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ヒミズ公開を目前に控えて園子温作品のTVスポットが深夜帯でもない時間にたくさん目にしましたけど、これまでのことを考えたら劇的な変化ですよね。公開規模もこれまでの園子温作品では一番大きいんじゃないのかな?あちこちのシネコンで上映するみたいですよね。舞台挨拶もあちこちで行ってるみたいですが、今作では期待の若手俳優、染谷将太さんと二階堂ふみさんが共にヴェネチア国際映画祭で最優秀新人俳優賞を獲得したこともあって注目度も抜群に高いのでしょう。この二人NHKドラマ『テンペスト』でも共演してるんですけど、いい味だしてるんですよね。ホントに楽しみにしてました。

出演はその他に、渡辺哲、吹越満、神楽坂恵、光石研、渡辺真起子、黒沢あすか、でんでん、村上淳、諏訪太朗、堀部圭亮、川屋せっちん、窪塚洋介、吉高由里子、モト冬樹、西島隆弘、鈴木杏
監督:園子温

+++ちょいあらすじ
中学三年生の住田佑一の願いは普通の大人になること。過大な夢は抱かずただ普通に生きていくことが彼の望みだった。そしてそんな大人びた彼をクラスメイトの茶沢景子が憧れの目で見つめていたが、住田にとってはうざい存在でしかなかった・・・
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園子温監督の作品の中では優しくて温かい物語だったのではないでしょうか?ラストに仄かな救いが感じられたところで小さな安堵感に包まれました。

人気のない小さな池の辺の貸しボート屋を営みながら暮らす中学生の住田佑一。父親は家にはほとんど寄り付かずたまに帰ってきたかと思えば佑一に暴力を振るう。また母親は男漁りが激しくいつも知らない男を連れ込んでいます。そして貸しボート屋の周辺の空き地では震災で家をなくした数人が暮らしていました。そんな不遇な環境で育った佑一はクラスでは浮いた存在でしたが自分は普通でありたいと願ってます。そしてクラスメイトの茶川景子はどこか大人びた佑一に惹かれていました。

これもまた感想文を書きにくい作品でしたけど、とても強い力でグイグイと引き込まれてしまいました。不遇な家庭に生まれ育ち自分の置かれた現実を達観視して大きな夢など抱くことなくただ普通に生きようとする主人公の中学生・住田佑一。そんな彼に惹かれうざがられてもまとわりつくクラスメイトの茶川景子。継母に虐げられ息苦しい日々を過ごす景子は早く自立して生きなければならない佑一に憧れていたのかもしれません。

やがて佑一の母親は僅かなお金を置いて男と家を出ていきます。そして佑一の父親の借金600万円の取り立てに金貸しのヤクザがやってきて佑一は返済を迫られるのです。それでも佑一は絶望感に負けることなく生きていこうとしますが、父親の心ない言葉についに佑一の心が崩壊を始めます。それまで必死に抑えていた壁が崩れ雪崩るように。そしてそれから佑一は自ら「おまけの人生」を歩きだすのです。

結局、物語の説明になってしまいましたけど、決して現実味のあるお話ではないんですよね。冒頭から被災地の映像が使われてはいますが、それも大きな空虚感がただ漂うのみです。でもこの物語にとてつもなくリアルな説得力が伴っているのは巧みな脚本とそれを引き出す演出力、そして登場人物たちを演じる役者さんたちの存在感ゆえでしょう。特に主人公の二人を演じた染谷将太さんと二階堂ふみさんの怪演は凄いです。年齢的にもまだ若い二人がどうやってあの状況にある佑一と景子の気持ちを掴んで演じることが出来たのか不思議でなりません。二人ともこれまでの出演作で非凡な才能を感じてはいましたけど、今作には圧倒されっぱなしでした。もちろん脇を固める出演者たちがいてこそなんですけど、この二人がキャスティング出来た時点で8割方この映画は成功していたのかもしれませんね。

園子温監督の作品としては原作モノ自体が珍しいですけど、この映画のテイストは園子温ワールドそのものなので言われなければわからなかったかもしれません。東日本大震災を経て脚本を大幅に変更されたそうですが、やっぱりこの深い絶望の闇の中でも監督さんなりの希望の灯を見いだしたかったんでしょうね。

自暴自棄になり破滅への道を進み始めた佑一。しかしそんな彼の前に突然現れる自分と同じような絶望的な人間たちの姿を目の当たりにして佑一の行動にブレーキがかかり、そして景子をはじめ彼を支えようとする仲間たちの優しさが絶望のどん底にいた佑一に手を差し延べるのです。

今作には救いがあるらしいのは何となく知っていましたけど、そんなことすっかり忘れて最後まで緊張感が終始張りつめていただけに、あの佑一と景子とのラストシーンでその緊張感から解放されていく時間が心地良かったです。この原作がコミックというのも意外なんですけど、どんな作品なのか気になりますね。


「ヒミズ」:(日不見、日見ず 学名:Urotrichus talpoides )は、トガリネズミ目モグラ科に分類される哺乳類。日本の固有種。


再生度★★★★