2009年01月27日

女子野球


 女子野球選手なるものをはじめて見たのはちょうど10年前の2000年12月。2001年に開催された女子硬式野球世界大会の日本代表チーム選手選考のためのセレクションの時だった。

 当時、日本代表チームの監督は広瀬哲郎氏(元 日本ハムファイターズ)。駒沢大学の先輩である。そして女子硬式野球実行委員会に協賛していた、日刊スポーツの担当者も駒沢大学野球部の後輩だった。そんないきさつにより、僕にセレクションの手伝いの依頼が来たのだ。2日間だけという条件で・・・


 その時僕は37歳、社会人野球チームのコーチを退き、プロ野球選手から大学、高校のチームをサポートしていたが、女子野球の見識はまったく無かった。

「女子が野球をやっているのか?」
「世界大会って何だ?」
「ボールやバットは何を使っているのか?」
「ベース間やバッテリー間までの距離は?」

皆目見当がつかなかった。
聞けばボールも塁間も我々がやってきた野球と同じ。バットだけは中学生用のものを使用してもOKとのこと。「どうせお遊び程度の野球であろう・・・」半信半疑でその依頼を引き受けた。

 しかし、セレクション当日、グランドに入った瞬間から驚きの連続。
始めて見る女子野球選手のユニホーム姿、そしてその人数。160人以上の女子野球選手が全国から集まってきていた。年齢は中学生から30歳以上の選手もいた。日ごろは軟式野球やソフトボールをやっているが、硬式野球で全日本入りを目指して集まったのだ。
 レベルはピンキリだが、高いレベルの選手の能力にも驚いた。男子選手顔負けのグラブさばき、何よりグランド内での振る舞いが実にいい。堂々としていた。

「う〜ん、こんな女子たちが日本にいたのか!」
そして多くの選手と話をした。
いろんな事を聞いてみたいと言う衝動に駆られた。

なんで野球をやっているの?他にもスポーツは有るのに。の問いに
彼女たちは困った顔をして
「やりたいから」
「好きだから」
なんという愚問・・・ 当り前の事だった。僕も同じ質問をされればそれ以外の答えは無い。

 ブルペンに行くとキャッチャー陣がキャッチャー道具を抱えて歩いている。キャッチャー道具はチームの物を借りてきたの?

「いいえ、自分のです。」

なんと、マイキャッチャー道具なのだ。その選手は日本でアルバイトをしてお金を貯め、アメリカの女子野球リーグに参戦していた。
他にも、地元で自分たちで野球チームをつくり、自分たちで道具を調達している選手が何人もいた。すべて彼女たちは自分たちの野球する環境を自分たちで創り出しているのだ。

 僕は中学生から社会人野球 現役32歳までキャッチャーだったが一度も自分でキャッチャー道具を買ったことなどなかった。あるのが当然だと思っていた。今まで野球をやってきた中、苦しい練習にも耐えてきた、指導者や先輩たちのしごきや鉄拳制裁なる厳しい教育のなかで培ってきたものに自信もあったし誇りも持っていた。

しかし、しかしだ僕はこの日に大きな事を、彼女たちから教わったのだ。

グランドもある道具も潤沢にある練習時間もたっぷりある、そんな環境で自分が望んだ野球ができる。
努力したり我慢したり苦しんだり厳しかったり そんな事は当たり前だろ、何も自慢げに胸を張ることじゃないと。

衝撃的な女子野球との出会いだった。

女子野球
(2001年 女子野球世界大会 inカナダ)

 それから半年後、2001年の夏、第1回女子野球世界大会の日本代表チームのコーチ兼トレーナーの要請を受けた。断る理由は何もなかった。
「俺で彼女たちの手伝いができるのなら喜んでやらせていただきます」
こんな心境だった。

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(2003年 女子野球世界大会 inオーストラリア)

あれから10年。日本代表チームのレベルアップと、日本国内での女子野球普及のために多くの関係者が奔走してきた。1999年に任意団体として発足した女子野球実行委員会は2002年に女子野球協会に変更し、更には2004年、日本野球連盟に加盟するまでになり、2005年に女子硬式野球日本選手権もスタートした。参加クラブチームも年々増え続けている。僕自身、地元 倉敷市に女子硬式野球クラブチーム 倉敷ピーチジャックス・レディースを立ち上げた。そして2006年女子硬式野球日本代表チームの監督を仰せつかり、2008年に松山市で行われたワールドカップで優勝をおさめることができた。女子野球選手たち自身の思いと、本当に多くの方々のお力添えがあり達成できたのだと思う。

2010年01月16日(2)
(2008年  ワールドカップ優勝 in松山)


ゼロからの10年。そしてこれからの10年で女子硬式野球発展への方向性が決まっていくであろう。
今年、女子プロ野球が関西でスタートするが、今後 多くのステージつくりと、また小・中学の女子選手は年々増えており、その受け皿となる高校での女子硬式野球部とクラブチームを増やしていくことが必要であろう。
 男子と同じようにソフトボールはソフトボール、軟式野球は軟式野球、硬式野球は硬式野球と、まったく違う種目として女子選手たちが選択できる環境にしたい。女子硬式野球の甲子園大会や国体を夢見て。
 
あれから10年 すべては彼女たちの情熱からスタートした。。。










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