作品全体の厚みにもなって良くなったように思いますが、それこそ細かいことなのかもしれません。映画としては小振りでしたけど題材自体が小さな村の小さな歌舞伎ですから、むしろこの小ささが味わいとも言えるかも。そもそもストーリーどうこうというよりも登場人物たちが織りなすドラマを楽しむ作品なのかもしれません。彼らの生き生きとした躍動感にあふれ笑いと涙を楽しめる人情喜劇でした。

善のお店「ディア・イーター」の看板って「ディア・ハンター」のパロディですよね(笑)。それと、ふと気付いたんですけど、三國連太郎さんと佐藤浩市さんが親子共演していたんですね。といっても一度も絡んではなかったですけどね。原田芳雄さんのご回復とご健康、そしてさらなるご活躍をお祈りしております。


喜劇度★★★★


<2011.7.19追記>
とても悲しいことに原田芳雄さんが逝去されました。残念ながら本作は遺作となってしまいしたが、最後にご自身が企画段階から尽力された主演作が素晴らしい魂のこもった渾身の作品でありそれを鑑賞し楽しめたことをとても幸せに思います。謹んでご冥福をお祈りいたします。