野球動作分析強化指導サイト「ヤキュウモーション」

動作改善とフィジカル強化による「プロ級の野球能力獲得」を実現させます。

2016年11月

※20170923 表題変更

 野球選手の強化を目指す当サイト「ヤキュウモーション」、バッティング編では当面、単発的なページを用意します。
 今回はバットスイングにおける後足について、日本での定説を否定する選手達の動作を観察します。

1. 後足の「フロート型」と「母指球ねじり型」

 まずは過去のニュース記事における、埼玉西武ライオンズの主砲おかわり君こと中村剛也選手の発言から。

おかわり「浮かす右足」で11本柵越え!強烈パワーのバロメーター
スポニチアネックス 2015年2月9日(月)8時23分配信
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 最終スイングだった。強烈な回転運動から放たれた西武・中村の打球は、決して狭くはない南郷スタジアム(中堅122、両翼100メートル)の左中間席後方に設置された防球ネットに突き刺さった。キャンプ序盤のフリー打撃ながら34スイングで11本の柵越え。「ここまで順調です」と笑った。

 08年から昨年までの7年間で5度も本塁打王に輝く和製大砲。規格外の飛距離を生むのがインパクトの瞬間の「浮く右足」だ。「気が付いたのは7、8年前。それまでは無意識でした」と言う。通常、右打者は軸足の右足を地面に接地したまま、こするように爪先を投手方向に向けて回すが、中村は一瞬だけ浮き、空中で爪先が投手方向を向き着地する。摩擦が減ることで体を鋭く回転させることが可能で、瞬間的に102キロの体重を投手寄りにぶつけることで爆発的な飛距離を生む。

 中村は「シーズンが近づけば、もっと右足が上がってくる」と話すなど右足の動きは調子のバロメーターでもある。「うまく口で説明できないけど、例えば車と車が正面でぶつかると後ろのタイヤは浮きますよね。だからパワーは伝わっているのかな、と思う。右足が浮くと確実に体の回転は速くなります」と話す。

 右肘痛に苦しんだ昨季はスタメン落ちする試合もあった。シーズン通して4番の責務を果たせず、チームも5位だった。オフに遊離軟骨除去のクリーニング手術を受けた右肘の状態も良好。今季に懸ける思いは強い。

 田辺監督も中村について「開幕戦で万全の状態でいてくれればいい。心配はしていない」と全幅の信頼を寄せる。目指すは7年ぶりのリーグ優勝と日本一。中村の右足が浮けば、チームも浮上する。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150209-00000073-spnannex-base

 バットスイングについて、日本で常識だと考えられ選手に教えられてきた基本は、本文中にもあるように後足(=これまで軸足と呼ばれてきた足)の母指球中心に地面をねじる動作です。
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母指球ねじりの代表例:松井秀喜選手
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母指球ねじりの代表例:阿部慎之助選手

 他にも中田翔選手、筒香嘉智選手、秋山翔吾選手らプロ野球を代表する強打者はもちろん、育成段階の高校野球でもチーム単位で母指球ねじりを「基本」として徹底指導し、全選手100%地面ねじりスイングであるケースも珍しくない。

 後足、軸足を力強くねじり、バットスイングと打球に力を伝える。これが常識であり基本であり最も力を生み出せる動作であると考えられていました。

 たしかに中村選手も、速球でタイミングが遅れた際など、場合によっては後足をねじってスイングしているものの、
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※後ろ足をねじる中村選手

 一方で冒頭記事のように、後足を浮かせてスイング、そしてただスイングするだけでなくホームランを叩き込む場合も多数存在する。
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※後ろ足つま先がつぶれず(地面に触れているだけ)、地面をねじっていない中村選手

 この中村選手はタイミングに応じ後足の「ねじり」と「フロート」両方を行っているものの、これに対し後足の「フロート」を標準動作として行っている選手も大勢存在します。
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※イチロー選手

 一般に後足を浮かせる=フロート型というと、真っ先にイチロー選手が思い浮かばれるところですが、




 これらプロ野球を代表するスラッガータイプの選手達も、大勢が後足フロートを行っている。

 そして、日本人よりもその割合が多いようにさえ感じるのが外国人選手。それも日本でプレーするMLB未満の選手ではなく、紛れもないMLBの強打者達。

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※ブライス・ハーパー選手

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※ミゲル・カブレラ選手
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ロビンソン・カノ選手

