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大統領の料理人フランス大統領官邸史上で唯一の女性料理人を実話に基づき描いたハートフルなフード・ムービーです。男性社会と言える大統領官邸の厨房で周囲の反発を受けながらも孤軍奮闘、素晴らしい料理を生み出しミッテラン大統領の舌を魅了した女性料理人の姿を『恋愛小説ができるまで』のクリスチャン・ヴァンサンが脚本、監督を務め描いた作品です。

出演はその他に、ジャン・ドルメッソン、イポリット・ジラルド、アルチュール・デュポン、ジャン=マルク・ルロ、アルリ・ホベール、ブリス・フルニエ、エルヴェ・ピエール、レシュ・レボヴィッチ、トマ・シャブロル
監督:クリスチャン・ヴァンサン

+++ちょいあらすじ
フランスの田舎町で小さなレストランを営み暮らす女性料理人のオルタンス・ラボリはある日、料理組合長からの紹介で政府高官に呼ばれパリへ向かう。ところがそこはエリゼ宮と呼ばれるフランス大統領官邸でラボリはフランソワ・ミッテラン大統領のプライベートシェフを依頼されてしまう・・・
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期待し過ぎだったのか意外と普通な映画でした。フランス映画らしいお洒落で陽気なコメディタッチな内容を想像していたんですけど、わりとビターな物語なんですよね。

物語は主人公の女性料理人オルタンス・ラボリが働く南極基地での最後の仕事となる1日から始まります。現在進行形と思われるその南極基地でのエピソードを出発点にしてラボリがここ南極へ来る前、大統領官邸でミッテラン大統領のプライベートシェフを務めていた話が描かれていくわけですが、これが特に回想しているわけでもなく現在と過去をあまり脈絡なく行ったり来たりするのです。正直、観ていていちいち話が飛ぶので南極のエピソードは要らないから大統領の料理人の話だけやればいいのにと思うのです。

ところが物語が進み後半に入ってくるとこの構成の意味がなんとなくわかってきます。南極ではスタッフたちが皆ラボリの料理に舌鼓をうち笑顔であふれ喜びに満ちラボリも嬉しそう。しかし大統領官邸では大統領に面会するのも難しく料理の感想も給仕から様子を聞くくらいでしかないのです。ラボリの作る家庭的で独創的な料理を喜んでいるらしいことはわかるのですが、やはり実感には乏しいのです。ようやくラボリが大統領と一緒に食事が出来たのは厨房で仕入れたばかりのトリュフを楽しんだ時で、それからはコストカットや大統領の健康面を考慮した素材の制約を課され本来の腕前が発揮出来ないラボリは悩まされていくのです。

こういうお話だと主厨房の男性シェフたちによる意地悪や嫌がらせ、妨害工作があったりしてそれを主人公が克服して見事大仕事をやってのけるような展開が普通お約束みたいに思うのだけど、この作品はそうはならないのです。対立は一応あるにはあるんですけど、それはかなり地味めで物足りません。そこで主旋律として浮かびあがってくるのが、大統領官邸と南極基地でのラボリの仕事ぶりの対比なんですね。ラボリが料理人として本当に欲していたもの、料理人としての喜びや誇りが何だったのかが、その両者のコントラストによって鮮明に浮かびあがっていくのでした。

大統領のシェフは最後はほろ苦いこととなってしまいましたけど、逞しいラボリはきっとこの後ニュージーランドで成功することでしょう。登場するお料理はどれも美味しそうでしたけど、みているだけの立場でも、やはりそれを美味しく食べる人の存在があってこそ料理は輝くものなんですね。


料理度★★★