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危険なプロットしあわせの雨傘』のフランソワ・オゾン監督がフアン・マヨルガの戯曲を原作に映画化したサスペンス・ドラマです。文才のある生徒と彼に個人指導をする国語教師が予期せぬ事態を引き起こしていくさまを心理描写でスリリングに描いていくという物語だそうです。

出演はその他に、クリスティン・スコット・トーマス、エマニュエル・セニエ、エルンスト・ウンハウアー、ドゥニ・メノーシェ、バスティアン・ウゲット、ジャン=フランソワ・バルメ、ヨランド・モロー
監督:フランソワ・オゾン

+++ちょいあらすじ
高校の国語教師として勤めるも生徒たちのやる気の無さに情熱を抱くことなく退屈な日々を送るジェルマン。ところが新学期を迎えたばかりのある日のこと。宿題の添削をしていたジェルマンはクロードという生徒の作文に目を留めその文才に魅せられてしまい・・・
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これはフランソワ・オゾン監督ならではのハイセンスな作品でしたね。甘美な味わいがとても魅惑的でどっぷりと引き込まれてしまいました。

新学期になり2年C組を受け持つことになった国語教師のジェルマンでしたが、生徒たちの出来の悪さに辟易する毎日でした。ところがある日宿題の作文を添削していてある作文に目が留まります。それはクロード・ガルシアがクラスメイトのラファの家庭の様子を覗き見るようにして赤裸々に綴った物語でした。興味本位をそそり背徳感を抱かせながらもその作文に魅了されてしまったジェルマンはクロード自身に文才を見出し直接指導しながらその続きを書かせていきます。

どことなくサスペンスな雰囲気を漂わせていきますが、決してサスペンスやスリラーではなく、そのギリギリの危ういところを綱渡り的に描いていくあたりがとても魅力的でグイグイ引き込まれてしまいました。一歩間違えれば何か大事件に発展してもおかしくなさそうな微妙な緊張感がたまらなくいいんですよね。それはあたかも実際に自分も一緒になって他人の家庭を覗き見ている背徳感ゆえの緊張感なのかもしれません。

母親が家を出て行き身体の不自由な父親の世話をする高校生のクロードにとって温かい家庭と母親の存在は欲しても決して手に入らない存在でした。それゆえにラファの家庭に異常な関心を抱き始めたクロードは数学を教えることを口実にラファの家庭に入り込んでいくのです。

クロードのそもそもの目的が作文のためだったのかそれとも自身の欲望を具現化するための手段だったのかはよくはわかりませんが、結果的にはジェルマン先生を魅了してしまったことでクロードの欲望が具現化し作文指導によってリアルな物語を思うがままに展開させてしまったのは間違いないでしょう。

クロードの作文にのめりこみ過ぎたジェルマンは、まるでクロードが最初からジェルマン自身を狙いすまして仕掛けた罠にかかってしまったかのような結末もとても皮肉めいていていいんですよね。策士策に溺れるとでも言いますか、クロードの作文に溺れていったジェルマンの姿には監督自身の自戒がこめられていたのかもしれませんね。

映画の生命線は脚本で監督や役者が多少下手でも脚本が素晴らしければなんとかなるものだと思うのですが、この映画はすんな脚本の面白さや魅力を伝える映画愛のこめられた作品だと感じました。ジェルマンがクロードに指導していてのはまさに彼の脚本論でしたよね。凡庸ではなく物真似でもないサプライズの必要性を説く姿はまるで現代の映画への皮肉のようにも感じられたのでした。

ラストシーンで映し出されるアパートの窓越しに見える様々な家庭の様子は、まるでこの映画の世界を暗喩しているかのように感じられるのでした。


皮肉度★★★★☆