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アーティスト第84回アカデミー賞を席巻したモノクロ・サイレント・ムービーのフランス映画です。でも物語の舞台はパリではなく映画の都ハリウッドです。サイレントだから外国語映画部門にはならないのかと思ったらアメリカのお話なのです。サイレント・ムービーはオムニバス作品の短編だったら劇場で観たこともありますけど、ガッツリ長編でとなると初めての体験なのでちょっとドキドキしながら観に行ってきました。

出演はその他に、ベレニス・ベジョ、ジョン・グッドマン、ジェームズ・クロムウェル、ペネロープ・アン・ミラー、ミッシー・パイル、ベス・グラント、ジョエル・マーレイ、エド・ローター、ビッツィー・トゥロック、ケン・ダヴィティアン、マルコム・マクダウェル、ベイジル・ホフマン、ビル・ファガーパッケ、ニーナ・シマーシュコ、スティーヴン・メンディロ
監督:ミシェル・アザナヴィシウス

+++ちょいあらすじ
1927年のアメリカ。サイレント映画全盛のハリウッドでは大スターのジョージ・ヴァレンティンが新作の舞台挨拶で観衆からの喝采を浴びていた。熱狂するファンたちに囲まれる中でジョージは一人の女性とぶつかってしまうが、ジョージはその女性に優しく応じ彼女がジョージの頬にキスした写真が翌日の新聞の一面を飾る。彼女は女優を目指すペピー・ミラーでオーディションを受けジョージ主演の小さな役を手にするとジョージのちょっとしたアドバイスをきっかけに大スターへの道を歩み始めていく・・・
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アギー最高ゥ。あんな子ウチにも欲しぃぃぃ。

古き良き時代の映画と映画人たちへのオマージュと愛情に溢れた作品でした。私たち日本人が『ALWAYS 三丁目の夕日』にときめいたように、アカデミー会員の琴線に触れる感慨深い作品なのでしょう。

私は無声映画って過去の名作としてのチャップリンやキートンの作品くらいしか知りませんが、何とも言えないノスタルジックな感覚に酔いしれちゃいました。あえて古典的手法を用いてローテクでアナログならではの映画の魅力にこだわったからこその味わいなんだと思います。ストーリーも何もかもベタ過ぎるほどのベタさですけど、それはつまり映画本来のプリミティブな魅力だと言えるのでしょう。

時代の移り変わりとともにサイレント・ムービーの大スターだったジョージ・ヴァレンティンは次第にその居場所を失っていきます。その一方で彼がスポットライトを当たるきっかけを作った女優ペピー・ミラーはトーキー映画と共に華々しいスターへの階段を上っていくのです。サイレント・ムービーに拘り続けたことで時代の潮流から取り残され人々の記憶から忘れ去られていくジョージ。しかしすっかり落ちぶれてしまいまったジョージを秘かに想い慕い続けるペピーの愛が陰ながら彼を支えていたのです。ジャン・デュジャルダンが演じるジョージの哀愁、悲哀がとても見事でした。そしてそのジョージの心理に連動した芝居を見せる愛犬アギーの愛らしいこと、たまりませんでした。

派手な演出もなくセリフが聴こえてこないということは、現代映画においてはあえてハンデを背負うような試みですけど、そういう制約の中で創られたからこその味わいというのもあるんですね。セリフがないぶん役者たちの芝居を注視することになり特にその表情による素晴らしい表現力に魅了されるのです。この感覚、何かに似ているなぁと思ったら、聾者の友達とのコミュニケーションに通ずるんです。お互いに伝え合おう理解し合おうと一生懸命になるぶん集中力も高まって同じ言語同士の会話とはまた違う豊かで深い感情表現を通わせたりするんですよね。それはワタシ的にはなかなか興味深い発見でした。

そしてそんな風にして自然と感情を高ぶらせて物語に引き込まれていくといつの間にかこの場では聞こえないはずの街の喧騒や激しい雨音とかも聞こえてくるような気がしてくるんですよね。それは頭の中で想像力で補完してるに過ぎませんが、その足りないぶんを自然に補う力って映画を観る力なのかもしれないし、聞こえない音を聞こえさせる見えないものを見えさせるのが映画力なのかもしれません。

どうせならフィルムやBGMに少しノイズを入れて最後は「The End」で終わってもばヨカッタかも(笑)。


堪能度★★★★