 190cm100kg前後の巨漢たちが、軸足に体重を残しているかのように評されるスイングにおいて、完全なフロートを行っている。

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※「フロート型」と「ねじり型」のイメージ

 本ページでは、その優劣について触れることはしません。フロート型・ねじり型いずれについても(日本だけでなくMLBでも)両者とも超一流選手はいくらでも存在し、実績としてその優劣を判定するデータは存在しないため。

 今回考えるとすれば、この後足の使い方についても、野球動作の指導世界に溢れる「短絡的同一視」の一つであること。
 MLB選手を見て、体が後ろに反り返っている、これは後足に体重を残している=後足でねじっているに違いない、
 後足に体重を残している、これは後足を「軸足」として使っているに違いない、
 一流選手が「体をコマのように回す」と説明している、これは後足をフロートさせるのは望ましくなく、ねじってその場で回転するのが望ましいに違いない、

 これら抽象的な思い込みの結果、本来フロート型であった選手に対しても、スイングが安定しない、パワーがない、走り打ちになる、これらの本質的ではない理由でねじりタイプの徹底指導を施し、動作変更が行われるケースが多々生じる。
 例えばイチロー選手がねじり打ちを強要されていた場合、今ほどの成績を残せていたかどうか。
 プロ野球を頂点とした日本の全野球世代で当然の如く行われる、連続のトスバッティングや重心を深く落としたスイング練習などで、この後足ねじりは強固に固定化されていく。

 後足がフロートしても、体をコマのように回すことは可能、中心軸で回っているかのように打つことも可能、後ろに体重を残しているようかのように打つことも可能、重量級の選手がスイングすることも可能、そして日本プロ野球・MLBを代表するレベルの豪打を行うことも可能であり、フロート型はねじり型に矯正されるような動作ではなく、一方のねじり型も基本として教わる存在でも有りません。


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. このシリーズでは、野球の動作の一つであり、ピッチングやバッティングなど各種動作のトレーニング方法の一つでもある、人間の基本的な身体動作「走動作」について考えます。

 今回は冒頭として、走る動作の基礎と、そのトレーニング方法の基礎について触れていきます。

※使用写真は以下からご覧ください。
読売巨人_鈴木尚広選手の走塁動作・盗塁スタートダッシュ連続写真
野球連続写真インデックス(投球・打撃・守備・走塁)

1. 走動作の基礎:「股関節伸展」で体を押し出す

 一口に「走動作」と言っても、「スタートダッシュ」「中間走」「終盤(スライディング込)」などとフェイズごとに走る体勢は変わっていきますが、まずはその動きの基礎から取り出します。
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写真1-1-1: 左足が地面に接地

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写真1-1-2: 左足が伸びて体が地面から離れる

 「走る」という動きは、足を前後に動かして体を前に動かしていく動作ですが、いわゆる足を構成する3関節が「伸展」することで体を押し出していく動きとも言えます。
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写真図1-1-3: 前足着地から「足関節(足首)」「膝関節」「股関節」が伸びて体を前に押し出す
※関節の回転は股関節のみ表記
 
 「足関節」「膝関節」「股関節」の3関節は、全関節が連動した「トリプルエクステンション」と呼ばれる伸展によって足を伸ばし、体を地面に対し前に推し進めていく動きを生み出します。

 この3関節の伸展について、足関節を伸展させる腓腹筋やヒラメ筋、膝関節を伸展させる大腿四頭筋、この筋肉等も走動作にもちろん寄与はするものの、最も貢献度が大きく重要なのが「股関節における伸展動作」になります。
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図1-2: 「股関節屈曲」と「大殿筋」

 「股関節屈曲」の主体となる「大殿筋」は、単一の筋肉としては人体最大の筋肉であり、筋肉の出力はそのサイズ(断面積)に依存することから人体で最も高い出力を発揮できる筋肉・動作と言えます。
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写真1-3: 全体重が着地前足に乗り、そこから全体重を前方に弾き出していく様子

 そしてこの走動作では、前足は乗り込んできた全体重を更に前方に押し出す・弾き出していく必要があり、人体最大の出力を誇る股関節屈曲に相応しい巨大な力を要する。

 強大な筋出力、そして筋瞬発力が必要とされる動作であり、これが走動作の基礎となります。



2. スタートダッシュ時:足裏前面(つま先)が出力の固定台となる

 股関節伸展という走動作の基礎に加え、内野守備なら10m、盗塁で20m、走塁や外野守備でもせいぜい40m程度が最大走行距離である、きわめて短距離の走動作がプレーの主体になる野球というスポーツにおいて、「スタートダッシュ」の動作も重要な基礎の一つになります。

 このスタートダッシュでも出力の基礎は「股関節進展」であることに変わりはないものの、静止状態から一気に体を加速させる動作のため、その出力に適した体勢の取り方が重要になります。

