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アントキノイノチさだまさしさんの同名小説を『感染列島』の瀬々敬久監督が映画化した作品です。先日ドラマスペシャル版が放送されたんですが、うっかり見逃してしまいました(悔)。高校時代のある出来事をきっかに心を閉ざしてしまった若者が遺品整理業という仕事を通じて生きることと向き合い成長していく姿を描く物語です。「死」がテーマでもあり予告編からして何やら重苦しそうな予感ですけど、最近の作品で演技の幅の広がりを感じさせる岡田将生さん、榮倉奈々さんの二人の主演作ということもあって楽しみにしてました。

出演はその他に、松坂桃李、鶴見辰吾、檀れい、染谷将太、柄本明、堀部圭亮、吹越満、津田寛治、宮崎美子、原田泰造
監督:瀬々敬久

+++ちょいあらすじ
高校時代のある出来事をきっかけに酷く精神を患ってしまった永島杏平はその治療を終えて父の紹介で遺品整理業クーパーズで働き始める。先輩社員・佐相と久保田ゆきと共に初めての仕事に向かった先は死後1ヶ月経って遺体が発見された部屋だった。最初は誰もが怖じ気づくというその現場で黙々と仕事をこなす永島に佐相は驚くが、彼の内側では過去に体験した「死」と再び直面するのだった・・・
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ちゃんとしよっと。ちゃんとしっかり生きていかなきゃ。ホントにホントに。観終えて真っ先にそう思いました。上映終了後も心の震えがしばらく止まらないようなそんな気持ちになる作品でした。もう号泣ゥです。

高校時代の人間関係から重度のうつ病になってしまった永島杏平はその後療養生活を経て父の紹介で遺品整理業者で働き始めます。様々な事情から行うその作業は故人の生きた証と亡くなった現実の両者に直面することでした。辛い過去から逃げ心に蓋して生きる永島杏平は自分と同じように過去の体験に苦しむ同僚の久保田ゆきと出会い彼女の胸のうちに触れ、そして遺品整理業の意義を理解していく中で過去と向き合い再生への道を踏み出していきます。

松竹映画ですがWOWOW FILMも製作に参加しているのでWOWOWで放送されていたプロモーション番組を観てこの映画を観に行きました。番組といっても15分ほどで予告編、メイキング、インタビューくらいの内容ですが、劇場予告編よりももっと内容に踏み込んでいて、先にネタバレして失敗したかもと思っていたのですが、本編はもっと深く濃いドラマでしたね。二人の主人公、永島杏平と久保田ゆきのとても深い心の傷と現実と向き合って生きていく苦しみを受け止めて理解するにあたっては、今回はその予備知識が役立ったかもしれません。例えば永島杏平と松井との登山中の出来事は終盤で描かれますが、最初からその事実を知った上で観ていたことでより感情移入出来た気がします。そういう意味では原作を読んでからこの映画を観るのもいいのかもしれませんね。

二人のこの役は小手先の芝居で表現出来るものではないと思います。たんに役になりきるだけじゃなくて、永島杏平と久保田ゆきそれぞれ背負う過去、向き合う現実を自分自身の問題として理解して同化していかなければ、彼らが抱える苦しみは観る人には伝わらないでしょう。でもそれは同時に演じる者としてとても重い精神的な負担でもあったことでしょうね。

友人のヤマキ君の自殺。その原因であり自分を苦しめた松井へ抱いた殺意。自分が救えなかった命と葬り去ろうとした二つの命の存在は永島杏平の心を縛りつけ苦しませていたのです。しかし遺品整理ということで様々な「死」に接していく彼はその経験の中で「生きる」ことの意味を考え実感していくのです。命があるから人は存在しそして様々な人と繋がっていく。そのことにようやく気付いた永島はゆきにそのことを伝えに行くのです。

永島とゆきが海に向かって叫ぶシーン。予告編では若干笑いがこみあげてしまうのですが、本編になるとその印象とは全く異なるとても感動的なシーンでしたね。「元気ですかッ!」は永島の言うように有名プロレスラーの名フレーズでしたけど、私は岩井俊二監督の名作『Love Letter』のラストシーンを思い出さずにはいられませんでした。

それだけにあの海辺のシーンで幕を閉じるのだと思っていたので、あの先にあのまさかの出来事が待っていたとは信じられずその目を疑いました。一瞬、このエピソード要るの?と問いたくなりましたけど、でもここで永島の見せる行動は彼の再生した姿を物語っていたのでしょう。彼がアルバムをめくるシーンでは一緒になって涙腺崩壊してしまいました。

遺品の整理はたんなる不要品の処分ではないんですよね。故人を弔い死後も尊厳を守るように良いものだけを残して余計なものは処分してしまう。そして遺族の気持ちを整えて一つの区切りを与えてあげるのですね。そんな仕事を担う彼らもまた『おくりびと』なのかもしれません。


再生度★★★★★