 以下、盗塁動作をベースに考えますが、まずは出力までの準備を見てみます。
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写真2-1: 静止状態から前足を外してバランスを崩し、前足で押し出すための体勢を作る

 静止状態での前足(右足)の位置と、一度地面から外し再度地面に着いた瞬間の位置を比べると一目瞭然ですが、前足は一度後ろ(左足方向)に引く動作を行います。
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写真図2-2: 静止状態からバランスを解除し、出力への準備態勢に入る

 静止状態では体の重心を両足の「つっかえ棒」で支えていますが、前足のつっかえを外すことで重心が前足側に動き、前足を引いた位置に着き直すことで、以降の出力が行いやすい重心と前足の関係に整えます。
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写真2-3: 出力用意体勢から、前足の股関節伸展により第一歩目を始動する

 前足を出力させやすい体勢が整ったら、そこから前足の股関節伸展を一気に発動させ、ダッシュの一歩目を踏み出すことになります。

 このスタートダッシュの体勢で重要なのが、この股関節伸展を起こす土台・ベースとなる箇所です。
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写真2-4: 前足つまさき(足裏前側)が股関節伸展のベースとなる

 走動作の一歩目で、股関節伸展を発動させるため地面を支えるのは、つま先・前足の前側です。このつま先での地面の踏みしめをベースとすることで、この後体を押し出していく股関節伸展を繰り返していくことになります。

 ここで注意が必要なのが、近年耳にすることが多い以下2点の主張との関連です。


【1.足裏はフラット着地が望ましく、つま先使用は望ましくない】
 ダッシュ後の中間走以降については、いわゆるフラット着地とつま先着地の議論となりますが、これは以降のページで触れます。
 しかし少なくともスタートダッシュの数歩では、つま先接地による加速が実際の選手が行っている動作であり、足裏全体での加速より適した動作であるといえます。


【2.つま先で地面を蹴ると、ふくらはぎが硬化しダッシュの減速・故障リスク増加に繋がる】
 この主張の問題は、つま先による着地や加速が、イコールふくらはぎ主体の足先の出力であるという短絡的な同一視をしている点にあります。
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図2-5: スタートでの出力のイメージ

 あくまでイメージであり、ふくらはぎの足首伸展筋がまったく作動しないわけではありませんが、地面接地したつま先(足裏前側)を土台として最大の出力源である股関節伸展を発動させる動作になります。

 つま先部の地面接地では、ふくらはぎを使いがちになる問題は起こり得るため、あくまで前足裏をベースとした股関節出力を行うように動作の起こし方・体の使い方を学習していく必要があります。


3. 走動作習得・強化のためのトレーニング

(※現段階で執筆完了前です)

 この走動作向上のためのトレーニングについても、投球や打撃と同じアプローチとなります。

【筋力強化】スクワット、デッドリフト、懸垂等

【筋瞬発力強化】ハイクリーン等

【動作瞬発力強化】メディスンボール、ジャンプ・バウンディング系

【実動作強化】ダッシュ練習

 走動作のトレーニングも、これもまたピッチングやバッティングと同じ、あくまでプロ選手として必要なレベルに達するため行うことを目的としたものであり、筋力強化から実動作の向上まで段階を踏んで練習していく必要があります。


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 2016年惜しまれつつも引退した、読売ジャイアンツが誇るプロ野球の盗塁職人、鈴木尚広選手の盗塁スタートダッシュ連続写真です。

 ↓以下続きからご覧ください。

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 10月31日はハマスタで田中正義投手VS佐々木千隼投手の撮影に成功。
 著名選手の撮影はかつての中央大学澤村拓一投手以来か?何にせよ150km/h超投手の貴重なピッチング動画を入手できた。田中投手は145km\h~152km/h、佐々木投手は144km\h~148km/hぐらいでした。

 現在は鋭意、投球速度・送球速度・打球速度・疾走速度などスピードを高める身体能力増強の方法論確立のため自己実験中。ウェイトトレーニングからプライオメトリクスを経て野球動作に辿り着く流れが見えてきた。

 あまり時間もない。出来るだけ早期に総合トレーニング編の本格執筆に取り掛かれるように準備中です。

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 5球団競合の末プロ野球福岡ソフトバンクへと進む、”ジャスティス”こと創価大学の156km/h右腕「田中正義」投手のピッチングフォーム連続写真です。
 ※2016年10月31日(月)関東大会、創価大学(田中正義)VS桜美林大学(佐々木千隼)を管理人撮影。

 写真は続きからご覧ください。

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